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【レアシナリオ】水花芽復興報告書

水花芽復興報告書


マスター:沢樹一海




 
 パンデミックが起き、大人が死に絶えてからそろそろ1年が経とうとしている。子供達は1年分成長し、ささやかな誕生日パーティーが開かれることも多くなった。
 また、朝比奈愛依が召喚者ガチャを開発してからも随分と月日が経った。召喚者達の協力で漫月造から離れた町の子供達の状況も判ってきて、不透明な部分は少しずつだが減ってきている。
 愛依の執務室では、現在の状況をまとめ、記録するための会議が行われていた。
「県外にも行けるようになったし、食料の自給率が上がったから餓死する子供もいなくなったわ。お腹が満たされることで前向きに生きようとする子が増えて、学校も活性化してきてる。それに、10代後半の生き残りの多くが自分達で出来る仕事を考えて動き始めたわ。自警団の人数も増えたし、一番助かるのが医大に通っていた人達ね。これまで薬局にある市販薬だけで凌いできたところを、正しい病気の診断が出来るように残った教材で勉強しようとしてる。まあ……皆が皆、動き出したわけじゃなくて怠けている子もいるけど」
「怠けてる?」
 パソコンを打ちながら言う夜桜切菜に、冨樫 慶太が聞き返す。
「そう。怠けてるというより、危機感が無いっていうのかしら。食事に不自由しなくなってきたことで、自分達が何もしなくてもこのまま暮らせるって思っちゃって何もしない子達ね」
「あー……そういうことか」
 慶太は困ったように頭を掻いた。
「ああそうだ、大人達の火葬だけどな、何か月か前に一通り終わって、今は遺族にタグを返して回ってるとこなんだ。それも終わったら、自警団に入ろうかと思う」
「自警団……それは助かるな」
 彼の炎の力が加われば、魔物退治は格段に楽になるだろう。
「僕は今、電気やガス、水道の設備の確認を進めています。マニュアルが残っていましたから、思っていたより何とかなりそうです。その設備の近くに住んでいる子供達とも仲良くなって、彼等も協力してくれています」
 唯我の報告を、切菜はパソコンに入力していく。やがて手を止めると、彼女は愛依と目を合わせた。
「それで……召喚者ガチャの改造は進んでいるの?」
「うん。……もう少ししたら、召喚者を故郷に戻すことができるようになると思う」
 愛依はこの時だけ素の口調で、少し寂しそうな表情で言った。
 室内がしんみりとする。
 けれど、呼び出した者は戻さないといけない。それは、喚び出した側の義務でもある。
「…………」
 沈黙が落ちた中、唯我はそっと扉を開け、執務室から姿を消した。


――――――――――――――――――――――――――――――――

<マスターコメント>

かなりフリーシナリオに近いシナリオになります。

月日が経ち、漫月造周辺から始まった復興活動も少しずつ変化を見せてきています。
召喚されたPCが、今、それぞれ何をしているのか、
現状の水花芽に何を思い、これから何をしようとして、そして、「故郷へ帰る」ことに対してどう考えているかなど、
自由にアクションを書いていただければと思います。
勿論、ガイドの内容に言及したアクションもOKです。

また、これまでのメインシナリオの中で、何かすっとばしていることがありそうでしたらその辺もちょこちょこと書いていただけると幸いです。質問コーナーのようなものです。

尚、このシナリオでは

ダブルアクション、
トリプルアクション

を認めます。

残り何回シナリオを出せるか分かりませんが、やり残しのないようにアクションを書いてください。

よろしくお願いいたします。
<リアクション>

1 召喚者ガチャの前で

 召喚者ガチャは、アヅキ・バルが故郷から漫月に来た時とはかなり違う外観をしていた。等身大で円筒形の機械だったそれは、数多の寄生植物の管に吸い付かれた木の幹みたいになっている。
(改造……してるんだ……私達が元の世界に戻れるように……)
 円筒の中心では、虹色の空間が揺らめいている。この先の一つに、アヅキの故郷がある筈だ。
 そこで過ごしている家族や友達が立って笑っているような気がして、アヅキは彼等に話しかけた。
 ――こんにちは。……こちらでの生活も結構長期間になり、ちょっぴり私も成長しました。少し、背も伸びたかな。
「地球ではずっと隠してきたアラクニアン人としての能力も普段から使うようになって、ずいぶん上達したよ」
 虹色の向こうで、皆が嬉しそうにする。不思議と、それはイメージの中の笑顔ではなくて個々がそれぞれに持っている本物の笑顔に見えた。
 アヅキも笑う。
「シャッドおじさんに教えてもらった格闘術は、こっちのサバイバル生活ではずいぶん役に立ったよ。いろいろ危ない場面もあったけど、おかげで生きてます」
『そうか』
『それは、今度見せてもらうのが楽しみだ』
『強くなったのね』
 懐かしい面々の答えが自然に想像でき、あの頃に戻ったように感じられる。けれど、実際に会えば少しばかり違うのだろう。アヅキと同じように、彼等も月日を経ているのだから。
「――あと、子供達に勉強教えるの結構楽しい。元の世界だと同年代の知識レベルも地球人に合わせてたからかなり抑えていたけど、あれって今考えると結構窮屈だったね」
 漫月の子供達は、貪欲に知識を求め、吸収していく。近い将来、かつての大人達に匹敵する活躍をしてくれるだろう。

 2 戻るか留まる、その先には――

 佳波 まどかはいつも通りに朝の見回りを始めていた。農作業がしやすい服装で、まずは畑の様子を見に行った。
 畑にはナスやトマト、キュウリやとうもろこし等の野菜が実っていた。まどかが召喚されてきた頃は、明らかに栄養の足りていない野菜が育てられていた。作業をしていたのも痩せた子供数人と草野という17歳の少女だけで、沈んだ空気が流れていたのを覚えている。でも今は――
 日光と水、良い肥料で美味しそうに育った野菜の中で、広い農園で、笑顔の子供達が農作業を行っている。
「あ、まどかお姉ちゃん!」
「見て! 実がおっきいとうもろこし!」
「まどかさん、今日は収穫日和よ。隣町にも持っていけそう!」
 草野は何の託もなく笑っている。畑の脇には、野菜が入っているであろう段ボールが積み上がっている。
「良かった。私も一緒に行くね。何時頃になりそうかな?」
「お昼過ぎになるかな。いつも通り軽トラに乗せて行くことになるよ」
「わかった。その頃になったらまた来るね」
 まどかは草野と子供達に手を振って別れ、次に牛舎に行った。ここも以前と比べて随分と変わっている。隙間が多く汚れた上、形もいびつだった牛舎は建て直され、今はしっかりしているし清潔だ。牛達の数も増えて、ミルクも多く取れるようになった。牛はそう頻繁に出産しないし、子供が生まれてもすぐ大人になるわけでもない。たんぱく質としての役割はまだ殆ど無いが、いずれは大きな牧場となる日が来るだろう。
(そうなるところ、見てみたかったな……)
 少し切ないような気持ちになる。帰ったらもう戻れないのなら、未来の水花芽牧場を見ることはできない。
「…………」
「どうしたの? 考え事?」
 背後から丑野に声を掛けられ、まどかは我に返った。「モゥ~~~~」と牛達も声を重ねる。どこか心配気だ。
「あ、うん、ちょっと……」
「召喚者ガチャの事かい? 元の世界に戻れるかもしれないって聞いたけど……」
 丑野は今年19歳になる、少し太めの青年だ。この辺りの酪農のリーダーだが、実家で酪農をしていたとかではなく、元々動物が好きだから世話を始めたらしい。まどかと一緒に現状報告をすることも多く、愛依達とも親しかった。恐らく、何かの話の折にガチャの事を聞いたのだろう。彼の表情は曇っていた。
「戻る……のかい?」
「……どうするかは、正直、まだ迷ってる……」
 2人の間に沈黙が落ちる。牛達も空気を察したのか静かになった。
「ここ最近は順調とはいえ、それでも、ずっと一緒にやってきたみんなのこの先を見届けたい気持ちもあるんだ。でも、ライフラインや技術が復活していく今、普通の女子高校生ができる事なんてそんなにない……」
 残っても、もう新しく役に立てることはないんじゃないか――そんな考えが脳裏を掠める。
「来たり戻ったりとかは、出来ないのかなあ……」
 丑野は呟く。「え?」とまどかは顔を上げた。そうだ、“戻ったり”できる可能性もあるかもしれない。
「愛依ちゃんに聞いてみるよ」
「うん、そうした方がいいね」
 にこっと笑顔を浮かべてから、周囲を見渡して丑野は言った。
「さっきよりも顔が明るくなったね」
 まどかと彼の周りには、いつの間にか何人もの子供達が集まっていた。

 ――丑野と別れると、まどかは自分の部屋に戻った。未使用のノートを開いてペンを持つ。
(もし自分が帰ることになっても困らないように、伝えられるものは伝えよう)
 あちこちの町と交流できて動物も増えたし、慣れたとはいえ畑も牧場も調理もと、食に関する仕事は沢山ある。
「今までにやってきた事を残しておこう」
 電気があまり使えなかった頃にやってきた事、保存の仕方、畑の堆肥や害虫よけ、鶏や犬達のごはんに、味噌の作り方、それから、それから……
「勉強のノートだってこんなに真面目に書かなかったよー」
 行を開けたりカラーペンを使ったり、イラストをつけたり。
 子供でも分かりやすいように、易しく丁寧に書いていく。
(……電気が安定すれば機械ももっと動かせるし、もしかしたら必要のなくなる技術かもしれない)
 全てを人の手で行う時代は過ぎ、文明の結晶が作業のメインになる日が来るだろう。何せここは、実際はまどかの故郷よりも遥かに文明が進んだ世界だ。召喚者ガチャのある世界だ。
 でも――いつまた何かが起こるか分からない。順調に復興できるのかも分からない。
「その時に役に立ってくれればいいな……もし私がいなくなっても」

 ――アヅキが研究室を出ると、まどかと愛依が廊下を歩いてくるところだった。
「またこっちに戻って来られるか……か?」
「うん、どうなのかなって思って」
 質問を聞いた愛依の表情は明るくない。まどかは、どこか緊張しているように見える。アヅキにはその理由が分かった。次に放たれる答えによって、まどかの未来が文字通り左右されるのだ。
 いや、まどかだけではない。『こっちに戻って来られるか』に対する答えは、アヅキと召喚者全員のこれからも大きく変える。
「今はまだ……違うな、きっと無理だ」
 どこか辛そうに、俯きがちに愛依は言った。
「召喚者ガチャは、空間を越えた先にたまたまいた者を召喚する物だ……今は、召喚者がこちらに来た時のルートを逆に辿れるように数値の解明を行っている。それが判明すれば、ガチャに入ることで故郷に帰ることもできるし、同じ数値を使えば私達がついていくこともできるだろう」
 けれど、ガチャを通った先にある召喚者達の故郷には、ガチャが存在しない。
「通行する為のガチャがなければ、互いの世界の行き来はできない……」
「そっか……」
 まどかが俯く。アヅキも口を閉ざしてしまい、廊下には若干沈んだ空気が流れた。
「寂しくなるけど……、2人も帰るんだよね? 私がもし逆の立場だったら帰りたいと思うし……」
 愛依は2人を交互に見た。瞳がどこか揺れている。
「う、うん……」
「…………」
 アヅキは少し考えるように間を開け、愛依と目を合わせた。
「正直言えば、やっぱり帰りたいです」
「……そう、だよね……」
「向こうに戻ったら、また素性かくして生きなきゃいけないだろうけど……」
 いきなり召喚されたから、家族の誰にも行先も理由も何も言っていない。アヅキは自分がいなくなった後の皆の行動や心情を想像した。
「突然謎の失踪してきたわけで、当然皆心配しているだろうしなぁ。他にも、リアルタイムに読んでたコミックの続きとかドラマの続きとかどうなってんだろう、とか。やり込んでたゲームの新作もそろそろ完成するころなんじゃ……とか」
 話しているうちに、愛依の目が丸くなっていく。鱗が落ちたみたいな表情だ。
「ああ、そうだな、それは気になるな」
 そして、思わずというように笑った。まどかも、そういえば……という顔をしている。それから、3人は雑談しながら廊下を移動した。話しながら、アヅキは故郷に戻った時に何と説明すればいいのかと考える。
(ちょっと異世界転生……じゃないか、異世界に飛ばされて世界を救ってました? …………)
 凄く嘘くさい。だが、まるっきり嘘でもない訳で。
(宇宙船の事故で銀河の反対側まで飛ばされて地球にたどり着いたお父さんと、それをすんなり受け入れたお母さんでも、異世界転送とか信じてくれるかな)
 ――まぁ、その時がきたら考えよう。

 3 人の姿を保つ為に

 ――おれが初めて人の肉を食べたのは、3歳の時だった。
 ――その時は、“それ”が人の肉とは知らず、ただ食べたことの無い味に、その美味しさに虜になった。食卓には母とおれの分だけがあり、父の前には魚料理が置かれていた。お肉を食べないの? と訊いたら、今日は魚の気分なんだ、と答えられた。
 ――弁当にも“それ”は入っていた。
 幼稚園の時だった。
 おれが食べていると、隣にいた子が美味しそうだね、と興味を示した。一切れあげると、その子は嬉しそうに“それ”を食べた。そして数時間後――苦しんで、死んだ。
 泣きわめく子供達、狼狽する大人達、その子だったものを運んでいく救命隊員。その中で、おれは茫然としながら――死んだあの子を見て“美味しそう”と感じてしまったことを思い出していた。
 夜になり、両親が“それ”が何なのか教えてくれた。人間が食べると死んでしまうけど、おれと母は食べなければいけないもの。
 ――次にその肉が出てきた時、正体を知っているにも関わらずおれは抵抗なく食事をしていた。美味しい、と思っていた。一度味を知ってしまえばもう止められないのだということを実感していた。

「……まずい」
 それを今はまずい、と感じる。その理由が聖は分からなかった。単に味覚が変わったのか、冷凍していた期間が長すぎて質が悪くなったのか、それ以外の理由なのか――
 ノックの音が聞こえ、思考が中断される。「どうぞ」と言うと扉が開き、案内役の少年と霜北 凪、冨樫 慶太が入ってきた。
「お、メシの途中だったか? それって……」
 そう言う凪の隣では、慶太が渋面を作っている。一目で食材を特定するのは難しい筈だが、勘が働いたのだろう。
「これで最後だよ。大人の体はもうどこを探しても無いんだから」
 時期的に他の県にも無いだろうし、もう死体を手に入れる方法はない。仲間に何かがあれば埋葬することになっている。
 聖の言葉に、慶太はますます渋い顔になった。だが、凪は逆に笑顔になる。
「大丈夫だ! おじさんがひじりんのイケないボディ問題の解決策を持ってきたぜ!」
「……?」
「人を食べなくてもいい方法を思いついたって言うんだ。その方法はまだ聞いてないんだけどな」
「…………? 食べなくてもいい……?」
「ああ! これからその解説委員をしよう」
 胸を張る凪を、聖と慶太が怪訝な目で見つめている。
「その前に一つ確認だ。ひじりんは、人を食べることしか試してないんじゃないか?」
「…………。試すって何? おれはそうすることで満月の夜に狼にならないって教わったんだ。それ以外の方法なんてない」
 聖は空になった皿に目を落とす。それを見て、案内の少年が別の解釈をしたようで、彼は皿を回収して部屋を出ていった。扉が閉まり、凪は話を再開する。
「人の体を維持するため、遺伝情報を取り込む際に食べる、つまり経口摂取をする。果たしてその変換効率はいかがなものか? もっと効率のいいほーほーを考えよう!というのが今回のお話し」
「食べて栄養を取り込むんじゃ、燃費が悪いってことか? でも、効率も何も、もう死体はないんだぜ。今更じゃないか?」
 慶太は眉を寄せている。彼はどうも聖のことになると考えること自体に抵抗感を覚えるようだ。それはそれとして、聖も相変わらず不可解そうな顔をしている。
「死体からじゃなくて、生きてる人間から人の構成要素を分けてもらうってのはどうだ?」
「? 人間の踊り食いってこと?」
「いやいやいやいや」
 笑顔の前で手を左右に振って否定すると、凪は言った。
「消化によって一度分解してアミノ酸を再構築するーというプロセスを経るよりも、カラダのナカにダイレクトにぶちこんでそのまま使えるもののほうが効率が良いのだろうと考えを進めていったら、輸血をしてみるのはどうだろうとおじさん、考えたのですよ」
「「輸血……!?」」
 聖と慶太は同時に声を上げた。さすがに2人共驚いたらしい。
「なるほどね。でも、今の状況じゃ……」
「…………元医大生達が勉強を再開してる。医大に行けば輸血くらいはできると思うぜ」
「医大……」
「そういうことだ! おじさん的にはひじりんとは慶太くんが一番マッチしてるんじゃねーかとは思うんだが。ひじりんは狼人間としてかなりレベルが高いんだろ? 慶太くんも強力な炎の力を持ってるし、力が近い奴同士のほーが変な症状とかないんじゃねーかなーってな。根拠はないけど」
 黙っている2人に、凪は今日一番の笑顔を見せた。
「皆さんのご協力を得られれば、もしかしたら慶太くんに頼る必要もないのかもしれない。おじさんもお医者サンのお勉強をして力になろう!」

 4 夜のひと時

 日が陰り、まどかは調理室で子供達と一緒に夕飯を作っていた。
(食べる事は大事だからね)
漫月に残るにしろ故郷に帰るにしろ、子供達がこれからも生きていけるように料理の仕方や包丁の研ぎ方はしっかり教えておかないと、と彼等に丁寧に声を掛けていく。
「あ、そこは弱火でね。お砂糖を入れると焦げやすいから」
「ねえねえ、このくらいでいい?」
「うん、ちょうどいいよ」
 調理の様子から目を離さないようにしつつ、作業はなるべく子供達に任せるようにする。料理が完成するまでもう少しだ。
(そうそう、天然酵母の仕込みもやっておかないと)
 思い出し、早速準備を始める。
「せっかくパンも食べられるようになったんだから、絶やすわけにはいかないよね」
 ふわふわのパンを想像しながら、まどかは天然酵母を仕込んでいった。

☆★☆★☆★☆彡


「町もぉ、結構、復興してきたよねぇ〜」
 ミーティア・アルビレオは、この世界に来た頃よりも笑顔と活気が増えたフロアを見て満足気に言った。夕食の時間になり、配膳された料理を皆が美味しそうに食べている。以前は、下を向いて泣きそうな顔をして食事をしている子をよく見たが、今は笑顔が圧倒的に多い。
 今日のメニューである肉じゃがやおひたし、みそ汁等を食べ終えたミーティアは、仲良くなった幼子の頭を撫でて席を立った。
「これからもぉ、大変だろうけど……そろそろ一息、ってところなのかなぁ〜」
 足取りも軽く、彼女は愛依の私室に向かっていった。

「愛依ちゃん、いるかなぁ~?」
 声を掛けて扉をノックすると、愛依は顔を覗かせて彼女を招いた。
「ミーティアさん。お疲れ様」
「愛依ちゃんもぉ……お疲れ様ぁ〜」
 微笑んだ愛依は部屋の中に戻ると、ソファに座った。
「何か、飲むぅ〜? 淹れてくるよぉ〜」
「えっと、じゃあ……ブロッサムティーがいいな」
 桜の葉を乾燥させたお茶を頼むと、ミーティアは「りょーかいだよぉ~」と言って隣の給湯室に入っていった。しばらくして、トレイを持った彼女が戻ってくる。隣り合って座ってお茶を飲むと、ほんのりとした香りが心をリラックスさせてくれた。
「召喚ガチャの方も……進んでるんだっけぇ?」
 ティーテーブルにカップを置き、ミーティアは言う。
「あんまり根を詰めすぎちゃぁ、だめだからねぇ。寝るのとかぁ……大事だよぉ〜」
「そういえば、いつも夜更かししてるなあ……」
「夜型なのかなぁ? でも、遅くまで起きてると体に良くないからねぇ~」
 お茶を一口飲むと、彼女は正面を向いて何かを考えるように間を置いた。
「……今、私達が故郷に帰れるようにガチャを改造してるんだよねぇ~」
「……うん……」
「帰れるようになるって……どういう感じ、なのかなぁ。また、こっちに来れたりって……するのかなぁ? ちょっと、そこが気になってぇ」
「それは……」
 愛依が俯く。それから、首を振ってからまどかとアヅキに話したことをミーティアに説明した。申し訳なさの中に、個人的な感情がかなり混ざった表情をしている。笑顔の消えた彼女とは違い、ミーティアは特に悲壮感もなくいつも通りだった。
「そっかぁ、こっちに来れないなら……私は戻る気は、ないかなぁ」
「え?」
 ちょっと前までの感情を忘れたかのような間の抜けた顔で、愛依が視線を合わせてくる。
「帰らなくて……いいの? 帰りたくないの?」
「んー……別にぃ、帰りたくないってわけじゃぁ……ないんだよねぇ。取りに行きたいものとかもあるし〜」
 だが、ミーティアはそこまで帰ることにこだわってはいなかった。
「ただ……戻ってもぉ、やりたいこととかないんだよねぇ」
 ベッドの上に座りなおして、召喚前を思い出しながら話し出す。愛依は、まだぽかんとしている。
「元の世界にいたときはぁ……周りと同じよーに過ごしてぇ……なんとなーく生活して……テキトーに仕事を探してたかなぁ。そんな風に過ごしてた時に……こっちの世界にぃ、召喚されたんだよねぇ」
 何か特別なことをしていたわけではなく、流されるように生きていた。だから――
「だからぁ……あまり、元の世界に戻りたいとかなくて……元の世界以上にぃ……こっちの世界の方が……気になってるっていうのが……正しいかなぁ」
「…………」
 愛依は、気が抜けたようにソファに身を沈める。頭をぽんぽんとされた彼女に笑顔が戻る。
「そうなんだ……」
「……いや、それだけじゃ……ないかなぁ」
「え?」
 足をぶらぶらさせながら、ミーティアは世間話の延長のような口調で言った。
「愛依ちゃんのそばにいたいからぁ、私は、まだここにいるよぉ」
「私の、側に……?」
「愛依ちゃんのことがぁ、好き、だから」
「え……私も、好きだけど……………………。……え?」
 目を瞬かせた愛依は、明らかに驚いているようだった。言葉の意味を察したらしい。
 ミーティアは頷き、はっきりと告白した。
「うん、好き、愛してる」
「あ、愛し……!? あ、う、でも……私達、2人共……」
「ん? 私の世界だとぉ……女の子同士でもおかしくなかったよぉ」
 真っ赤になってうろたえている愛依にマイペースを崩さずに言うと、ミーティアはふふ、と笑う。
「返事はぁ、別にいいからねぇ。私がぁ、こっちの世界にいたい理由、伝えておきたいなってぇ……思っただけ、だから〜」
「う、うん……」
 うん、と答えてはいても愛依はまだ混乱している。その様子を穏やかな眼差しで見ていたミーティアは、「ふわぁ……」とあくびが出たところで壁時計に目を遣った。時刻は22時を過ぎようとしている。
「お話ししてたら……なんだか眠くなってきたねぇ。愛依ちゃん、一緒に寝よぉ」
「えっ! い、一緒に……!?」
 愛依の顔がますます紅潮する。
「じゃ、じゃあ私がソファで寝るからミーティアさんはベッドで……」
「ふふ、何もしないから大丈夫だよぉ~。それなら……私がソファで愛依ちゃんがベッドねぇ」
 彼女がソファに寝転がると、愛依は慌てて毛布を持ってきて彼女にかけた。
「さっきも言ったけどぉ……根を詰めすぎちゃ……ダメ、だからねぇ〜」
 ベッドに入ったところでミーティアが言う。彼女の真面目な顔を前に、愛依も我に返ったように真顔になった。
「……うん、ありがとう」
 愛依の寝息が聞こえてくるまで、そう時間は掛からなかった。

 5 パンデミックの原因

 数日後、織主桐夏はネットカフェの個別ブースでアニメ映画を鑑賞していた。
「なかなかのクソ作品だったな」
エンディングが終わり、画面を閉じてリクライニングチェアに背を預ける。
 スマートフォンを操作し、掲示板に映画の感想を書き込む。すぐに何件ものレスがつき、その相手は誰もがコテハンで桐夏の知っている子供だった。
 漫月で時を重ねる中で、様々な街の状況が分かるようになってきた。行く先々の子供達と交流し、知己も増えた。そして、それはクソ作品に関する見識を更に深める事へと繋がった。
『これ、タイムパラドックスがないんだよね』
『なんかパズルみたいだよね』
『でもここ矛盾してね?』
『とにかくキャラがいいんだよ!』
 スレッドを閉じると、他の作品の感想スレッドの一覧が現れる。それを適当にクリックして書き込みを見ながら、桐夏は考える。召喚者ガチャの改造について聞いた時のことが脳裏に浮かぶ。愛依は、自分達が召喚されて1年以上が過ぎたと言っていた。
(この世界に来てそんなに経つのかぁ……とはいえ俺のやる事は変わらないがな)
 ネットワークの片隅で、桐夏と子供達はあらゆる媒体のクソ作品に関する情報交換を行っていた。加えて、それに対する批評などを見ているだけで、彼のクソ作品アンテナは漫月仕様にチューニングされている。
「だが、まだ足りん」
 漫月全てのクソ作品を網羅したわけではない。それには時間が全然足りていない。それに、外国のクソ作品はほぼ手つかずだ。
「世界には俺の知らないクソ作品に対する知識が眠っているはずだ! つまり、俺はまだ元の世界には帰らん! それに――」
「あ、桐夏兄ちゃんはまだ帰らないんだね!」
 そこで、隣のブースから少年の声が聞こえた。がたがたと音がしたと思ったら、彼がブースに飛び込んでくる。
「良かった!」
「帰るのには早すぎるからな! ところで、異世界転移といったら何だと思う?」
「もちろん、チートだよ!」
「正解だ!」
 漫月には異世界転移モノが殆ど無い。だが、桐夏との交流の中で確実に知識を蓄えたらしい。
 桐夏は『現代知識チート大全』を持っているのに、未だにチートらしい事をやっていない。
(それに、せっかく異世界転移したんだからそういう事もちょっとやりたいよな。例えば……)

☆★☆★☆★☆彡


 漫月造の愛依の執務室には、彼女と聖の他に凪と慶太、夜桜 切菜が集まっていた。聖はソテーされた保存食、ソーセージを食べていた。いっぱい血を抜かれたから肉が欲しいと主張されて仕方なく出したものだったが――
「合意の上で血を抜いたのにこっちに肉を要求するなんておかしくないか?」
 と慶太がぼやく。切菜と愛依が顔を見合わせ、無言のままに同意していると、食事を続けながら聖が言った。
「で、検査の結果はどうだったわけ?」
「……ああ、そうね。結果だけど……まず、あなたの血に慶太の血を加えたところ、拒絶反応は無かったわ。まあ、あなたの血中にある人としての血液型が慶太と同じだったからね」
 印刷した紙を捲りつつ切菜が話す。聖の反応は簡素なものだった。
「ふーん。それで、満月の日に狼の血は暴走しないて済みそうなの? そこが肝心なんだけど」
「それは、実際に満月の夜を迎えないと判らないでしょうね。でも、こういう結果も出ているわ。『冨樫慶太の血液を加えた結果、狼人間特有の血液細胞が減少した』って」
「「…………」」
 聖と慶太が嫌そうな顔をしたが、内容に関わらずこれは相性の問題だろう。2人とは対照的に、凪は満面の笑みを浮かべている。
「でも、ひじりんが満月の日をクリアできる可能性は高いわけだな!」
「他のやつの血でも検査してるんだろ? どうだったんだ?」
「魔力があまり無い子の血液だと狼人間の血液細胞の減少は見られなかったようね。減少しなくても増えなければ問題無いんだけど、その辺は実験してみないと判らないわ。まあ、魔力が強い人の血液なら誰のものでも大丈夫なんじゃないかしら」
「じゃあ、俺のを使わなくてもいいんだな!」
 慶太の目が嬉しそうに輝く。そこで、執務室の扉がノックされた。入ってきたのは、桐夏だった。

「パンデミックの原因?」
「ああ。まだ明らかになってないだろ?」
 愛依と切菜、慶太は、それぞれに驚いた顔をしていた。不意打ちを受けたかのような、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている。しかし、愛依はすぐに表情を引き締めた。
「パンデミックはもう終わったことだ。広まった毒物は既に空気中から消滅している。ワクチンの開発者達も全員死んでいるし、もう……」
「だが、今の子供達が大人になった時に同じ事が起こらないと誰が言える? その為には原因を解明しておく必要がある」
「……大人になった時に同じ事が……? 確かに、ワクチンを必要としていた難病は無くなっていないし、未来で同じワクチンが開発されないとも限らない。それが使われればまたパンデミックが……」
 切菜が眉を顰める。
「そういうことだ。ワクチンと称した薬が体内で変異して猛毒になったのが世界中に散らばったからっていう話だが、そもそもワクチン自体が原因なのか病気の元になったウィルスなんかが変異に関係してるのかもはっきりしてないはずだ」
「その答えを見つけるってのか? でもそんなの、よっぽど医学や薬学に詳しくないと難しいだろ。実験もやりようがないだろうし。出来るのか?」
 そう言う慶太に、桐夏は「全然わからん!」と断言した。「え」と驚く皆に、『現代知識チート大全』を見せる。
「可能と言い切れない状況を未異世界の力と知識で解決する。これぞ異世界チートの醍醐味ってやつだろ? と、いうことでネットで情報収集したんだが」
「その本は使わないんだ……」
 ぼそりと言った聖が、最後のソーセージの欠片を口にする。
「これを使うにはまだ早い。思えば、俺は病気の名前とかワクチン作った会社の名前すら知らん! で、調べた。病名はタナトウィルス硬化症。体の細胞が徐々に硬化し、やがて心臓まで硬くなり死に至る病だ。一度感染すると硬化した部分を切断しても進行を止めることはできない。ワクチン開発会社は真田製薬。葉刈県に研究所がある。そこで……」
 桐夏は情報を印刷した紙を読み上げ、顔を上げる。彼の言葉の後を継いだのは、凪だった。
「葉刈県の研究所に調べに行こうってことだな!」
「そういうことだ!」
 再び『現代知識チート大全』を出して、桐夏は頷いた。

――――――――――――――――――――――――――――――――

<マスターコメント>

お久しぶりです。大変お待たせしてしまい誠に申し訳ございません。
今後のシナリオですが、残り2回で終了となります。
次のガイドは一週間以内には公開できればと思います。ストーリーとしては最後になると思いますので、皆様と知恵を出し合ってリアクションを作り上げていければと思います。
その次のガイドも今月中には公開予定です。
最後までお付き合いいただけると幸いです。
この度は、ご参加いただきありがとうございました。

(沢樹一海)

――――――――――――――――――――――――――――――――

<定員> なし
<アクション受付> 5月2日23時~
<参加締め切り>5月6日12時
<アクション締め切り> 5月6日23時
<リアクション公開予定日> 6月6日
<リアクション公開日> 7月7日

<参加者>
ミーティア・アルビレオ
佳波 まどか
織主桐夏
霜北 凪
アヅキ・バル

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  1. 2019/07/07(日) 16:32:11|
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