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【コモンシナリオ】崩壊世界の揺り籠【戦闘あり】

崩壊世界の揺り籠


マスター:菊華 伴




 
 パンデミックで、大人たちが死滅した。
 けれども、子どもたちは生きていた。そして、赤ちゃんも、生きていた。

 ――あれから、9か月。

「そうか、もう、そんなになるんだよね。早いはずだね」
 黒髪を伸ばした乙女が、腕に赤ちゃんを抱いてそうつぶやいた。生後9か月だろう赤ちゃんは、うとうとしながら指をちゅぱちゅぱと吸っている。
「院長、問題はここからですよ」
 15、6歳ぐらいの少年が、1歳半ぐらいの女の子をおんぶした姿で問いかける。彼は青い目を細め、ため息をついた。
「最近なんかこう、野犬が多くて。物資を探しに行くのも命がけなんだ。先日もトシキが足をかまれて……」
 その言葉に、乙女は表情を曇らせた。
「今週に入って5人目ね。動物に詳しい人からきいたけどやっかいな病気とかは持ってないそうよ。それでもあの数は……」
 彼女たちの言う通りでこの辺りでは野犬が問題になっていた。今もあちこちから故にこの病院以外に暮らす子供たちに戸締りできる場所で寝泊まりするように、と告げていた。

 この保護施設は、乙女の両親が残した産婦人科の病院だった。彼女は、そこの新生児室に残された赤ちゃんだけではなく近所の乳幼児を保護し、仲間を集い、周辺の探索をして物資を得ていた。それだけではなく、畑を耕し、野菜の自給にもつとめていた。
 高校生、大学生も比較的精神的に強く、心根の優しいものが多かった。彼らは皆親を亡くした幼子たちのために、一生懸命がんばっていた。しかし、彼らにも限界はある。それを、乙女は感じていたのだ。

「助っ人を探しに行きましょう。幸い、私には魔法があるし、野犬ぐらいだったらどうにかなるわ。手助けしてくれそうな人、探してくるから少し待っていてね」
「姉貴! それじゃあ、この揺り籠はどうするんだ?」
 乙女の言葉に、少年が問いかける。彼女は「大丈夫」というとぽん、と目の前の少年の肩をたたいた。
「面倒見の良い貴方に任せるわ。頼むね、ヨアン」
 そういわれ、ヨアンは苦笑して頷いた。


* * * * *

 ――まんげつ造

「赤ちゃんの保護施設?」
 朝比奈 愛依はその報告に息をのんだ。だが、目の前にいる乙女は、「はい」としっかりとした声で答える。傷だらけになりながらここへ来た、という乙女は、愛依の目を見て答えた。
 長い黒髪を一本のみつあみにまとめた、緑色のワンピースの乙女で、名を桐生 辰已(きりゅう たつみ)といった。
「パンデミックで大人が死滅した後、私は父が経営していた病院を拠点に可能な限り赤ちゃんを保護しています。ですが、最近になって周辺で野犬が発生し、物資調達の際危険で……。大変申し訳ないのですが……」
 辰已は高校生以上の人に野犬退治の手伝いをしてほしい、と相談を持ち掛けたのだ。それを聞き、愛依は少し考える。
「報酬も、用意します。幸い、私たちの拠点は物資を得られる場所が多いので可能な限り対応できるかと思います」
「……そうだな。少し声をかけてみようと思う」
 愛依はそう言って召喚した者たちにこの話をしよう、と考えた。

 数分後。訪れた異世界人たちの姿に、辰已は目を見開くことになる。

――――――――――――――――――――――――――――――――

<マスターコメント>

はじめまして。或いはお久しぶりでしょうか。
菊華 伴です。今回はまんげつ造から離れた場所にある拠点周辺での野犬退治及び探索、現地の子供たちとの交流がメインです。

難易度:★★
    以下の注意点さえ守れば大丈夫です
 ・子供たちを怖がらせない
 ・怪しまれる行動をしない

概要
例の壊された橋から内陸に5キロ地点に位置する『唯我町』が舞台です。
『桐生産婦人科医院』を中心に小学校やショッピングモールなどがあり、子供たちはなるだけ固まって暮らすようにしています。

>地理について
・桐生産婦人科医院周辺
今回行く唯我町の中ほどにある病院で、桐生 辰已を中心に集まった子供たちの拠点です。裏手には小学校、近所には幼稚園とショッピングモールなどがあります。少し離れた場所には銭湯や商店街もあり、そのあたりで物資を調達していました。
 しかし枯渇を恐れた辰已たちは少し離れた場所にある施設などからも物資を集めるようにしていますが、最近は拠点周辺に野良犬が出没し、物資調達に出た子供たちが襲われるという被害が出ています。

選択肢
どれか1つを選択してください。
2つ以上選択すると描写が減ってしまう可能性があります。

・野犬退治を行う
 拠点周辺にたむろする野犬を退治するなり追い払うなりしてください。最近、物資探索に出向いた子供や遊んでいた子供が襲われるという事件が多発しています。けが人も出ており、住人たちは困っています。最低限でも子供たちが襲われないようにするか、拠点周辺から追い払ってください。
 戦闘となりますので、負傷判定がでる可能性があります(ただし、工夫すると戦闘を回避することも可能です)。

・周囲の探索
 拠点周辺を探索し、状況確認や物資調達の手伝いを行います。場合によっては野犬と遭遇し戦闘が発生する可能性があります(ただし、工夫すると戦闘を回避することも可能です)。

・子供たちと交流する
 拠点の子供たちと交流します。ここには辰已達に保護された赤ちゃんたちがいてにぎやかです。最低年齢は生後9か月です。新生児室及び病室がそのまま子供たちの生活の場となっています。
 また近所には幼稚園があり、幼い子供たちが遊んでいます(こちらは5、6歳ぐらいまでの子供たちが大半で、警護及びお世話係として6歳以上の子供たちがいます)。

登場NPC
桐生 辰已
桐生産婦人科医院を拠点としている子供たちのリーダー格。今回は野犬問題を解決するべく噂を頼りにまんげつ造へ訪れた。選択肢で「子供たちと交流」を選ぶと色々話すことができる。


ヨアン・ウォン
実質ナンバー2となる炎魔法の使い手。火葬・葬儀担当。新興宗教施設を塒とし、施設に残された黒いスーツと袈裟を着ている。選択肢「野犬退治」を選ぶとともに行動する。


それでは、宜しくお願いします。



<リアクション>

序:町と犬と異邦人と

 ――唯我町。

 かつてはきれいに整っていただろう街角は、少し荒れていた。
 街角に見えるは、犬、犬、犬……。街を我が物顔で動き回る野犬の姿に、異世界人たちは皆「なるほど」と思った。
「どいつもこいつも生き残る事に必死だよな……まぁ、当然か」
 そういって一歩踏み出したのはもの静かな印象を抱かせる青年、刀神 大和だった。彼はあたりを見渡しながら口を開く。
「俺は子供の相手より武器を振るうほうが得意でな。野犬退治にでるぞ」
「あ、私もいくわ」
 そう言ったのはポジティブそうな乙女。アヅキ・バルはこの野良犬たちをみて、ふと考察したことがあった。
「この野犬って飼い主がパンデミックでいなくなって、野良犬になってしまったペットの犬達なんじゃないの? もう一度飼ってやれば番犬としての需要はありそうだけど」
「たしかに、その可能性は否定できない。だが、けが人が既に出ているんだ」
 どうなのかなぁ、と問うような眼差しを向けるアヅキだが、状況を説明に来たヨアン・ウォンの言葉に小さくため息をつく。
「まぁ、子供が襲われるのは放ってもおけないよね……」
「野犬を放置するのは危険だ。縄張りと認識される前に追い出さなければ」
 頷くのは、侍を彷彿とさせる出で立ちの上野木 幸蔵。彼は出身世界でも野犬退治をしたことがあるらしく、何か役に立てるのではないか、と考えていた。
「それじゃあ、そろそろ動こうかな? 未来のクソマイスター候補たちを守るためにも、ワンコたちにはちょーっとご退場願おう」
 織主桐夏が戦いの匂いを感じ取りつつもそう言えば、4人はヨアンと共に拠点周辺を回ることになった。
 辰巳は、そんな4人に、携帯端末を渡す。
「連絡を取り合えた方がいいでしょう。病院用の携帯端末ですが、役に立つかと思います。それぞれ番号を割り振っているので、ボタンを押せばその端末につながるはずです」
 一同はそれに感心しつつ、それぞれ礼を述べて受け取った。

 一方、小学校の校庭。ここに案内された佳波 まどかは「わぁっ!」と目をキラキラさせていた。彼女は安心して農作業できるように、と柵を作りに来たのだ。
「どの野菜もつやつやしてる……」
 まどかはきらきらした眼差しで野菜を見ていたが、ぶるぶると首を振って当初の目的を思い出した。
「いけないいけない。まずは、材料が必要だね!」
 まどかは材料を揃えるのにちょうどいい場所がないか、現地の子供たちに聞いてみよう、と動き出しした。

 彼らがそれぞれ動いている頃。結晶を生やした少女、ミーティア・アルビレオは拠点の近くにある幼稚園を訪れていた。
「赤ちゃんたちのお世話だねぇ。よ~し、ここはお姉さんに任せなさぁ~い!」
 胸を張るミーティア。同時にわずかにたゆん、と揺れる胸。事故で両腕を失った彼女だが、あればきっと腰に置いていたことだろう。
「……大人……ですよね?」
 と思わず困惑したように聞いてしまった桐生 辰巳に、ミーティアは「これでも大人なんだよぉ?」と大人びた眼差しで苦笑した。
「親になった経験はぁ、ないけどぉ~、小さい子の世話なら、何回かやったことあるからねぇ。だからぁ、安心して任せてよぉ〜」
「はい、よろしくおねがいします」
 ぺこり、と頭を下げる辰巳に、ミーティアは穏やかな表情で頷いた。

 野犬たちは、空気が運んでくる匂いに、少し違和感を覚えた。嗅ぎなれた子供たちの匂いとは別の匂いだ。彼らはわずかに警戒する。だが、そのなかでも飛び切り大きい、オオカミのような白い犬は、「わふっ」と一声。それだけで野犬たちはうなることなく下がる。
 オオカミのような犬は、白い毛を風に震わせながら、虚空に漂った異世界人の匂いを探った。


破:犬と召喚者

「罠が管理できるやつ……?」
「そうだ。今後の安全の事を考えると、罠も仕掛けておいた方がいいだろう」
 ヨアンと周囲を回りながら、刀神 大和が提案する。彼は魔兵装・刀をいつでも抜けるように周囲を警戒ながらも、子供たちだけでもできる対策を考えていた。
 ヨアンはしばらく黙っていたが、ややあって心当たりがあったのだろう。了解した、というような目を向けた。
「中学生・高校生ならいけるだろ。ケガしたやつで手先が器用なトシキってやつがいる。そいつとその弟に頼んだらイケるだろな」
 ヨアンは表情があまり変わらないが、声が幾分か柔らかくなった気がする。それにわずかに目を細めた大和であったが……、産婦人科医院から離れると、ぽつぽつと野犬が姿を現した。そのうちの数匹は幼さが残る犬だった。
(少し、やりづらいか) 
 ため息をつきなあら、大和は言葉をつなげる。
「俺自身も定期的に見に来るつもりだけど、流石に頻繁には来られないからその間の管理を頼みたいんだ」
「わかった。何人か聞いてみよう」
 ヨアンはそう言って一礼する。大和は罠の材料がないか探すことにした。
 その途中、ヨアンはふと、アヅキ・バルに言われた言葉を思い出していた。

 ――ウォン君も無理しなくていいよ。私たちでなんとかするから。

(……こんな事言われたの、辰巳以来初めてだな)
 少し複雑そうな表情を浮かべたヨアンだったが……大和から見れば仄かに何かを懐かしんでいるように思えたのだった。

 そのアヅキは周囲を警戒しながらも、ちらり、と考察していた。
(聞いた話だと野犬の被害が出始めたのは最近なのよね。犬は群れる習性あるし、強い犬が群れのボスになっていて、付近で根城を作って襲撃を繰り返しているとか……? ボスを捕まえてしまえば、他の犬たちは市内から逃げ出すかもしれない)
 野犬のボスってどんなのだろう、と想像しながら歩いているうちに、彼女はショッピングセンターらしき大きな建物を見つけた。
「うわぁ、これまた大きなお店だねぇ」
「あ、ちょうどいいところに!」
 アヅキがあたりを見渡していると、聞き覚えのある女の子の声。よく見ればホームセンターと書かれた大きな看板のちかくで、ネットなどを物色していた佳波 まどかであった。
「あ、まどかも来てたの?」
「うん。小学校に畑があってね、動物が入らないよう畑に柵を作っちゃおうって思って。あと、生ごみの臭いが漏れるのを防ぐためのポリバケツ」
 そういって、彼女は揃えようとしている道具を見せアヅキは思わず感嘆の域を漏らした。
「きっと子供たちも喜ぶよ! 荷物を運ぶときは手伝うから……ちょっと待ってて」
「アヅキちゃんは、野犬退治に来たの?」
 まどかに問われ、頷くアヅキ。だが、まどかは首をひねる。今まで彼女はここで野犬に遭遇していないのだ。おかげで手にした魔兵装・スコップを振り回す事態にはなっていない。それをみたアヅキは何かを言って
「あ、そういえば上野木さんが自分の身長より長い武器を持つと、野犬より大きく見せられるって言ってたっけ」
「本当?」
 まどかはそれを聞き魔兵装・スコップと近くにあった竹竿を見比べたりするのだった。

 ともかく、野犬との戦闘を考慮しつつショッピングセンターに併設されたホームセンターで必要なものを見繕う。
 だが、この時2人は思いもよらなかった。予想以上の存在が彼女たちと対面しようとは……。

 拠点から短めの物干し竿を借りた幸蔵はふぅ、とため息をついた。
「たしか、やっかいな病気を持っていない、というのは安心だな」
 確かに、彼の認識である恐水症も厄介な病である。幸蔵は物干し竿を手に安堵しつつもきっちり警戒をしておく。
(縄張りと認識される前に、追い出さねば)
 と、意識を改めで持ったためだろう。野犬にあっても物干し竿のおかげか野犬は逃げていく。
「獲物の鉈では、間合いが短く野犬狩りには向いていないからな」
 と、野犬を追い払いながらつぶやいていると、目の端に、白くて大きなふわふわが移った。だが、その方向へ顔をを向けるも、すでにそれはいなくなっていた。だが、妙に冷たい風が吹いて、彼は思わず身をすくめた。
(何だったんだ?)
 困惑したたずむ幸蔵。だが、その疑問に応えるものは誰一人としていなかった。

 一方、織主桐夏は順調なようだった。
「ククク、今日はゆきひら(魔兵装・刀)とドルヒシュテヒュン(魔兵装・銃)が獲物に飢えておる……おっと、転生主人公御用達武器を手に入れてちょっとテンションが上がってるようだ」
 魔兵装を手にそんなことを言いながら警戒していると、野犬が吠えていた。それも何頭もである。もしかしたら、たまり場のような場所だったのかもしれない。
「なるだけ戦闘は避けたいんだよなぁ」
 と、威嚇のポーズをとる。同時に浮かびあがるのは、ホホジロザメ……の幻影だ。それをみたとたん、犬たちは面食らって逃げていく。
「これぞ『虎の威を借る狐』ならぬ『サメの威を借る俺』だな」
 なんて言いながらも他の人の様子が気になってしまう。あらかた野犬退治はおわったかな? と眉を上げると、彼は新たな場所へと向かっていった。

(こんなものか)
 一通りわなを仕掛けた大和は、ヨアンと一息ついていた。そうしながらもおもったのは、野犬たちの様子だった。野犬たちは大和の剣呑な空気におののき、近寄らなくなってしまったようだ。
 しびれを切らし襲い掛かった一匹は、大和の滑らかな太刀さばきにより足と首を失った。
「この刀ちょっと重いんだよな、少し斬撃の位置が下がる」
 慣れないと……と、彼が呟くのを、ヨアンは聞きながら眉をひそめている。だが、彼が切ったことで己やらみんなが助かっているのだ。
「すげぇ、な……」
 ヨアンが思わずそう呟くも、大和はあまり気にせず周囲を一睨み。野犬たちは放たれた殺気におののき、情けない声を上げて逃げていく。だが、我慢できず襲い掛かってくる物もおり、手早く大和が処理するのだった。
「これ、どーすんのさ」
「その気になれば食べられるだろうけど……どうだ?」
 野犬の死骸を見つめながら問うヨアンに、大和は提案する。しばらくの間だまっていたヨアンであったが、しばらくして小さな声で「やめとく」と返答した。何かそうぞうしたらしい。
「犬って不味いらしいな。食料についてはまぁ、ショッピングセンターのでかい冷凍庫に肉と魚があるし、缶詰やら干し肉とか、コメもまだあるんだぜ。商店街にもいろいろあるから、遠征にさえいければどうにかなる」
「そうか。ならば、焼こう」
 大和の言葉に、ヨアンが笑う。
「任せておけ。俺の得意分野だからね」

*:*:*

「こっちはあらかたおわった、と思う。そっちは?」
「首尾は上々かと」
 桐夏の問いかけに、幸蔵は静かに答えた。そうしながらも襲い掛かってきた犬たちを驚かせて追い出したり、物干し竿でおしやったりとなかなかハードだった。
 もうすこし回ってみよう、と2人で周辺をまわりながら、2人は情報を確認する。
「では、驚かせるのも効果的だった、と」
「あぁ。サメの幻影で逃げたからな。こいつを使わずに済んだ」
 幸蔵が物干し竿で犬を威嚇しおいやりながら言えば、桐夏はサメの幻影でおいやる。キャンキャンギャンギャン悲鳴を上げる犬たちは、半ばパニックだ。
 こんな具合で犬は見かけなくなり、一安心していると……、ちょっと拠点の方向が騒がしいことに気が付いた。
 2人は顔を見合わせ走り出した。



急:布石
「みんなぁ、こんにちは〜! 今日はぁ、お姉さんと一緒に遊ぼうねぇ〜」
「はぁい!」
 ミーティア・アルビレオが子供たちに呼びかけると、かわいくて元気な声が返ってくる。それににっこりしながら、ミーティアは子供たちの目を見た。こうすることでおびえさせずに済むことを知っているのだ。もう少し身長があったら身を屈めていただろうが、背が高くない彼女は、そうせずとも子供たちと目を合わせることが可能だ。
「ねえねえ、お耳みせてー!」
「おかあさんみたーい!」
「ねえ、絵本読んでー!」
 わらわらと集まってくる子供たちのパワーに押され気味になったものの、ミーティアは笑顔で応じ、耳の結晶を見せたり、絵本を読んだり、おままごとに混ざったりと大忙しだ。
 背は低いが、子供たちは彼女のもつ何かで大人を感じ、大いになついていた。

 *:*:*

「ありがとうございます。ミーティアさんの温かい雰囲気に、子供たちもとっつきやすかったのでしょうね」
「そういわれるのはうれしいけど……、私、もしかしてお姉さんて思われてないのかなぁ? なんだかなめられてるような気がするのよねぇ……」
 とくに男の子に、なんておもったのは一部のませたこどもたちがミーティアの胸にさわりたがったり、いたずらをしているのを彼女が咎めても悪びれなかったりしたからだろうか。辰巳は「すいません」と深々と頭を下げ……、近くで落書きをしていた子供たちに「おやめなさい!」とびしっ、と注意していた。
「私も、子供のしつけについてとかは修行中の身。本を読んで学んでいるんです」
 自信がなくとも、なさねばならない。己は年長の身なのだから、と辰巳が真面目な顔で言った。だが、その横顔に何か悲しいものを感じ取ったミーティアは、そっと……重力操作で袖を動かし、辰巳の頭をなでる仕草をした。
「がんばっているんだね。ここの子供たちのために……」
 紫色の瞳を細め、優しい眼差しを向けるミーティア。その横顔は、だれがどう見ても、母性に満ちたものだった。
「私、ミーティアさんみたいに、なれますか?」
「え?」
「お母さんみたいに、なれますか……?」
 辰巳は、うっすらと三白目に涙を浮かべ、ミーティアの目を見つめていた。ミーティアは「うん!」と優しい笑顔で頷いた。

 *:*:*

「遅いな……」
 そろそろ他のメンバーも戻るだろう、と思いながら、ボスを探し歩いていた刀神 大和。彼は出発地点に戻ったが、犬の死骸を焼いていたヨアン・ウォン以外だれもいなかった。それを不審に思っていると、ヨアンが表情を険しくし、遠くを見ていた。その方向は、アヅキ・バルと佳波 まどかが合流したショッピングセンターである。彼は携帯端末をならしていたが、出なかったのだろう。表情を険しくし、ショッピングセンターを見つめたまま口を開いた。
「嫌な予感がするぜ。俺は向こうへ行く。火の始末ぐらいあっという間だ。お前はどうする?」
「……行こう」
 ヨアンの問いに大和も頷き、火を工事現場に残された砂で消すと走り出した。その途中で織主桐夏と上野木 幸蔵も合流する。
「何がどうなってやがる!」
「わからない。ただ、あっちの方向から犬の鳴き声が……」
 ヨアンの問いに、桐夏が答えるも、それよりも早く現状が把握できた。ペットコーナーと記された看板の下から現れたのは、土佐犬の二回りほど大きいだろう白い犬。いや、冷気をまとったそのきれいな白い犬は……物語やゲームなどに登場する、『フェンリル』と呼ばれるオオカミに似ていた。
 それと対峙していたのは、クモの胴体のアヅキ。アラクニアンスタイルとなり魔兵装・爪と銃を装備して立ち向かっている。まどかも魔兵装・スコップで対応しようと、震える足でがんばっていた。

 *:*:*

 ――30分前。

 話しながらホームセンター内を捜索していたアヅキとまどか。2人は何人かに手伝ってもらおう、と助っ人として野犬退治に来ていたメンバーと連絡を取ろうとしていた。
「ちょっと落ち着ける場所がいいかな?」
「あれ? あっちにペットコーナーってある。何だろう?」
 アヅキが辰巳から支給された携帯端末を鳴らそうとした時、まどかが何かを見つけた。不思議に思っていってみると、そこはペットショップの跡地だった。
 ペットの餌は散乱し、かつて魚がいただろう水槽はひっくりかえっていた。明らかになにかの生き物がやった可能性が大きい痕跡だらけである。しかも爪痕もある。
 裏手に回ると、檻はすべて空っぽだった。数匹の猫たちが居ついているのだろう、気持ちよさそうに昼寝している。
「かわいいね」
 そういって見つめるまどか。だが、この時アヅキは異変に気付いていた。
(妙に、静かすぎる)
 直感的に、嫌なものが近づいている。それを猫も感じ取ったのだろう。くつろいでいた猫たちもまた、慌ただしく逃げていく。まどかが戸惑っているとアヅキは素早くフォームチェンジした。
「そこっ!」「えっ? ええ?!」
 アヅキが銃をうならせる。と、冷気が弾丸をとらえ、地面に落とす。白い空気が晴れた先、白い毛並みの大きな犬がそこにいた。その周りには、十数匹の犬。どうやら、こいつがボスらしい。
「……捕まえて見せる」
「え? ほ、本気?!」
 アヅキが、襲い掛かってきた白くて大きい犬に立ち向かう。まどかもまたどうにか魔兵装・スコップを手に追いかけた。

 *:*:*

「こいつが……ボス?!」
 ボスを仕留めたほうがいいだろう、と考えていた大和だが、これは予想外の存在だった。刀を手に身構え、アヅキたちの援護に入る。ほかの犬は桐夏と幸蔵、ヨアンで対処しようとホホジロザメの幻影やら、炎やら物干し竿やらで立ち向かう。
 吹き荒れるブリザードをまどかとアヅキはどうにか避ける。大和もまた落ち着いて下がることで避けることができた。だが、そのほかの野犬の一部が凍り付いた。下手したら桐夏たちも同じ運命をたどるかもしれない。
 警戒し身構えているアヅキたちだったが、ここでボスが一度ゆっくりと瞬きする。と、同時にその場にいる者達全員の脳裏に声が響いた。
『傲慢ナ人間ノ子タチヨ。我々ノ行動ヲ妨ゲナイト約束スルナラバココハ引コウ。ナレド邪魔スルトイウノナラバ喰ラウ。如何ニ』
その言葉に、アヅキが何か言おうとしたとき、大和が黙って刃を突き付けた。ここで斬る、という意思表示である。ボスはわずかに息を吸ったが、アヅキが何も言わず、けれど言葉を探すように唇がわずかに動くのを見て『なるほど』とつぶやいた。
『我ヲ生ケ捕リ、カ。面白イ事ヲ考エル。今日ハソノ娘ノ青クモ面白イ考エニ免ジテ、子供達ニ手ヲ出サヌヨウ言ッテオコウ。タダシ、シバシノ間、ダ』
 それだけ言うと、ボスはびゅう、と強くブリザードを吐き視界を遮る。それらが止んだ後、のこったのは白く染まった空間と、氷漬けになった数匹の犬だけだった。
「しばらくの間、か」
 アヅキはため息交じりに呟き、人間の姿に戻る。一同はボス(仮称:フェンリル)に様々な思いを抱きながら、一旦道具をもって撤退することになった。

 この直後、街角から野犬が減った。また、野犬たちも人間をさけるようになった。ことの顛末をきいたミーティアと辰巳は互いに顔を見合わせる。
「……予想外の存在、ですね。しかし、話し合うことが可能ならば最低限のすみわけができるかもしれません」
 辰巳が胸に手を置き、わずかに瞳を伏せながら、祈るようにいう。だが、ヨアンは苦々しい表情を浮かべる。
「それができるかは、わからねぇ。あのボス犬? 狼? は人間に恨みをもっている可能性がでかい。なんせ俺たちを『傲慢な人間の子』って言っていたぐらいだからな」
 ここで仕留められなかった上、発信器をつける暇もなかった。大和たちは唇を引き締める。だが、猶予は得た。結果は出すことができたのだ。あとはこの猶予内にどんな手を打つか、である。
 重い空気の中、まどかはちょっとだけ苦笑した。
「とりあえず、今できることをやろうよ! 私、畑の方に行ってくる!」
 そういうと、まどかは道具をもってその場を後にするのだった。

 *:*:*

「まどかさん、これはこんなかんじ?」
「うんうん! いいかんじだねー」
 小学校に移動したまどかは、畑を管理している中学生ぐらいの子供たちとともに防獣ネットを設置していた。魔兵装・ハンマーで杭を打ち込み、ネット状の説明書を読み、みんなでわいわいと作業にいそしむ。
(確かに物資の調達も必要だけど、自給自足も大事だよね! あ、あっちの野菜にはなにか防虫対策が必要かな~?)
 作業をしながらも、野菜の手入れについても考えるまどか。その手際の良さに、子供たちもメモをとったり、感心したりしている。
「そういえば、鶏とかもいるの?」
「いますよ。今のところ犬に襲われたことはないけど……」
 まどかの問いに、一人の男の子が答える。彼に案内を頼むと、その飼育小屋と庭は丁寧に手入れされていた。元々動物が入り込めないように工夫された場所だったようで、今のところ犬が入り込めそうな場所は出入口以外になかった。
(みんな、生き生きしてるなぁ)
 野菜の世話や生き物の世話をする子供たちの姿にほっ、とするまどかだった。

 こうして、唯我町での活動は終了する。
 一同は報酬として食料や医療品などをもらい、街を後にする。だが、また縁がつながれば再びここを訪れることになるだろう。
(辰巳さん、がんばれ)
 ふと、ミーティアは振り返る。子供たちの母親になろうといろいろ苦心する辰巳の事を思い出して。彼女の言葉に、ミーティアは小さくうなずく。
(きっと、なれるよ)

(終)

――――――――――――――――――――――――――――――――

<あとがきマスターコメント>

菊華です。まずは、少々リアクションが遅くなり申し訳ありません。
今回は、唯我町を舞台とした物語のプロローグ的なものをお出ししました。

 が、ここで1つ。
 すでに、第一話で出すはずだった情報が、でちゃいました。
 アクションの時点で見抜いているお二方のおかげで第一話でちょろ~っと出るはずだったボス犬が、でちゃいましたんで第一話すっとばして第二話を繰り上がりでだしてもいいかなー、とか考えておりますがここはしばらくお待ちください。

そして、ひそかに設定していた事についてどんびしゃなアクションも来たので内心わくてかしていることも追記しておきます。ともかく、参加してくださり誠にありがとうございます。

暫くの間は唯我町での物語を中心にする予定です。
縁がありましたら宜しくお願いします。

菊華 伴

ついしん
今回は全体的な報酬のほか、全員に報酬として
・ショッピングセンターの商品数点
(服一揃えやら、生活用品やら。食品除く)
ももらっているので何かで活用してくださるとうれしいことです。

――――――――――――――――――――――――――――――――


<定員> なし
<参加締め切り> 8月22日23時
<アクション締め切り> 8月26日23時
<リアクション公開予定日> 9月6日
<リアクション公開日> 9月5日

<参加者>
刀神 大和
ミーティア・アルビレオ
アヅキ・バル
織主桐夏
佳波まどか
上野木 幸蔵
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  1. 2018/08/20(月) 12:00:00|
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