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【ショートシナリオ】切菜とみんなで武器探し♪

切菜とみんなで武器探し♪


マスター:革酎




 
 朝比奈 愛依は、机に地図を広げて考えごとをしていた。彼女が人差し指でとんとんと叩いているのは、地図上にある元自警団の基地だった。
 数日前、ここに皆で武器を取りに行こう、という話をした。まだ使える武器が残っている可能性は充分にある。
「何で、ここを見落としてたんだろう……」
「それはね、見落としてたんじゃなくて、愛依が武器を使いたくないと思っていたからよ」
 ソファに座った夜桜 切菜が指摘する。
「武器なしでとは言わないけど、ここにある分だけでいいとは思ってたでしょ」
「……そうかもしれない……」
「でも、ここから10km以上あるし、徒歩じゃきついわね。彼に頼む?」
「うん、頼む」
 愛依は素直に頷き、切菜はスマホを耳に当てた。

「バス持って来たよー」
 しばらくして、冨樫 慶太と緒方 唯我がやってきた。
「武器探しに行くんだって?」
「ああ。ここに行きたいんだが」
「ここなら行ったことあるよ。俺が回収したのは遺体だけだから、武器もあるんじゃないかな」
「どんな所だったんですか?」
 唯我が訊くと、あっけらかんと慶太は答えた。
「あの時はー、完全に廃墟って感じだったな。ほら、あの基地、住宅街の真ん中にあるだろ? だからモンスターも入り込んでないんじゃないかな」
「モンスターいないのか……それなら少し安心だな」
 愛依がほっとしたように笑い、びしっと背を伸ばした唯我が言う。
「僕も行きます! 何か武器が欲しいと思ってたんです」
「私も行くわ。どんなものが残っているか興味あるしね」
 切菜も言い、4人は召喚者達に連絡して廃墟となった元自警団基地に行くことになった。

 だが、事態は彼らの想像を既に大きく超えていた。

 切菜ら四人が向かおうとしていた自警団基地は、正確には第14中央方面師団自警駐屯地と呼ばれていた。
 ここに、切菜らに先んじてふたりの召喚者が足を運んでいた。
 ひとりは四本の腕を持つ怪人ジーガー。そしてもうひとりは地球から召喚された現役のアメリカ陸軍兵だ。彼は歩兵連隊所属の陸戦兵ヴァーノン・レドックス軍曹である。
 レドックス軍曹は、手にしたアサルトライフル──Ⅿ16A2を肩付けに構えつつ、駐屯地正門から内部に向けてじりじりと歩を進めていた。
「何だこれは……聞いていたのと、話が違うぞ」
 レドックス軍曹は頬を伝う嫌な汗に多少の苛立ちを覚えつつ、傍らのジーガーに対して低く唸った。
 ジーガーは、右第一腕にスライサーネット、左第一腕にショートレンジビームキャノンを携えているが、臨戦態勢には入っていない。彼の意識は全て聴覚に集中されていた。
 レドックス軍曹に歩調を合わせて前進を続けていたジーガーだが、不意に足を止め、僅かに身構えた。
「何か居るぞ」
「あぁ、見りゃ分かる」
 ジーガーの警鐘に、レドックス軍曹は短く応じた。
 この有様を見れば何も居ないなどとは、到底思えなかった。
 彼らは今、確かに廃墟と化した駐屯地に居る筈だった。だがそこに広がっていたのは、駐屯地を含む周辺数キロ四方が全て深い樹々に覆われ、完全に密林状態と化した街中のジャングルだった。
 一体、この短期間のうちに何があったのか。
 考えたところで分かる筈もなかったが、しかしジーガーとレドックス軍曹の両名は、ある明確な意思を感じ取っていた。
 即ち、絶対的な敵意。或いは、殺意と呼んでも良い。
 ここは一旦、戻った方が良いかも知れない──そんなことを漠然と考え始めたレドックス軍曹の視界の中で、何かが動いた。
 目の錯覚かと思ったが、違った。
 それは、確かに居た。
 木だ。
 それは紛れもなく木だ。
 しかし、巨大な猫科の猛獣のような形態だった。いや、正確に表現するならば二足歩行も可能な猛獣だ。体表は固い木の皮に覆われているが、その動きは極めて滑らかだった。
 手足の先から伸びる異様に長い鉤状の指先は、人間の皮膚程度ならば豆腐のように切り裂き、筋肉や内臓組織に至っては肉団子を簡単に引きちぎるような破壊力を発揮するだろう。
「……トレントか」
 ジーガーは低く唸った。
 この世界に来て諸々の文献やデータを読み漁っていた彼は、人類以外の生物や怪異、魔物についての知識も短期間で相当な量を吸収していたのである。
 そのジーガーが、強い警戒を見せているのだから、恐ろしく手強い相手だということが理解出来よう。
 レドックス軍曹は、ごくりと喉を鳴らした。
 周囲を覆うあらゆる木という木から、ジーガーのいうトレントなる怪物が、次々と湧き出るように出現し始めたのだ。
 敵意の正体は、彼らだった。
 ふたりの正面に立った一体のトレントが、頭部を水平に割った。上下に割れる巨大な顎が、襲撃開始の合図を告げた。


――――――――――――――――――――――――――――――――

<マスターコメント>

 こちらは、【コモンシナリオ】「一日の始まりは自宅から」の派生シナリオとなります。
 皆で武器を探しに行きましょうというシナリオです。
 但しガイド本文にあります通り、基地は緑一色の地獄と化しております。下手したらNPCのひとりやふたりは平気で死にます。
 しかし武器もやっぱり欲しいので、色々と探索してみて下さい。
 何かあるかも知れませんし、何も無いかも知れません。
 それでは、皆様のアクションをお待ちしております。

■敵
トレント:
 度重なる宅地開発やリゾート開発などで自分達の版図を次々と奪っていった人類に強烈な恨みを持つ植物達がパンデミックを機に、人類に対して反撃を仕掛けるべく魔物と化した姿。
 極めて強力な念式防御網を形成する為、魔法の類はほとんど通じない。

■非運営NPC
ジーガー:
 275歳、第76778恒星系出身のエイリアン。
 レーザーブレードやビームキャノン、スライサーネットなどの諸々の武装を所持。筋力や骨格も人間とは比較にならず、拳の一撃でコンクリート塊を粉砕することも出来る。

ヴァーノン・レドックス軍曹:
 37歳、黒人男性。
 現役のアメリカ陸軍兵。士官学校は出ておらず、兵卒から叩き上げで昇進してきた。独身だが、別れた妻との間にはふたりの娘が居る。
 シリアの内戦に米軍が正式介入する為に空挺旅団の輸送機で移動中、召喚された。その為、ある程度の装備一式は揃っている。


<リアクション>

1 変わり果てた風景

 角を曲がって突然現れた深緑の壁にアヅキ・バルは面食らい、慌ててブレーキを踏んだ。
 マイクロバスの車内では、あちこちから悲鳴があがっていた。
「ヘイ、アヅキッ! 一体どうしたんだッ!?」
 前の座席のシート背面に額をしたたかに打ち付けたホーリー・ホワイトが、戸惑いと驚きが入り混じった抗議の声をあげた。
 が、その表情はすぐに、緊張を伴った色で強張る。アヅキが急ブレーキを踏んだ理由が即座に理解出来た。
「おいちょっと待て……何だこれは」
 ホーリーほどではないが、同じくこめかみの辺りを赤く腫らして痛みに耐えている刀神 大和が、半ば呆れたように低く唸った。
 フロントガラスの向こうに見えているのは、本来そこにある筈の光景ではなかった。
 誰もが極々普通の住宅街がこの先も続いていると思っていたが、実際に出現したのは鬱蒼たるジャングルへの入り口だった。
 それも、角を曲がった先の道路周辺だけではない。左右数キロにも亘ってその緑の壁が延々と続いているのである。
 ここに至るまでは結構な住宅密集地を通ってきた為に誰も気づかなかったのだが、いざこうして目的の場所──第14中央方面師団自警駐屯地近くにまでやってきて、漸くその異様な光景が視界に飛び込んできたという訳である。
 車内の中央通路から運転席までずいっと踏み出してきた公 玲蘭は、助手席に座って呆然と両眼を見開いている冨樫 慶太に問いかけた。
「前回来られた時も、こんな状況だったのですか?」
「いや……全く違う。そりゃあ多少の街路樹ぐらいはあったが、こんな密林は無かった」
 慶太の応えを受けて、玲蘭は矢張りそうですかと静かに頷き返した。
 であれば、何か異常事態が発生していると考えて良い。
 このまま突入すべきか、或いは引き返すべきか。
 判断が必要な場面であった。
 突入に積極的だったのは、†赫の堕天使†だった。
「進むべきよ。恩讐の彼岸より出づる邪樹から邪剣を取り返し、聖女の涙を与えることで聖邪剣を復活させなければ、我らに生は無いと思いなさい」
「一体何ですか、その理屈は……」
 リンヴォイ・レンフィールドは†赫の堕天使†の意味不明な主張に幾分呆れた様子を見せたが、しかしリンヴォイ自身も基地への突入案については、実は賛成派だった。もし必要ならば前衛と斥候役を買って出ても良い、とさえ思っている。
「ジーガーさん達、大丈夫かなぁ?」
 今回の武器捜索を最初に提案した格好となっていたミーティア・アルビレオはふと、思い出したように小さく呟いた。
 二日前にジーガーとヴァーノン・レドックス軍曹のふたりがこちらの方面に物資調達任務として、出向いてきている筈だった。
 恐らく、あのふたりもこの異常な密林発生には気づいているだろう。
 もしかしたら、既に足を踏み入れていっているかも知れない。
「いきなり全員で突っ込んでいくってのは、幾ら何でも無謀に過ぎるわね……まずは何人かで偵察、ついでにジーガーさんとレドックス軍曹も探してみるってのはどう?」
 アヅキの提案に、誰も異論は無い。
 問題は人選であったが、ひとまず希望者が密林内に出向くということで落ち着いた。

2 人選会議

 朝比奈 愛依は乗降口付近のシートに腰を下ろしたまま、黙然と考え込んでいた。
 こんな筈ではなかった。
 慶太の報告そのままの状況であれば、今回の武器捜索は然程の危険を冒すこともなく、すんなりと終わる予定だったのだ。
 それが今では、誰が危地に踏み込んでゆくかという議論の場と化してしまっている。
 傍らでは緒方 唯我が、今回の遠征は失敗だったのではないかと不安げな呟きを洩らしている。
 いや、まだ失敗に終わったかどうかを論じる段階ではない。しかし唯我に限らず、目の前の密林を前にしてこのまま武器捜索を続行するかどうかを躊躇するのは、極自然な反応だったといって良い。
 しかし愛依には、責任という枷が手足を縛っている。このまま最も安全と思われるバス車内で留守番を決め込む訳にはいかないという思いが強く沸き起こりつつあった。
 だが、そんな愛依の機先を制するかのように、夜桜 切菜が目が覚めるような鮮やかさで最初に鋭く、ひと言発した。
「愛依はここ。絶対動いちゃ駄目」
 完全に見透かされていた。
 切菜は一瞬だけ、妙に悪戯っぽい笑みを口の端に乗せたが、すぐにその表情は真剣な面持ちに変じた。
「愛依の身に何かあったら、置いてきた皆は誰が指揮するの? ここは私達に任せて頂戴。良いわね?」
「そう、するしかないのか」
 すっかり気圧された様子で、愛依は浮かしかけた腰を再びシートに預けた。
 唯我も車内に残るのだという。
 一方で慶太と切菜は、召喚者達と共に密林へと押し入る旨を告げた。
「俺も残る。護衛がひとりも居ないんじゃ話にならん」
 意外にも、大和が愛依と唯我のお守り役を自らに任ずるとして手を挙げた。
 大和としてはこの密林内で危険を冒すのではなく、さっさとジーガーとレドックス軍曹を回収して離脱してしまうのが最善だとの意見を口にした。
 だがどうせ、他の面々にそんなつもりはさらさら無いのだろうと半ば諦めた様子で、
「だから留守番だ。皆が引き返してきた時、肝心のバスが無くなってたんじゃあ話にならんだろう」
 と、ここで慶太が意外にも翻心した。自分もやっぱりバスに残る、といい出したのである。
 これには愛依も切菜も、驚いた様子を隠せなかった。
「どうも、嫌な予感がしてならないんだよな」
 慶太がいう嫌な予感とは、密林に踏み込むことへの危険性ではなく、ここで皆の帰りを待つバスに対する漠然とした不安のようなものであるらしい。
 虫の知らせ、とでもいえば良いだろうか。大和は小さく頷いた。
「そいつは俺も願ったりだ。防衛戦力はひとりでも多い方が良い」
 召喚者に同行する者が切菜ひとりに絞られるのも、召喚者側の立場からすればありがたい。守るべき対象は、出来るだけ少ないに越したことはないのだ。
「大体決まったみたいね」
 ここでアヅキが決を採った。
 バスに残るのは大和、愛依、唯我、慶太の四人。それ以外のメンバーが密林に突入するということになる。
「先行して僕が偵察と斥候に出る。もうひとり、サポートが欲しいな」
「じゃあ、私がご一緒しますよぉ」
 こうしてリンヴォイとミーティアが先行して密林内に突入し、少し遅れて残りの捜索班が続く、という段取りとなった。

3 沈黙の防御網

 それから、十数分後。
 切菜と召喚者達は、この密林が絶望への入り口であることを理解した。
「魔術が……発動しないッ!?」
 玲蘭の苦しげな叫びを受けて、ならばとアヅキがアラクニアンスタイルを発動して襲い来る謎の化け物にカウンターの乱蹴りをお見舞いした。
 今、召喚者達は全身を木の皮膚に覆われた怪物の群れと遭遇戦に突入している。
 その正体を、切菜は早い段階で見抜いていた。
「こいつら……トレントよッ!」
「トレントッ!? 何だい、そいつぁッ!?」
 轟然と火を噴くパンドラを腰だめに構え直しながら、ホーリーが怒鳴るような勢いで訊き返した。
 頭上は折り重なるようにして陽気を遮る鬱蒼とした枝葉の天井に覆われ、地面付近は昼間だというのに相当薄暗い。
 ややもすれば視認距離が半分以上も失われそうになる中で、召喚者達は次々と突撃してくるトレントの群れに対処しなければならなかった。
 トレントの名を聞いて、†赫の堕天使†は何故かドヤ顔を見せてライターと殺虫剤を構える。
 ところがどういう訳かトレントの群れは†赫の堕天使†を半ば無視し、アヅキとホーリーに対して攻撃を集中させていた。
「気を付けてッ! トレントは脅威度の高い相手を優先的に狙ってくるからッ!」
「それは、どういうことですかッ!? 私の魔術が発動しないのと何か関係がッ!?」
 玲蘭の悲鳴に近しい疑問の声に、切菜は渋い表情を浮かべた。
 曰く、トレントは強力な念式防御網を形成することが出来るのだという。
 単体の防御網範囲はせいぜい半径5メートル程度だが、集団となって襲い掛かってくると、個体同士がそれぞれの防御網の距離をカバーし合う為、周囲を取り囲まれてしまうと精神波や念の類を用いる能力はほとんど効果を現さなくなるのだという。
 丁度現在、召喚者達の周囲に数体のトレントが包囲網を形成してこの辺一帯を完全な魔術無効化地帯を作り上げているように。
 トレントの念式防御網は精神波や念を起点とするあらゆる能力を阻害する。
 それは、先行してリンヴォイと共に斥候を買って出たミーティアの能力も例外ではないらしい。
「拙いわね……早く、あのふたりと合流しないとッ!」
 更にもう一体、トレントをアラクニアンスタイルでのタックルで地面にねじ伏せたアヅキが、幾分の焦燥をにじませて叫んだ。
 一方、ホーリーもパンドラの高威力で手近のトレントを胴部から木っ端微塵に破壊し、結果的に自身のトレントに対する脅威度を更に高める結果となってしまっている。
 このままではいずれ、体力が尽きて力負けしてしまうだろう。
 そんなことを考えた時、ホーリーはふと、気配がひとつ無くなっていることに気づいた。
 †赫の堕天使†が、いつの間にか姿を消していたのである。
「おい、あいつどこ行ったんだッ!?」
「あれ……今の今まで、一緒にいたのに……」
 玲蘭も虚を突かれた形で狼狽した。
 全くといって良いほどに戦闘力が著しく劣る†赫の堕天使†が、たったひとりでどこかに消えた──誰の胸中にも嫌な予感ばかりが募った。
 †赫の堕天使†は、忽然と姿を消していた。

4 盲点

 実をいうと†赫の堕天使†は、ただ単に戦場をこっそり抜け出しただけだった。
 しかし、ただ離脱したのではない。
 この時†赫の堕天使†は極力息を殺し、呼吸音と、そこから生じる空気の流れをトレントに察知されないようにと細心の注意を払って、先を行くリンヴォイとミーティアのもとへと向かったのだ。
 正直なところ、あんな大乱戦の場に自分が居たところで何の役にも立たないことは、如何に厨二的発想で占められている頭脳であろうとも、簡単に理解出来た。
 であれば、下手に居座って他の者の足手まといになるよりも、早々に離脱して武器捜索を続けた方が余程皆の為になるというのが†赫の堕天使†の判断だった。
 ──というのは建前で、ぶっちゃけ、あの場に居るのが怖かっただけなのだが。
(ふっふふふ……我が隠遁の衣の前ではトレントとやらの視界も曇って見えよう)
 普通にこそこそ隠れるだけなのだが、それでも大袈裟な技名をつけることで何となくそれっぽい気分になれるのだから、物は考えようとはよくいったものである。
 しかし実際、†赫の堕天使†の周囲にはトレントが現れる気配も無い。
 これ幸いとばかりに密林の奥へと足を進めた†赫の堕天使†だが、程無くして再び戦闘の現場へと辿り着いてしまった。
 予定通り、目指していたリンヴォイとミーティアのふたりと合流する格好になった訳だが、嬉しい誤算としてジーガーとレドックス軍曹のふたりもこの現場に居合わせていた。
「おお†赫の堕天使†か。よくひとりで、ここまで来れたな」
 手近のトレントを力任せに薙ぎ倒してから、ジーガーの悪魔のような容貌が†赫の堕天使†の頭上で不敵な笑みを浮かべた。
 レドックス軍曹は†赫の堕天使†とは初対面だったが、場合が場合だけに、呑気に挨拶を交わす余裕も無かった。
「ヴァーノン・レドックスだッ! 帰ったら、後で名刺交換でもしようかッ!」
 軍用のハンマーナイフを振るって正面のトレントの頭部を弾き飛ばしつつ、レドックス軍曹は冗談とも本気ともつかぬ台詞を口にした。
 一方、リンヴォイは接近戦でレドックス軍曹と肩を並べていたが、ミーティアはどういう訳か、他の三人に守れる形でただ力無く蹲っているだけだった。
「あら、どうしたの? 戦闘に参加しないの?」
「それがぁ……全然ナイフがいうことを聞いてくれなくてぇ……」
 どうやらミーティアの能力も玲蘭と同様、トレントの念式防御網内では全く効果を発揮することが出来ないらしい。
 知的生命体の放つあらゆる脳波や念、精神波といった類は全てその力を失ってしまう──これが、トレントの念式防御網の威力らしい。
 要はその範囲内に入らなければどうということはないのだが、この密林内では神出鬼没に近しいトレントから距離を取ること自体が、ほとんど不可能といって良かった。
「ならば私と共に聖邪剣を復活させる宿命を帯びるが良いわ」
 要は一緒に武器を探しに行こうというだけの話なのだが、†赫の堕天使†が説明すると、いちいち面倒臭い表現になってしまう。
 だがミーティアはそれよりも、全く別の事実に心を奪われていた。
 大した戦闘力も無い†赫の堕天使†が、どうやってここまで密林内を単身分け入ってくることが出来たのだろうか。
 †赫の堕天使†が、トレントの索敵器官は他生物の呼吸にあるらしい旨を説明すると、ミーティアは成程、と思わず何度も頷いてしまった。
 植物ならば空気の流れを断て。
 それは†赫の堕天使†の厨二的発想としては、珍しく有用で効果的な内容だったといって良い。

5 手がかり

 密林への入り口近くに止めたバスでは、予想外の事態が生じていた。
「あれは……一体何だ?」
 愛依が密林と街中の風景の境目辺りを指差しながら、険しい表情で呟いた。
 大和も、嫌な予感を胸中に抱えながら運転席からバックミラー越しに、愛依が発見した謎の影の群れをじっと凝視した。
「こいつは、何かやばい」
 大和は躊躇することなくエンジンに火を入れた。
 事前に切菜と打ち合わせていた通り、バス側で何か問題が生ずればすぐに距離を取るという対策を実行に移す為だ。
 愛依や唯我などは仲間を置いて自分達だけ逃げる形になることに対して多少の抵抗を覚えているようだが、このバスまでもが被害を受けてしまっては元も子もない。
 大和とて仲間を見捨てるつもりは無かったが、兎に角一旦はこの密林から距離を置かざるを得なかった。
「拙いな。あんな奴らがこの密林を生み出していたって訳か」
 後部座席の車窓を開けて、慶太が迎撃の態勢を見せる。
 万が一追いつかれたら炎の魔術で牽制する腹積もりのようだが、幸い、バスはすぐに加速し、敵と思しき集団は見る見るうちに視界の遥か向こう側へと消えていった。
「ありゃあ、トレントだな……追いつかれてたら、俺の魔術も効果があったかどうか」
 慶太の分析に、愛依と唯我は思わず目を剥いた。
 知識としてはその存在を知っていたが、こうして実際に遭遇するのは、これが初めてだったらしい。
 停車してから、そんなに拙い相手なのかと大和が問うと、慶太は魔術師の天敵だとかぶりを振る。
「念式防御網ってのが特に厄介だ。奴らの間合いに持ち込まれたら、手も足も出なくなる」
 慶太の説明を受けて、大和の胸中には不安の色が急に色濃く広がってきた。
 突入していった面子には、玲蘭やミーティアといった、精神波や念を主戦力とする者も居る。あの緑の地獄の中では相当な苦戦が強いられることが容易に想像出来た。
(準備を整えてから、改めて捜索し直した方が良いんじゃないのか……?)
 そんな思いが徐々に強くなり始めていたが、既に仲間達は密林内へ足を踏み入れている。
 今はただ、無事に帰ってくるのを待つしか無かった。


     * * *


 密林に覆われているとはいっても、もともとは自警団の駐屯地だった場所だ。そこかしこに、施設の名残を見ることが出来る。
 トレントの群れを撃退する中で、アヅキは巨大な樹木に半ば押し潰されて屋内が剥き出しになっていた建屋内で建築資材を漁ってみた。
 すると、数本の鉄パイプが見つかった。臨時の武器としては十分に使えそうだった。
 それから程無くして先行するリンヴォイとミーティア、†赫の堕天使†、更には事前に駐屯地を目指していたジーガーとレドックス軍曹とも合流し、漸く戦力としてひとつのまとまりとなった。
「こういうのを、見つけたよ」
 リンヴォイが戦闘と捜索を続ける中で発見した、辛うじて充電の残っている薄汚れたタブレットを切菜に差し出した。
 そこには、魔兵装庫と記された建屋の見取り図と位置が表示されていた。
「これは……探してみる価値はあるわね」
 魔兵装とは、簡単にいえば空間中の魔素を原動力とする魔力武器のことだ。
 使用者の念や精神波ではなく、武器そのものが魔力を発揮する仕組みとなっている為、トレント相手のみならず、あらゆる魔獣や異形の怪物に対しても有効な装備となるだろう。
「今日はもう、ここだけ探せば良さそうですねぇ」
 ミーティアのひと言で、方針は決まった。
 トレントの数は更に増えつつある今、以後の捜索は最低限の時間にとどめるべきだとの思いを、全員が共通して抱いていた。

6 得たもの、失ったもの

 魔兵装庫までの最短距離を取って、一行は巨大な樹木の牢獄と化したかつての大型倉庫に辿り着いた。
 道中は†赫の堕天使†の案を採用し、口元や鼻の周りを布や衣服で覆って呼吸を悟られないよう細心の注意を払い続けてきた。
 その甲斐あって、密林突入直後はあれほどに激しかったトレントの襲撃が、僅か二回だけで済んだ。
 しかし各人が出す二酸化炭素はどうしても蓄積されて呼吸器官周辺に蓄積される為、いずれはトレントの群れに気づかれてしまうだろう。
 そうなる前に、如何に素早く魔兵装をひとつでも多く持ち出せるかが、全ての鍵といえよう。
「細かい選別は後回しだ。今はとにかく、持てるだけ持っていこう」
 ホーリーの言葉に、全員が頷く。
 しかしミーティアだけは、この場では戦力に成り得ない。仕方なく、見張り役として倉庫入り口付近を警戒する任に就いた。
「私に任せて」
 アヅキがアラクニアンスタイルを再び発動させ、蜘蛛型の大きな下半身に魔兵装を収めたケースを次々にくくりつけてゆく。
 ジーガーやレドックス軍曹もその腕力を活かして、相当な数の魔兵装収納ケースを抱えていた。
 †赫の堕天使†は、自分で勝手に想像した聖邪剣(実際はどのような武器なのかは不明)なるものを発見して早々に背負っていた。両手にもボストンバッグタイプの収納ケースを下げている。
 リンヴォイとホーリーはバックパックタイプの収納ケースを持ち出すにとどめた。
 脱出の際に全員の両手がふさがってしまっていては、敵の追撃を振り払うことも出来なくなるからだ。
「皆さん、もう大体宜しいですか?」
 玲蘭も†赫の堕天使†と同じく、背中と両手に目一杯の収納ケースを抱えて、全員に訊いた。
 これ以上は、持ち出せないだろう。
「では、行きましょう。今度は正門までの最短距離を取ります」
 戦力に成り得ないならば、せめて先導役ぐらいは務めねばならぬと考えたのか、玲蘭はこの短時間のうちに駐屯地内の構図をあらかた脳内に叩き込んでいた。
 その玲蘭の左右に、リンヴォイとホーリーが並び、すぐ後ろに切菜がつく。
 後は一気呵成に脱出を目指すのみであった。


     * * *


「あッ……帰ってきましたッ!」
 唯我の喜色を帯びた叫びに、大和、慶太、愛依の三人は一斉に密林方向に視線を巡らせた。
 確かに、突入していた仲間達に加えてジーガーとレドックス軍曹が荒れた路面を駆けてくる姿が見える。
 だが──彼らの後方には無数のトレントが津波のような勢いで押し寄せてくる様も視界に飛び込んできた。
「ドアを開けろッ! 全員乗り込んだら、すぐに出発するぞッ!」
 慶太と愛依に指示を出しつつ、大和は運転席に滑り込むと同時にエンジンをかけた。
 ハンドルを握り、アクセルを軽く踏みながらサイドブレーキをかける。ロケットスタートを切る為の準備は出来た。
 最初に切菜が車内に飛び込んできた。
 次いで†赫の堕天使†、ホーリー、リンヴォイ、ミーティアと続く。
 ここで愛依が、小さな悲鳴を洩らした。
 全長十数メートルにも及ぶ大型のトレントが、手前に建つアパートの屋根の向こう側から、その巨体からは想像も出来ないほどの俊敏さを発揮して姿を現したのである。
 怪物と呼ぶに相応しい体躯が、一気に距離を詰めてきた。
「ミーティア、その位置なら念式防御網の範囲外だッ! 俺の分を頼むッ!」
 不意にジーガーが、手にしていた全ての魔兵装収納ケースを放り出した。
 ミーティアはいわれるがままに、最大限の力を振り絞ってジーガーが持ち出してきた魔兵装を必死にバスへと引きずり込む。
 一方、玲蘭は距離が取れたことで漸く自身の能力が使えると判断し、追いすがる他のトレントに対して地雷撃を仕掛けた。
 これが上手く牽制としての効果を発揮し、トレント群の出足が相当に鈍った。
「ジーガーさんッ! 早くバスへッ!」
 リンヴォイが必死の形相で呼びかける。が、ジーガーは一瞬だけ振り向いただけで、再びその巨躯を迫り来る怪物に向けた。
 先に行け、とその背中が語っている。
 大型トレントは、玲蘭の地雷撃では足止め出来そうにもなかった。だから、ジーガーが足止めの為に残る、ということらしい。
「もうこれ以上は無理だ……出すぞッ!」
 大和も、苦渋の決断を下さざるを得ない。
 サイドブレーキの戒めを解かれたバスは急速発進し、密林との距離を一気に離していった。


     * * *


 その後、待てども待てども結局ジーガーは帰ってこなかった。

――――――――――――――――――――――――――――――――

<あとがきマスターコメント>

 ひとまず目的は達成しました。
 ジーガーがどうなったのかはご想像にお任せします。

――――――――――――――――――――――――――――――――

<運営より>

回収した武器に関しては、後日アイテム化してリストにいたします。
そのリストからひとつを選び、武器・スキル申請フォームより申請ください。
PC所持の武器として登録いたします。
(全PC対象。配布武器なので登録数に関わらず無料となります)

――――――――――――――――――――――――――――――――


<定員> 10人
<参加締め切り> 3月21日23時
<アクション締め切り> 3月25日23時
<リアクション公開予定日> 4月4日
<リアクション公開日> 3月31日

<参加者>
アヅキ・バル
ミーティア・アルビレオ
†赫の堕天使†
刀神 大和
ホーリー・ホワイト
公 玲蘭
リンヴォイ・レンフィールド
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  1. 2018/03/31(土) 20:21:00|
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