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【コモンシナリオ】幻想の遊園地【戦闘無し】

幻想の遊園地【戦闘なし】


マスター:菊華 伴




 
 まんげつ造りと桐生産婦人科医院の間に、『桜木ファミリーランド』という遊園地があった。まだ大人が生きていたころは沢山の親子連れでにぎわっていたようだが、現在はそこで働いていたアルバイトたち数名で、どうにかアトラクションの手入れをし続けているにとどまる。
 大人が死滅して以降、だれもお客はこない。それでも再び遊びに来てくれるだろう子供たちのために、生き残ったスタッフ(アルバイト)たちが、できる限りの手入れをしていた。
 故に、目玉であるジェットコースターと大観覧車は動かすことが出来ないが、他のアトラクションは稼働していた。

 * * * * *

「お化け屋敷よし、バイキングよし、メリーゴーランドにミニ列車よし。それから動物広場もよし……」
 スタッフの一人……他の者から『チーフ』と呼ばれている……は、あちこちにあるアトラクションの様子を確認していた。すると、ポニーテールを揺らした女性(便宜上、ポニテと呼ぶ)が、裏手から現れた。
「ねぇ、思ったんだけどさ」
「ん?」
「遊園地、整備し続ける意味ってあるの? チーフがネットに宣伝しているのは知っているけど」
 ポニテの言葉に、チーフは肩を竦めた。まるで「何を言っている?」と言わんばかりの行動だ。
「じゃあ君はここから人のいる場所に移り住めばいいじゃないか。僕は、子供たちのためにやってるんだから」
「……気持ちはわかるんだけどさ。今日、点検したらコーヒーカップが動かなくなっていたのよ」
 ポニテがため息交じりにいい、調査報告をチーフに手渡す。チーフはそれを読むと、すぐさまコーヒーカップの方へと赴いた。
 コーヒーカップの周りには、数名のスタッフたちが話し合っていた。コーヒーカップを修理するのか、それともこれ以上何もしないのか。チーフはそんな彼らを押しのけ、徐に制御系統などを調べ、修理を始めた。
 あまりにも自然な態度だったので3人も、あとから追いかけて来たポニテも言葉が出なかった。チーフは黙々と修理を続けると汚れた頬を軍手で拭い、「よし」と小さく頷いた。
「これで動くはずだ。やってみろ」
 チーフの言葉に、三人いたうちの一人で、メガネをかけた若者(以後メガネと表記)に指示を出す。メガネは「は、はい!」と緊張した様子でスイッチを入れる。すると、コーヒーカップは音を立てて動き始めた。
 軽快な音楽に乗ってくるくる回るコーヒーカップ。その光景にスタッフたちが沸き立つ。だが、チーフだけは黙って様子を見ていた。
「これなら、まだいけますかね」
「いや、たぶんそろそろ寿命だろう」
 メガネが期待のこもった眼差しを向けたが、チーフは首を振った。彼は僅かに聞こえたモーター音の異常に表情を曇らせる。
「クリスマスから年末にかけて。これが最後だ。年が明けたら……」
 チーフはそこまで言うと、とても悲しい顔で告げた。

 ――この遊園地を、閉鎖しようと思う。


「桜木ファミリーランドか……」
 朝比奈 愛依がどこか懐かしそうにつぶやいた。彼女もかつては家族で遊びに行っていた。幼いころは、よく連れて行ってもらっていたのを思い出し、少し寂しい気持ちになる。
 だが、今は……頼れる大人がいない中、子供たちのリーダー的存在として、がんばっている。顔を上げた愛依は、普段と同じように冷静な表情を見せた。
「先ほど、SNSに投稿があった。アトラクションの老朽化に伴い、年末の営業を最後に閉鎖するらしい」
 それでもどこか遠い目をした彼女は、どこか寂し気な声で語ると、パソコンを開き、インターネットに接続して、『桜木ファミリーランド』のホームページを開いた。
 アトラクションとしてはメリーゴーランド、お化け屋敷、ゴーカート、コーヒーカップ、バイキング、ミニ列車、ジェットコースター、大観覧車があるもののジェットコースターと大観覧車はもう動かなくなっている。
 その他、ミニ牧場があり、ヒツジとヤギ、ポニー、ウサギ、モルモットがいる。餌も十分あるようで健康状態がよいらしい。
「……桐生 辰巳もこどもたちをつれて遊びに行く予定らしい。私たちも同じ日に幼い子供たちを連れて行こうと思うのだが……」
 愛依の言葉に、召喚者たちは顔を見合わせた。


――――――――――――――――――――――――――――――――

<マスターコメント>

菊華です。
今回はクリスマスと年末年始……という事で、遊園地を舞台にしてみました。ただ、この年末が最後の営業となります(大人の手が入らないため、老朽化が進んでいるみたいです。以後、残ったスタッフたちは動物たちと共に生きられる場所を探すようです)。

 今回、みなさんは12月 25日、子供たちの引率として遊園地に行きますが……目的としては遊園地を楽しもう! というものです。引率云々を抜きにしてどう楽しむかをアクションに書いてください。

 また、この日はプレゼント交換というイベントも行われるようです。プレゼント交換に出す品を必ず書いてください。
例:くまのぬいぐるみ(白い熊のぬいぐるみで赤いリボンがかわいい)

※次のNPCをお誘いすることも可能です
・朝比奈 愛依
・夜桜 切菜
・桐生 辰巳
・ヨアン・ウォン
・緒方 唯我

遊園地にあるもの

稼働しているアトラクション
メリーゴーランド、お化け屋敷、ゴーカート、コーヒーカップ、バイキング、ミニ列車
その他、ミニ牧場(ふれあい広場)があります。

その他、ポップコーンなど軽食や桜木ファミリーランドのお土産などがある売店があります。奥の方には小規模のゲームセンターもあるようです。

またオープニングには書きませんでしたが裏手には手入れがされた花壇がいくつかある公園があります。そこでのんびりしてもいいでしょう。

それではよろしくお願いします。


<リアクション>

序:その思いの区切りへと

 ――12月下旬・某日。

 その日、『桜木ファミリーランド』は久方ぶりに子供たちの歓声でにぎわっていた。引率として来た召喚者たちも羽を伸ばせる、とどこかわくわくしているように見える。

 そんな中、ホーリー・ホワイトは遊園地のスタッフに挨拶していた。
「引率役のホーリーだ、今回は宜しく頼む。人手が足りないなら遠慮なく指示してくれ」
「……ホーリーさんの故郷にはこういった場所があったんですか?」
 彼女に誘われて引率に来た緒方唯我が問いかけるが
「いや、オレの居た世界にはこんな場所無かったな。どんな場所なんだよ?」
「無かったのかよ?!」
 思わず突っ込むスタッフの一人。だが、それを止めた者がいた。名札に『チーフ』と描かれた青年だ。
「遊園地は大きな遊具とかで遊んだりする所です。気になるものがあったら教えますよ」
 チーフはそう言ってホーリーへパンフレットを渡し、アトラクションなどについて教えていく。
「へぇ、こういう大きなので遊んだりする所なのか……。みんな、いい顔するな。悪くない場所だ。オレは初めて来たが、そう思う」
 ここに来るまでに見た子供たちの顔を思い出し、ホーリーも笑顔になる。彼女はそれとなく隣に立つ唯我を見た。
「唯我の故郷にはあったのか?」
「まぁ、ありましたね。子供の頃、たまにですが母に連れて行ってもらった覚えがあります」
 どこか懐かしい表情になる唯我。ホーリーはスタッフや彼の顔を見て何か思いついたらしく、ぱちん、と指を鳴らした。
「お前らはずっとここを守ってきたんだろ? それなら、気持ちにケリをつける時間を取ったほうがいいよ」
 年末に閉園すると聞いた事を伝え、ホーリーが提案する。その言葉に一同が面食らうが、チーフは「なるほど」と一言呟いた。
「ホーリーさんの提案は、面白い。僕は気になることがあるから、他のみんなで交代しながら楽しんできて」
「え?」「チーフ、ホントにいいの?」
 彼の言葉に他のメンバーが驚く。
「この年末で営業を中止にするんですよね? だったらいいアイデアだと思います。 俺たちも手伝いになればとおもってここに来たんです」
「お言葉に甘えてそうさせてもらおうかな」
 唯我の言葉とホーリーの笑顔に、チーフは頭を下げた。

「遊園地かぁ……何か無沙汰だね」
 そう言ったのは、アヅキ・バル。彼女は朝比奈 愛依とミーティア・アルビレオと共にアトラクションを見て回っていた。
「私もそうだよ。元居た世界でも……しばらく、行ってなかったなぁ」
「実を言うと、私もここに来たのは3、4年ぶりだな」
 ミーティアがどこか懐かしそうに言えば愛依もくすり、と笑ってそう言った。今、彼女たちがいるのは動いていないジェットコースター。その近くにはお詫びの張り紙がはってある。アヅキは残念そうにため息を吐いた。
「ああ、これや観覧車は動いてないんだぁ。まぁ、……動いてる途中で停まっても困るし」
 仕方ないよね、と肩を竦めるアヅキ。ミーティアは他のアトラクションで遊ぼう、と2人を誘う。
 アヅキとミーティアはいつも頑張っている愛依にリフレッシュしてもらいたい、と考えて自由行動の際一緒に遊ぼうと考えていた。申し合わせたわけではないが、それだけ彼女が慕われているという事だろう。
「そういえばだけど。元の世界で、家族で遊園地に行った時に、調子に乗ってコースターに連続で乗ったお兄ちゃんが途中で酔って吐いてたなぁ」
「それはちょっと辛かったかもね」
 アヅキがジェットコースターを振り返り呟くと、ミーティアがうんうん、と相槌を打つ。と、愛依がくすくすと笑った。
「私も似た経験があるよ。何度もジェットコースターに乗ろうとして母に止められたっけ……」
「愛依ちゃん、ジェットコースターは平気なんだ」
「うん。苦手なアトラクションは無いよ」
 ミーティアが感心し、愛依は懐かしそうにあたりを見渡しながら答える。脳裏にふと両親と幼い頃の自分が見えたのだろうか、少し表情は寂しそうだ。
 しんみりさせてしまっただろうか、とアヅキは別の思い出を口にする。
「あー、あと、私と妹がコーヒーカップに乗ってたら、機械の故障でいきなり倍速で回り始めてびっくりしたっけ。私はびっくりしてハンドルにしがみ付いてたけど、妹はきゃきゃ笑って喜んでた~。なんか思い出したら笑ちゃう!」
「あ、あっちにコーヒーカップがあるんだ。せっかくだから行こうよ」
 ミーティアが奥にあったコーヒーカップを見つけ、2人を誘う。
「懐かしい~♪ せっかくだし、乗ろうよ!」
 アヅキの言葉に「しかし……」と愛依が戸惑う。彼女は引率として連れて来た子供たちの事が気になっているようだった。
「子供たちを見れる人はぁ……他にもいるんだし。愛依ちゃんも楽しまないと……もったいないでしょぉ?」
 ミーティアの言う通りで、他にも何人もの比較的年長者がそろっている。彼らに任せておけば大丈夫だろうし、なによりスタッフも気遣ってくれているようだ。
「ほらほらぁ、一緒に行こうよ、ね?」
「……そう、だね。少しだけ羽を伸ばそうかな」
「そうこなくっちゃ!」
 ミーティアの言葉に、愛依がこくん、と頷くとアヅキが嬉しそうに声を上げる。3人娘はだれが回すかなどおしゃべりしながらコーヒーカップへと向かうのだった。

 その頃、観覧車の前では……。
(朝比奈は、リーダーとして独り気を張って頑張ってる。だがあいつだって年相応に楽しみたい時もあるだろうし、思い出があるであろう遊園地でその思い出に浸りたい事もあるだろう)
 刀神 大和が、愛依と仲間たちが楽しむ姿を見ながら頷いた。そして、目の前の観覧車をもう一度見上げる。
(故に、その機会をアイツに贈りたいんだ)
 暖かな眼差しに宿る、願い。それを伝えようと彼は遊園地のスタッフを探しに歩き出す。と、丁度いいところに一人の青年が姿を現した。大和と同じぐらいと思わしき青年は「ようこそ。ごゆっくりお楽しみください」とほほ笑んでいる。どこかフレンドリーな雰囲気をもたらす笑みは営業スマイルのそれではない。
「ここの従業員か?」
「あぁ……と、言いたいところだが、実のところ元々はアルバイトなんだ」
 と、苦笑した青年は『チーフ』と呼んでくれ、と帽子を取って一礼した。大人がいない今、彼が事実上のオーナーなのだろう。大和はそう判断し……、その場に土下座しようとした。
「なっ?! ちょ、ちょっとお客様?!」
「頼む! あの観覧車を動かすことはできないか?」
 大和は、脳裏に浮かんだ愛依の横顔を思い、チーフへと懇願する。どうしても、彼女に楽しんでほしいと。
「大変申し訳ございません。こちらは修理不可能なため現在は……」
「必要な事なら何でもやる! だから頼む、観覧車を動かしてくれっ。どうしても……どうしても、観覧車に乗せてやりたい奴がいるんだ!」
 お願いします、と頭を下げる大和。だが、その時。先ほどまでのフレンドリーな雰囲気が掻き消えていた。どこか凍てついた、それでいて悲しみの混じった眼差しだ。
「僕だってこの観覧車を動かそうと何度も試みているんだ! それでも……【彼】は拒絶している! 点検に点検を繰り返していてもだ!」
 その言葉に大和の目が点になる。が、チーフはどこか苦々しい顔で観覧車を見上げる。
「僕は、ここでアルバイトをしていくうちに機械の調子を整える魔法に目覚めた。それでここのアトラクションを修復していたが……パンデミック直後から、【彼】だけが、僕の施術を拒むんだ。どんなに手入れをしても!」
「なら……俺にできることはないのか?」
 どうしても動かしたい、と眼差しで縋る大和。だが、チーフは首を振る。
「……君の気持ちも、……いえ、お客様の気持ちもわかるのです。けれどもこの大観覧車は……もう……」
 かぶりを振り、深呼吸を繰り替えすチーフの姿に、大和は何も言えなくなる。彼は見てしまったのだ。チーフの頬に伝うものを。
「すまなかった」
「こちらこそ、お客様のご希望にこたえられず、大変申し訳ありませんでした」
 大和の謝罪に、チーフもまた申し訳なさそうに頭を下げる。取り乱したのが恥ずかしかったのだろう。彼の頬はどことなく赤かった。
「ほかにもアトラクションはございます。どうか、お楽しみください。誠心誠意をもって対応させていただきます」
 深々と頭を下げるチーフに、大和はもう一度だけ頭を下げる。そして、チーフが去るのを見送った。
(朝比奈を、乗せてあげたかったな)
 無念と、チーフの苦痛の余韻が大和の胸を刺す。どこか感傷的な眼差しのまま、彼は観覧車を見上げていた。
「ん? どうしたんだ?」
 不意に声がした。振り返ると唯我町で出会ったヨアン・ウォンがそこにいた。事情を彼に話すと、ヨアンは「そうか」とそれだけ相槌を打つ。
「どうしても、乗せてやりたかったが……」
「仕方ねぇよ、動かねぇんだし」
 ヨアンはどっちの気持ちもわかるけどさ、と大和の肩を叩く。そして、別の方法で愛依を楽しませて来い、と言って背中を押したのだった。

破:思いを語り合って

「あー、たのしかったー!」
「ミーティアちゃんったら回しすぎ~。ちょっと目が回っちゃったよ~」
「少し休もうか……」
ミーティア 、アヅキ、愛依の3人は笑いながら近くのベンチに座る。と、3本のペットボトルが差し出された。
「あ、ありがとう」
「例には及ばん。朝比奈、なかなか楽しそうだな」
 受け取った愛依に、大和がいつもより穏やかな声で僅かにほほ笑む。愛依はすこしだけきょとん、としたが
「……そうだな」
 この時ばかりは、自然体で満面の笑みを零したのだった。
 コーヒーカップでの出来事を、愛依は大和に話して聞かせた。大和は彼女が心から楽しんでいる姿に、内心ほっ、とする。
(よかった)
 そう思う一方で、やっぱり観覧車に乗せてあげられなかった事を悔しく思う。彼はちらり、とそれを見、事情を説明した。
「朝比奈、観覧車について思いではあるか?」
「あ、それ私も聞きたいな」
 大和の問いかけに、ミーティアが興味深々とした瞳で追従する。愛依は、古ぼけた観覧車を見上げ、ちょっとだけ目を細めた。
「遊園地にくると、いつも最後に観覧車に乗っていた。家族や友達と行っては街や空を眺めていた」
 愛依も、本当は乗りたかった。だが、もうそれは叶わないだろう。愛依は古ぼけた観覧車を、しばらくの間大和と共に見つめていた。
「まだ時間はあるよ。次、どこに行く?」
 アヅキの言葉に、愛依は頷くと大和に手を伸ばす。
「いっしょに行こうよ」
「……ああ」
 その言葉に大和が頷いて手を取り、ミーティアがふふ、と笑う。4人は、年相応に笑いながら次はどこに行くのか相談を始めるのだった。

 さて、その頃。
「遊園地に来たの何年ぶりだってぐらい久々だなぁ。何年か早ければ俺も楽しんだが、あいにくそういう年でもないからなぁ……」
 織主桐夏があたりを見渡しながらそう言った。彼は【ファントム・シャーク】を召喚しメリーゴーランドに合わせてぐるぐると回して楽しませていた。
 子供たちはこれに大喜びである。楽しそうに声を上げ、わいわいと楽しんでいた。
 その為メリーゴーランド周辺は子供たちでいっぱいで、並ばせるために動いていたホーリーもてんてこ舞いだ。
「はいはい、押すなよー。みんな順番にな~」
「うふふ、楽しそうですね。サメってこんなにかわいいものだったのね」
 そう言っているのは桐生 辰巳。彼女は子供たちが楽しむ様子に心から喜んでいるようだった。
「あとは……、ジェットコースターのレールにそってサメを走らせたいんだけどできるかな」
「……え?」
 桐夏の呟きに、辰巳が困惑する。だが、桐夏はそんな様子もお構いなしにスタッフへと声をかけて確認を取った。だが、スタッフの手伝いをしていたホーリーと唯我をはじめ、他のスタッフもちょっと戸惑う。
 だが、最終的にはチーフの「面白そうだ。安全面に気を付けてやってくれ」の一言で許可が下りる。
「むちゃくちゃだ……」
 思わず呟くホーリーの肩を唯我がぽん、と叩く。
 それはさておき、桐夏は幻影のサメをジェットコースターのレールにそって走らせ、これがまた子供たちのハートを掴んだ。
「……マジで?!」
 休憩中だったスタッフの一人、メガネが思わず声を上げれば桐夏はふっ、と笑って
「俺としては最終的にきらびやかにライトアップされたサメを出して終わらせる気満々だったんだが……」
 と言っていた。
「そんなサメいるんですか?」
「馬鹿野郎サメに不可能はねえぞ」
 唯我の突っ込みに桐夏は自信ありげに胸を張る。どういう理屈かは不明だが、まぁ、彼の中での理論なのだろう。
「動いていたころの様子を再現してみたのですね」
 辰巳がぽん、と手を打って顔を綻ばせれば、桐夏の眼差しが柔らかくなる。その楽しそうで優しい眼差しが、どこかものさみしさを感じさせるのであった。

 ホーリーと唯我が休憩に入ったのは、それからちょっと後の事。2人は何気なく遊園地を見て回る。
「なぁ」
 不意にホーリーが唯我に声をかける。唯我は不思議そうに彼女を見た。
「姉貴たちとはさ。どんなのに乗ってたんだ?」
「うーん、バイキングとか、観覧車とか、ですかね。小さいときは怖かったけど、あとから慣れてきて、景色を眺めるのが好きになりました」
 唯我がそういいながら、この遊園地の観覧車を見る。だが、スタッフから聞いていた通り、動いていない。大和が動かせないかと交渉していた事を知らない2人は、残念そうにそれを見上げる。
「あー、止まってんなぁ……。あ、あっちのコーヒーカップかいいんじゃね?」
 唯我がちょっとしょんぼりしたように見えたホーリーは近くにあったコーヒーカップに気付き、彼の手を引く。
「ちょ、ちょっと!」
「よし、今日は姉貴の代わりと思って遊んでいいぞ。なぁ、この丸いの回せばいいんだな!?」
 カップの1つに乗り込んだホーリーが、真ん中の丸い部分に触れ「そうだろ!そうだろ!」とにっ、と笑う。
「そうだけど……回しすぎ注意ですよ」
 唯我の言葉に、ホーリーは「まかしとけ」と不敵に笑うのだった。この後2人がどんな風になったのかは……想像に任せるとしよう。

急:思いを渡しあって

 こうして楽しい時間は過ぎていき……プレゼント交換のイベントが始まった。持ち寄ったプレゼントを縁が用意した籠に入れ、まぜこぜにし、サンタに扮したスタッフが配っていくのである。
(しまった!)
 プレゼントを用意していなかった大和は、大慌てで購買に走る。そこで彼は縁のマスコット『うさくらちゃん』の縫いぐるみをラッピングしてもらうのだった。
「みなさーん、プレゼントは籠に入れましたかー?」
 サンタに扮したチーフが、会場に集まった面々へと声をかける。子供たちの歓声に、みんなが和む中、華やかなメロディーが流れはじめた。それが鳴っている間、サンタがプレゼントを運んでくるのである。
「ん?」
 ミーティアの元に来たのは、布製のサメのスリッパだ。口の所から足を入れるという面白いもので、おー、と歓声を上げる。
「ふわふわもこもこだねぇ~。かわいい~」
「へへ~。実は俺からのでしたー」
「「うん、気づいてた」」
 桐夏がそういえば大和と愛依が突っ込みを入れる。そんな大和にはお菓子の詰め合わせが来ており、愛依にはオオツチグモのぬいぐるみが届いている。
「そのお菓子の詰め合わせは、俺ですよ」
 唯我の言葉に、大和が「忝い」と頭を下げる。一方、愛依の所に来たオオツチグモ縫いぐるみはというと……?
「もしかして、アヅキちゃん?」
 ミーティアの問いにアヅキが「大正解」と笑う。
「どうどう? このつぶらな目がかわいいでしょ? お手製なんだよ」
「すごいな……! うん、かわいいっ」
 アヅキの言う通り、クモのぬいぐるみは目がチャームポイント。愛依もこの目がかわいい、と気に入ったようだ。
「あなたのは?」
「これだよっ!」
 愛依に促されたアヅキが見せたのは、馬の刺繍が入ったハンカチだった。金糸で縫われた馬がとてもクールな逸品だ。
「それは、オレだ」
 挙手したのはホーリー。意外な一面にみんなが感心すれば、彼女の頬がうっすらと紅くなる。
「お袋から教わった技能がこんな所で役に立つとはなぁ。ま、普通に使ってもよし、三角に折り曲げてマスクにしてもよし。かっこいいだろ?」
「うんっ!」
 ちょっと照れ交じりなホーリーの言葉に、アヅキが嬉しそうに頷いた。
「俺に来たのは、桃色のウサギのぬいぐるみだな。この遊園地のマスコットらしいな」
 大和のプレゼントは、どうやらホーリーに来たらしい。ホーリーは「なんとなく愛嬌あるな」とまじまじとそれを見つめる。
「俺のは、綺麗な石のペンダントですね」
 唯我が見せたのは、綺麗に磨かれた石のペンダント。それを送ったのは、「はーい」とやんわりボイスのミーティアだった。
「この石はぁ……、この前、拾ったんだぁ♪ 何かはぁ……ちょっと、わからないけど……綺麗だったからぁ、ペンダントに、してみましたぁ〜♪ どうかな~?」
 ミーティアの問いに、唯我はちょっと顔をほころばせる。
「きれいですね、これ。大事にします」
 唯我のお礼に、ミーティアは「うんっ」と柔らかく頷いた。その傍らで、桐夏が首をかしげていた。
「これは……手袋?」
「私から、だ」
 桐夏に、愛依が手を上げる。彼女は一歩踏み出すと、黒い手袋を桐夏の前に出す。
「寒くなると、いけないからな。フリーサイズだからこれでも入ると思う」
「お! サンキューな? 大切にするよ」
 桐夏はさっそく手に装着し、「似合うか?」とほほ笑む。そうこうしているうちにプレゼント交換は終わりを告げるのだった。

 夕暮れの中、スタッフたちが後片付けを始める。
 ホーリーと唯我は最後まで手伝おう、と一緒に作業をし、愛依たちは子供たちを整列させ始める。まんげつ造りへ戻る時間だ。
 そんな中、どことなくいい顔になったスタッフにほほ笑む。
(なんせ俺には彼らに新しく帰る場所を提供できる立場も資格もねえ。つまり彼らとはこのままだとここでお別れなわけだ)
 いつになく真面目な顔で頷く桐夏。彼は立ち止まり、ふっ、とほほ笑む。
(だったら、彼らに悔いが残らないよう最高のエンターテイィィ~メントを提供したいじゃあねえか)
 少しでも役に立っただろうか? そんな事を呟きながら、桐夏もまた仲間と合流するのであった。

 ――こうして、冬の一日は過ぎていく。


(終)

――――――――――――――――――――――――――――――――

<あとがきマスターコメント>

菊華です。大変お待たせして申し訳ありませんでした。
遊園地シナリオ、お届けに上がりました。

今回はアクションがどれもあったかくて、こちらも楽しませていただきました。また、とある方のアクションにより後日談シナリオが発生いたします。予定は少し先ですが、お楽しみに。


それではこの辺りで。
また縁がありましたら宜しくお願いします。

――――――――――――――――――――――――――――――――

<定員> なし
<参加締め切り> 12月27日23時
<アクション締め切り> 12月31日23時
<リアクション公開予定日> 1月21日
<リアクション公開日> 1月22日

<参加者>
織主桐夏
ミーティア・アルビレオ
刀神 大和
ホーリー・ホワイト
アヅキ・バル
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  1. 2019/01/22(火) 00:38:00|
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