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【ショートシナリオ】ようこそ、小川町へ。【戦闘なし】

ようこそ、小川町へ。


マスター:有沢楓花




 
 まんげつ造のある都市から離れたとある場所に、瀬織市という小さな市がある。
 中心部は都会的な賑わいを見せ、離れれば田畑や牧場も見られる、そこそこ都会、そこそこ田舎という何かにつけ便利な市だ。
 その「そこそこ田舎」な場所に、小川町はあった。
 小さな駅前。幾つか並ぶ商店と住宅地はかつては長閑だったのだろうが、ありあわせの素材で作られた不格好なバリケードがちらほら見える。
 そこに数人の少年少女が立って、あなたを出迎えていた。

「ようこそ、小川町へ。召喚者の皆さん」
 中央に立つ少年が鋭い声を投げてきた。十六、七歳くらいだろうか。学校などとうに閉っているだろうに、ブレザーにネクタイの制服をきっちり着こなしている。
 武器こそ向けてはいないが、眼鏡の下の気真面目そうな目にはある種の決意が見て取れる――敵対しても構わない、という。
「召喚機が稼働して、異世界の大人――とは限らないが、が来たのは聞いている。救ってくれと依頼されているのだろう。
 頼らざるを得ない状況ではあるが、といって、見も知らずの人間を無条件に信用できるほどこちらには余裕がない。
 ……申し遅れたが、僕は町長代理の長谷川 陽向(はせがわ ひなた)だ」
 陽向という少年に、横から口を挟んだのは、彼と同じ年頃の、同じ制服を着た少女だ。と言ってもこちらは着崩しており、スカートの下にジャージを履いていた。
「こっちから呼び出しておいてそんな態度取られたら、協力者を自分から減らしてるようなものじゃない」
「斎藤。他人事みたいに言うな」
 斎藤と呼ばれた少女は意にも介さないようにふああ、とあくびをして、陽向の言葉を補足した。
「まぁ、放置されている家も実家や同級生の家だったりした訳だから。勝手に押入れのアルバムを見られたり、お小遣いで買った漫画を持ってかれるのを歓迎できる人間ばかりじゃないってことね」
 陽向は眼鏡の位置を神経質そうに直すと、提案してくる。
「ここから少し歩くが、通称海亀公園と呼ばれる公園がある。ひとまず信用に値する人物か見極められるまで、そこに住んでもらいたい――ただし、水はない。
 最低限の自給自足をしてもらうこと、これが町に住む条件だ」


――――――――――――――――――――――――――――――――

<マスターコメント>
 はじめまして、こんにちは、またはお久しぶりです。
 有沢楓花と申します。
 これからしばらく、瀬織市と、そこにある小さな町での出来事についてのシナリオを出させていただこうと思います。
 水の確保に食物の栽培、牧畜、家屋の探索などなど、そんな地味なシナリオになるかと思いますが、宜しくお願いいたします。
 また、ロストオールドで初めて出すシナリオですので、ショートシナリオ・人数制限なしとなりましたが、次回以降は変更になるかもしれません。

 今回のシナリオでは、外部の人間、特に大人を警戒する小川町の住民のために、公園での生活を開始することになります。
 この公園が、今後の召喚者たちの最初の受け入れ場所、そして拠点となっていきます。
 最低限の水の確保の他、どんなふうに生活していくかアクションをかけて頂ければと思います。
 (※あくまでこの町での拠点ですので、今後家を手に入れて居住するとしても、他シナリオには影響しません)
 水に関しては数日分の食料と飲用水(開封済みのペットボトルに入れた水道水)は陽向から提供されます。
 必要な物があれば申し出て、許可されれば貰えますが、貴重な物は難しいでしょう。

・海亀公園について(事前にPCに情報が知らされています)
 ひょうたんのような楕円形の形をした公園です。公園としてはそこそこ広く、元々は古い時代の文化保存を目的としていましたが、その後、敷地の一部に子供用遊具を幾つか設置しています。
 普段は子どもたちが遊び、春には住民が花見を楽しんだりしていました。
 一応水飲み場(上に飲用の噴水型、下に通常の蛇口のあるもの)とトイレがあるのですが、現在は水が止まっている状態です。
 ひょうたん型の楕円の一方には、中央に大きなコンクリ製の海亀の遊具があります。登ったり、滑り台にしたり、亀の甲羅の下に入って遊ぶことができます。ここで雨宿りできますが、足を伸ばして寝られるのは数人程度でしょう。
 また藁ぶきの古民家が一軒、水車小屋、使われていない古井戸も保存されています。小川や鯉が泳ぐ池もありますが、どれも水はそのままでは飲用に適しません。
 古民家は玄関兼煮炊き用の土間、土間と連結した板の間(中央に囲炉裏)、奥に畳の部屋があります。ひと家族程度が寝泊まりできます。かまど(釜はありません)はありますが、内部に照明や水道はありません。
 また、公園全体のあちこちに街灯が設置されていますが、町中のように十分な数がありません。


・町の中心部について
 現在住むことが許されているのは公園のみですが、行くことはできます。
 ただし監視役として武器を携行した年長の子供が同行し、商店などの施設の利用はできず、見学するのみです。
 現在判明しているのは以下の施設だけです。
 ・小川町駅 無人駅規模の小さな駅です。現在電車は通っていません。伝言板とコインロッカーが少々あります。
 ・雑貨屋  駅前の店舗を雑貨屋として、町民で利用しています。
 今後町民に信用されれば、町の施設を利用・住むこともできます。


それでは、アクションをお待ちしております。

<リアクション>


自給自足への第一歩


 瀬織市、小川町
 ここを訪れる旅人が、どの道をどう通って辿り着いたのか、それは定かではない。
 単に通り過ぎようとしたからなのか。探索の途中見付けたバリケードに近寄ってみただけなのか、大通りをたまたま逸れて迷い込んだのか。
 ともかく、この町自体には何ら特別な意味などない、よくある小さな町の一つに見えた。パンデミックの最中から、大きな町に保護されることもなく暮らし続けてきたのだろう。

「今日から海亀公園にはこの人たちが住むんだよ。悪いけど、遊びは余所でしてくれるかい?」
 町長代理の長谷川 陽向(はせがわ ひなた)は、自分の背中から興味深そうに、または不安そうに覗いている少年たちを戻らせた。
 申し訳ないと詫びながら、召喚者に段ボールの山を示す。
「数日分はこれで足りるはずだ。他に不足があったら無理のない範囲で出そう。公園内では、施設を大幅に作り替えるなどでない限りは自由にしてもらって構わない。相談してくれると助かるが」
 それから町に入るときには声をかけてくれ、と話すと、段ボール入りの水と食料を配給し始めた。
「なるべく冷暗所に置くようにしてくれ」
 開封済みの2リットルペットボトルに隙間なく詰まった水道水は、塩素のおかげで常温でも数日は問題なく飲用できるらしい。
 食料の方はレトルトのカレーやシチュー、缶詰の乾パンや魚、肉、果物等が取り混ぜてある。
「置き場所だけど、古民家は女性陣に譲りたいんだけど……」
 段ボールを軽々と受け取ったリンヴォイ・レンフィールドが男性陣の意向を窺えば、アヅキ・バルが年頃の女の子らしく一同を見回し、半ば決定といった感じで確認する。
「男性が海亀の遊具、古民家は女性でいいよね?」
 反対意見も出ず、陽向もその方が良いだろうと同意したので、ひとまず寝床は決まった。各自、荷物と段ボールを整理しにかかる。
 残ったリンヴォイが必要なものを申請するのを見て、アヅキは斉藤に声をかけた。
「斎藤さん、お願いがあるのだけどドラム缶と遮蔽用のカーテン一式手配してくれない?」
 彼女はコンクリ製の海亀の卵に座って背中を丸めていた。スマートフォンをいじっていた顔を上げ、
「あー、そういうのは長谷川にお願い……って、それ何?」
「ああこれ、銃。友達が町に行きたいんだって」
 アヅキの腰にぶら下がった、友人ホーリー・ホワイトから預かった銃に、斉藤は眠そうな目を丸くした。が、ホーリーのカウボーイスタイルに納得がいったのか、
「あぁ、やっぱり二丁拳銃なんだ。そんな感じするわね……ちょっと怖いけど」
「収容所の難民が反乱起こす映画にはならないと思うよ。それでドラム缶はお風呂用に欲しいの。長谷川君もさすがに女の子に野ざらしで風呂入れとか言わないよね? 斉藤……えーと、下の名前は? 斉藤さんも女の子だから分かるよね」
「雨の音で雨音……斎藤 雨音(さいとう あまね)
 重そうに腰を上げると、雨音は話し込んでいる陽向に無遠慮に声をかけた。
「ほら、長谷川。配慮足りないって」
「何のことだ? 何か必要なのか?」
「お風呂用にドラム缶だって。ホースとバケツ、中に入れる簀の子も要るわね。あと隠すためのカーテン……物干し台と竿を頂戴」
「まずは風呂に入れるだけの水が必要だが」
「それは何とかするんでしょ、多分」
 怪訝そうな陽向に承知させると、雨音はアヅキを振り返って、ほんの僅か微笑した。
「うち、実家が銭湯なのよ、今は休業してるけど。お風呂は大事よね」
 陽向は召喚者たちから物資の聞き取りすると、制服姿で無言で佇んでいる目つきの悪い少年にそれを渡した。
 この町に着いたときにもいたが、アサルトライフルのような銃器を持っているところからすると、警備員だろうか。
「加賀、これを頼む」
 少年は鋭い目つきで召喚者たちを一瞥して何か問いたげな視線を陽向に向けた。陽向が大丈夫だと答えると、彼は短く抑揚のない声で「分かった」とだけ答え、町中へ戻っていった。


 申請した道具が町から運ばれて来る頃には、皆それぞれの作業に従事していた。
 何せ日が暮れたら周囲は相当暗くなる。細かい作業が出来なくなる上、気温も下がる。基本的に寝床でじっとしているしかないのだ。
 リンヴォイが魚と、瑞々しい野草を入れた二つのバケツを古民家まで持ってくると、ミーティア・アルビレオが集めた枝で焚き火を始めたところだった。
「これ、お昼の足しにしよう。野草があって助かるね。朝露も飲めるし……ただ、公園内のものには限度がありそうだ」
 小川の周りを野草摘みがてら見て回ったが、魚もメダカなど小型のものを除けば、数百匹とはいかなそうだ。全員の腹を満たすには採集だけでは早晩不足するだろう。
「そうだねぇ……」
 何か考え込んでいるミーティア。リンヴォイはバケツを置くと、海亀の遊具側にある鉄棒へ向かった。鉄棒の間にロープを渡して、使い古しのカーテンでハンモックを作ると、その上に傘で屋根を作る。これで少なくとも地面の冷えからは逃れることが出来そうだが、ロープは細く心許ない感じがした。

 風が強くなかったのが幸いした。
 ミーティアの目の前で、火口に燃え移ったマッチの火は順調に小枝を燃やし、太い枝に燃え移っている。
 彼女はそのまま太い枝が燃え尽きるのを待った。彼女の目的は焚き火ではなく、それから得られる炭である。
 少々煙いが、黒々とした樹皮の合間から覗く赤はどことなく落ち着く。
(動じなかったねぇ~そう見えただけかもしれないけどねぇ)
 陽向に彼女はこう言った。
「この対応ってことはぁ、自分たちだけで生活できてるんだねぇ。だって、私達は助けたいと思ったから助けてるだけでぇ、義務ではないからねぇ。心象悪くしてぇ、助けてもらえなくても大丈夫ってことでしょぉ~?」
「……そうだ。今のところは。君たちは無理に町を助ける必要はない。君が言ったとおり義務ではない」
「まぁ、私は助けるけどねぇ」
 陽向は複雑そうな顔をしつつ、ありがとうと礼を言ったのだった。

 上野木 幸蔵がまず向かったのは、小川だった。
 幅はせいぜい2メートルほど。深さもなく、豪雨で増水でもしない限り流されることはないだろう。
 上流を辿るため緩やかな上り坂を登って行くと、小さな木造の水車小屋が見えてきた。
 小川の水が水車の軸の辺りから流れ込み、ゆっくりと輪を回している様子に、幸蔵は既視感を覚えた。昔の物を保存していると言っていたが、彼の出身世界ヒノモトの農村では丁度こんな水車が使われていた。
 水車小屋の扉は立て付けが悪くなっていた。力を込めて横に引くと土埃くさい室内に、石臼がひとつ鎮座していた。芯は回っているが、杵は臼の上で止まったままだ。
「これは脱穀用だな。動いていないようだが……展示と言ってたか」
 薄暗い室内を見回すと、動力を伝えるための大小の歯車が取り外され壁に立てかけられている。
 簡単な図解も壁に掲示されており、幸蔵なら元に戻して使えるようにできそうだ。
 ひとまず外に出ると、仲間から分けてもらったバケツで水車からこぼれ落ちる水を汲み、ミーティアの元に戻ると、刀神 大和も戻っていた。
 彼女の側には枝や砂や小石、そして炭が並べられている。
「これで濾過したらいいですよぉ。底を切って……あ、吊せると便利ですねぇ」
 ミーティアが陽向からもらった空の2リットルペットボトルの底を大和が切り抜く。続いて切り口の側に二カ所穴を開け、紐を通してバッグのようにすると木に吊す。
 そこに、炭、砂や大小の石を層にして詰めていく。
「井戸水ならやったことがある。布を入れるといい」
 幸蔵は一瞬、炭俵がのし掛かってくる光景を思い出して顔をしかめたが、不要な布を一番上にかぶせる。
 協力して完成した濾過装置に、川から汲んできた水を入れれば、ゆっくりと浸透した水がペットボトルの口から出てくる。
 大和がそれをバケツに受ける。目に見えるゴミもなく、臭いもない。
 大和は実験結果に満足げな顔をすると、残りを二人に任せた。
「次はこれを煮沸消毒する。濾過のほう続けてくれ」
 幾つも借りてあるバケツを指さすと、古民家のかまどを使い、拾ってきた枝や、貰った乾燥した廃材を組んでライターで焚き火を起こし鍋に沸騰させた。
 綺麗になった水を冷まし、味見をする。
(まぁまぁ、飲める味だな)
 分けて貰った空の綺麗なペットボトルに注いで封をすれば、やっと飲料水の完成だ。
「……後は量産化か」
 陽向もこれを見れば少しは認めてくれるだろう。
 報告のため古民家を出れば、焼き魚と野草のスープのいい匂いがしてきた。
「丁度お昼にしようと思ってたところだよ」
 リンヴォイが枝に刺した焼き魚を大和に差し出した。




小川町


 一度町に戻るという陽向たちに、二人の召喚者が町への同行を希望した。
(……閑散としてるな)
 織主桐夏は素直な感想を抱いた。
 バリケードをくぐって入った小川町は、パンデミック以前であっても栄えているようには見えなかった。多分人口も少ない――あれだ、若い人は都会へ行ってしまうと言うヤツなんだろう、と桐夏は納得した。
 子供だけになれば尚更だ。
「そういえば自己紹介がまだだったな。今後長い付き合いになるかもなんだ。今からしてもいいだろう。ちなみに俺は織主桐夏。17歳、クソマイスターだ」
 怪訝な顔をする陽向に、雨音がやめときなさいよと言う顔をしたが、少し遅かった。
「クソマイスター?」
「ああ、クソマイスターってのは……」
 説明を始める桐夏を陽向は慌てて遮る。
「いや、いい! 説明は後で時間のあるときに聞こう。……しかし女子の前でクソとは……いや。改めて、僕は長谷川陽向だ。町長代理を務めている」
「よろしく、ハセガワ」
 もう一人の訪問者・ホーリー・ホワイトが指し出した右手を、陽向は握った。
 ホーリーの左手は義手である。武器はアヅキに預け、義手も外すことを考えたが、そこまでする必要はないとのことだった。
「それで、こっちの二人は?」
「斉藤雨音と加賀陸(かが りく)だ」
 同じ年頃の女子という共通点にホーリーは気を引かれたのか、雨音に尋ねる。
「へえ。サイトー、似たような服着てるけど、流行ってんの? そのズボン可愛いな」
 西部劇のガンマン風の出で立ちが当然だったホーリーには、動きにくそうなその服は物珍しく見えた。揃いのブレザーに、男子はネクタイ、女子は同色のリボン。女子はスカートの筈だが、雨音はその下にジャージを重ね着している。
「ああ、これは高校って言って……パンデミックの前まで通ってた学校の制服よ。女子はスカートしかないけど、こんな世界じゃ色々不便だから体操着のジャージはいてるのよ」
 確かに、町は人が減ってあちこち手入れが行き届いていないようだ。瓦礫もある。
「僕たちは同じ高校の生徒だった。大人がいなくなってからは最年長グループになり町内の自治会を作った――僕たちは『生徒会』と呼んでいる」
 陽向は続けた。
「僕がたまたま生徒会長だったからそうなった。それに、制服なら小さな子にも見分けが付きやすい」
 確かに、たまに子供たちが通りかかるとこちらに手を振る。相談を持ちかけられると、陽向はいちいち足を止めて細かく指示を出していた。
「斉藤は書記、加賀は警備担当の責任者だ」
「私と加賀は学校じゃただの生徒だったけどね。……あと、書記っていっても名前だけで、壁新聞作るくらいしかしてないから、あんまり頼らないで」
 だるそうに雨音は言った。面倒ごとは引き受けたくなかったのだろう。
「……ここが小川町駅だ。元から電車も三十分に一本くらいしか通らないが、今は動いていない」
 小さな駅舎は少し離れていても、入り口から改札が見渡せた。校内にある黒板の掲示板にチョークの白い文字が見え、100円入れるタイプのコインロッカーが置いてある。
 駅の周辺の商店――商店街という規模ではない――は子供によって運営されているようだった。
「雑貨屋には余所の町との取引で手に入れた品物も並べてある。店は他にもある。配給もある。だから実家や親戚の家のものは除き、町の物は全員の財産として、勝手に使うことは禁止している」
「だけどこのままじゃジリ貧よ。それで召喚者がいるなら手を借りたいって訳。……じゃなきゃ私、家で寝てるわよ」
 雨音がため息とともに付け加えた。
「そうか、なら――」
 桐夏は鞄から『現代知識チート大全』と題された本を取り出した。
「お互い協力できればなんとかなるはずだ。だから、信用しろとは言わんが可能な範囲でいいから話を詳しく聞かせて欲しい」
 立ち止まり、陽向は本をめくった。彼の出身世界が似通っているせいか、陽向にもその字は読めた。浅く広く様々な知識が書かれている百科事典のようなものだ。
「確かに便利そうだな」
「全部実践できるかはともかく、俺たちの世界の知識も役に立つだろう。こっちの生活が落ち着いたら協力できると思うぜ」
 陽向は軽く頷くと、和モダンな一軒家の前で立ち止まり、
「ここが図書館兼学校だ。以前は本好きの老人の家だった。本屋にあった売り物や、各家庭にあった役に立ちそうな本を募って出来た。知識が断絶すれば今以上に状況が悪くなり、離散する可能性もある」
 陽向は厳しい表情でコンクリートのひび割れに目をやった。
「今僕は、生存域の拡大を目指している。そのための調査隊も出かけている。ただし残されたもので食いつないでいる。水道の水質も安定せず、電気もいつまで来るか。冬が来る前に準備を整える必要がある。同時に、誰かに奪われないための力も」
「俺たちを警戒してるみたいだが、前に何かあったのか?」
 ホーリーの問いに、彼は召喚者の他にもいる、と話した。
「子どもだけの集団に対して、どんな特殊能力があるかも分からない成人たち。勝ち目は薄いだろう?
 それに……以前、他の街の子供に襲撃を受けたことがあった。食料の奪い合いだ。加えてパンデミックの最中の出来事だが、この街や周辺で子供が行方不明になっている。事故か事件か不明だが、用心に越したことはない」




はじめての朝


 翌朝。
 海亀公園で一泊した召喚者たちは、寒さと節々の痛みに耐えながら目を覚ました。
 火をおこし暖をとりながら食事をする――夜も焚き火の番があった方が良かったかもしれない。敷き布団や毛布も恋しい。この場所はあまりに不便だった。
「……もう水の確保が出来たのか。思ったより早かったな」
 様子を見に陽向らがやって来た。大和が水と濾過装置を見せれば感心したように微笑を見せる。
 大和はすかさず提案する。
「燃料にも限度がある。くたばる前に軌道に乗せたいがな。樽か何かが余ってればいいんだが」
 女子が風呂とか言っていたが、飲み水以外の生活用水も確保するとなるとペットボトルでは心許ない。
「樽はないが、大きな容器……適当なものを探してみよう。これからは町の店の利用も許可するので、探してくれてもいい。それに多少は不安も軽減されるだろう」
 許可を出す陽向に、雨音が眠そうな目をこすりながら口を挟む。
「開けるの?」
「ああ、今から止水栓を開ける」
 彼は公園のトイレと水飲み場の水はわざと止めてあったのだ、と言う。
「自分たちで水を確保できるか確認したかった。元々、滅多に利用しない公園の蛇口が開けっぱなしになっていたら無駄になるから止めてあったんだが。それからもう一つ……」
 一拍置いて、陽向は眉をひそめながら、
「町中もだが、水に妙な着色や臭いがみられる。メンテナンスがされていないからだろうと思っていたが、最近頻度が増えている。
 供給側……浄水場か水道管か、水源か……何かあったのではないかと思う。言うまでもないと思うが、そういう時は使用を避けてくれ」
 ――こうして、はじめての朝を迎えた召喚者たちの二日目が始まった。


――――――――――――――――――――――――――――――――

<マスターコメント>

 ご参加ありがとうございました。
 初回だからと舞台設定の説明などしていましたら、想定よりも長くなっていました……。

 今回は海亀公園での水の確保・採集、小川町の施設の少しだけ紹介がありました。
 次回は農作業と町の探検などになるかと思いますが、皆さんのアクション次第で変わっていくと思います。素敵なアイデアお待ちしております。

 海亀公園での進捗
  ・飲料水の確保
    小川の水は「異臭や着色」はしていませんので、飲用に適したものが作れました。
    同じ装置の量産化や単純に改良型にする場合などの場合は、すぐに作ることが出来ます。
  ・食糧の確保
    現在の公園で採取したは魚と野草です。これに加えて、配給の食料と水が残っています。
  ・水車の修理
    技術や知識があれば部品を取り付けて使用可能です。基本的には脱穀用です。
  ・寝床の確保
    男子だけど古民家で寝たい、自分はテントを張りたい、等の場合は要交渉&アクションです。
  ・トイレと水飲み場
    飲料水確保の結果、使用可能になりました。ただ水質が不安定です。


 それでは、もしご縁がありましたら、また次回お会いいたしましょう。

――――――――――――――――――――――――――――――――


<定員> なし
<参加締め切り> 3月6日23時
<アクション締め切り> 3月10日23時
<リアクション公開予定日> 3月20日
<リアクション公開日> 3月19日

<参加者>
刀神 大和
リンヴォイ・レンフィールド
ミーティア・アルビレオ
アヅキ・バル
織主桐夏
上野木 幸蔵
ホーリー・ホワイト
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  1. 2018/03/04(日) 12:00:00|
  2. リアクション

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