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【キャンペーンシナリオ】アルタン戦記 その2 ~難航~

アルタン戦記 その2 ~難航~


マスター:神明寺一総




 
 タチアナ・ユロフスキーは、食堂に向かっていた。
 織主桐夏から貸して欲しいと頼まれた教本を探すのに予想以上にて間取り、小腹が空いてしまったのだ。いつも通りなら、夕飯のカレーがまだ残っているはずである。

(あれ?明かりが……?)

 食堂のドアの隙間から、弱い明かりが漏れている。今この船は節電中だから、人がいない部屋は全て明かりを消す事になっている。つまり、誰かいるのだ。そしてその人物は恐らく、カレーを食べているに違いない。

(うわ!カレー残ってるといいけど……)

 自然とタチアナの歩く速度が早くなる。最後の数歩は小走りになって、食堂のドアを開けた。

 テーブルの上に、食べかけのカレーが一人分置かれている。まだ手を付けたばかりという様子だ。

(1人だけか、それならまだきっと――)

 食べかけのカレーを横目に見ながら、テーブルの角を曲がって厨房へと急ぐ。不意にその足が何かにあたり、彼女は大きく前につんのめった。とっさにテーブルを掴んで身体を支える。

(一体ナニよ、こんな所に――)

 と言いかけ、彼女は大きくを息を呑んだ。
 目の前の床に、人が倒れているのだ。

「……アレクセイ?ちょっと大丈夫、アレクセイ!?」

 倒れていたのはアレクセイ・アシモフだった。咄嗟に駆け寄り彼を抱き起こそうとするタチアナ。しかしその手に『ねっとり』とした感触が広がる。タチアナは、その感触に覚えがあった――血だ。手のひら全体に、血がべっとりとついている。見ればアレクセイの口から上半身にかけてが、ドス黒い血に染まっていた。

「アレクセイ!しっかりしてアレクセイ!?」

 タチアナの呼びかけにも、アレクセイは全く反応を示さない。返ってくるのは、弱々しい呼吸の音だけだ。タチアナはアレクセイの身体をそっと横たえると、壁のインターホンをひったくり、叫んだ。

「誰か!誰か来て!アレクセイが、アレクセイが血を吐いて――!早く、アレクセイが死んじゃう!!



「――容態はどうです?」
「思わしくない」

 伊丹満貞に訊ねられたレヴィス・マレスティウスは、厳しい顔で言った。彼の視線の先のベッドでは、青白い顔をしたアレクセイが横になっている。エルフであるレヴィスは、その長い人生の中で医師としての経験も積んでいた。専門家ではないが、薬草医として一通りの事は出来る。

「どうやら胃から出血したようだ。だいぶ大量に吐血したようだし、このまま出血が止まらないと危険かもしれない――脈も弱い」
「彼は確か胃を病んでいましたね……胃潰瘍ですか?」
「正確な事はわからない。神楽岡 航君の持ってきた薬の中に胃潰瘍の薬があったので、投与してみたが……。元々胃が弱っていた所にカレーのような刺激物を食べたのが原因かもしれないし、毒を盛られた可能性もある。」
「毒を盛られたんですか?」
「あくまで可能性の問題だ。まだ何も調べてはいないからな。ま、調べた所で、化学的に生成された薬品が原因だったら、詳しい事はわからんだろう。私はそっちの知識はさっぱりでな」
「近代的な科学や医学に精通した人物がいないのは痛いな……。しかし、仮に毒だったとして、一体誰が、なんのために?」
「さぁな。今回の作戦に反対する者の犯行か、あるいは怨恨か……」
「作戦に反対する者?人殺しをしてまで作戦を止めたいと思う者なんていますかね?そんなに計画に不満があるなら、出港前にもっと強行に反対するでしょう。でも、そんな人間はいなかった」
「仮定の話だよ。正直私には見当もつかん」

 レヴィスはそう言って肩を竦めた。

「しかし参ったなぁ……。船長ナシで船を動かせるかどうかを考えただけでも頭が痛いのに、その上さらに殺人未遂の捜査までしないといけないとは」

 うんざりだ、という顔で伊丹が言った。

「わかっているとは思うが、捜査をするなら慎重にな。船員同士の疑心暗鬼を招くような事態は避けたい」
「それでなくてもウチは寄り合い所帯ですからね」

 思い立ったように、伊丹は立ち上がった。

「さて、そろそろ行きます。やる事が山積みなので――アレクセイの容態は、マメに報告して下さい」
「心得た。キミも大変だな」
「ま、大変なのは覚悟の上ですがね――。今はこれ以上厄介事が増えないのを祈るのみです」

 そう言って、足早に医務室を出ていく伊丹。
 しかしそんな彼の願いは、早々に打ち砕かれる事になる。



「……え?嵐が来る?」

 スタルカ号の甲板上で、伊丹は素っ頓狂な声を上げた。
 彼の頭上には、満天の星空が広がっている。

「これ、見てください」

 伊丹はオリガ・ユロフスキーから渡された双眼鏡で、彼女の指差す方を見た。レンズの向こうの空には一面の黒雲が広がっている。

「そんな……過去20年分のデータには全部目を通したんだ!この時期に嵐なんて一度も来たことはないぞ!」

 伊丹は悲壮な声を上げた。

「この距離だと、あと半日もすれば暴風圏内に入ります」
「なんとしても回避するんだ。アレクセイがいない今、嵐に突っ込むのは避けたい」
「難しいとは思いますが……出来る限りの事はします」

 応えたオリガの顔にも悲壮感がありありと浮かんでいる。

「頼むよ」

 伊丹はオリガに双眼鏡を返すと、厳しい顔でその場を立ち去った。


 未だ目的地の影さえ見えぬ間に、『アルタン大陸東部進出作戦』は早くも危機を迎えていた。

――――――――――――――――――――――――――――――――

<マスターコメント>

★注意!★

 このシナリオは『アルタン戦役』というキャンペーンの第3回目になります。これまで一度もキャンペーンに参加していない方でも問題なく参加出来ますが、過去2回の話は読んでおくのを推奨します。


★前回までのあらすじ

 逼迫する物資事情を解決するため、アルタン大陸東部(ア東)に進出することになった召喚者達。伊丹率いる先遣隊は、ア東から救助要請のためにやってきた貨客船スタルカ号の乗組員をメンバーに加え、一路ア東の港湾都市リガティアを目指した。


★アクションについて

 シナリオの舞台は前回から引き続き、リガティアへと向かう航海の途上にあるスタルカ号。
 しかしスタルカ号の行く手には嵐が迫っており、しかも充分な操船技術を持つ唯一の人物だった船長のアレクセイ・アシモフは、吐血して倒れてしまいました。
 プレイヤーは嵐に対処しつつ、何故アレクセイは倒れたのか、その真相を探らねばなりません。


 アクションとしては最低限、

①何をするのか(極力具体的に)
②何処でするのか
③何故それをするのか(行動の意図・狙い)

 最低でも、以上3点を記載して下さい。

 その他、もしいれば

④一緒に行動したいPC・NPCの名前

 も書いておくといいでしょう。




★登場NPC

本シナリオには公式NPC以外に、以下のオリジナルNPCが登場します。

 伊丹 満貞
 レヴィス・マレスティウス

①アレクセイ・アシモフ
②オリガ・ユロフスキー
③タチアナ・ユロフスキー
④マリア・ユロフスキー
⑤アナトーリ・ハバロフ

 伊丹とレヴィスについては【NPC】の項目を参照して下さい。
 アレクセイ以下の①~⑤については、下記を参照して下さい。


①アレクセイ・アシモフ 人間 男 20歳
 リガティア沿岸警備隊の隊員。階級は軍曹。
 船員の中で正規の軍人としての訓練を受けた、ただ一人の人物。
 船を操ったり海図を読んだりといった航海に関する知識を有するただ一人の人物であり、そのため船長を務めている。
 優秀で決断力もあるが生来の心配性であり、そのため船長の職を負担に感じ、ストレスから胃を病んでいた。夜食にカレーを食べた直後に大量に吐血し、意識不明の重体に陥った。


 以下2~4は姉妹。いずれ劣らぬ美形。

②オリガ・ユロフスキー 人間 女 18歳
 整備士。整備士として正規の訓練を受けている。
 船の整備の他、無線を扱ったり計器を読む事も出来るため、アレクセイのサポートを行う事も多い。
 長女という事もあり、責任感が強く面倒見が良い。几帳面な性格。
 アレクセイがいない中、船の舵を取らざるを得なくなる。


③タチアナ・ユロフスキー 人間 女 17歳
 副整備士。正規の訓練を受けておらず、オリガの指導を受け技術を習得した。しかし実際に行えるのは点検と簡単なメンテナンス程度で、修理は姉に任さざるを得ない。
 やや勝ち気な性格で、男勝りな言動もしばしば。姉やアレクセイを気遣うあまり、背伸びする傾向がある。
 アレクセイが倒れてからすっかり寡黙になり、何事か酷く思いつめている様子である。


④マリア・ユロフスキー 人間 女 14歳
 食事の用意から洗濯まで、船内の雑用一切を一手に引き受けている。
 健気な頑張り屋。実は3姉妹の中で一番合理的。
 自分が作ったカレーを食べたせいでアレクセイが倒れたと思い、ふさぎ込んでいる。


⑤アナトーリ・ハバロフ 人間 男 13歳
 リガティアから車で数日の距離にある小さな漁村出身。
 出港していくスタルカ号を見て、父の遺品である小さな漁船で追いかけたもののエンジンの故障により漂流。アレクセイ達に助けられる。
 普段はマリアの仕事を手伝っているが、船長の仕事に興味があるらしく、たびたびアレクセイを質問攻めにしては3姉妹にたしなめられている。ちょうどアレクセイが倒れた直後に、船体下部へと向かう姿を目撃されたのを最後に、姿を見た者はいない。



★スタルカ号

 全長約130メートル。総トン数・総積貨数共に約7000トンの中型貨客船。艦齢約20年。古びてはいるが、充分航海に耐えうる状態である。
 貨客船であるため、一等・二等船室や各種娯楽設備なども備える。
 出港直後に機関が不調に陥って全速が出せなくなり、航海期間が延長。漫月出港時には充分な量の物資を積んでいたものの、不測の事態に備え、燃料節約のため節電を実施している。

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  1. 2019/02/06(水) 01:35:22|
  2. リアクション

【コモンシナリオ】幻想の遊園地【戦闘無し】

幻想の遊園地【戦闘なし】


マスター:菊華 伴




 
 まんげつ造りと桐生産婦人科医院の間に、『桜木ファミリーランド』という遊園地があった。まだ大人が生きていたころは沢山の親子連れでにぎわっていたようだが、現在はそこで働いていたアルバイトたち数名で、どうにかアトラクションの手入れをし続けているにとどまる。
 大人が死滅して以降、だれもお客はこない。それでも再び遊びに来てくれるだろう子供たちのために、生き残ったスタッフ(アルバイト)たちが、できる限りの手入れをしていた。
 故に、目玉であるジェットコースターと大観覧車は動かすことが出来ないが、他のアトラクションは稼働していた。

 * * * * *

「お化け屋敷よし、バイキングよし、メリーゴーランドにミニ列車よし。それから動物広場もよし……」
 スタッフの一人……他の者から『チーフ』と呼ばれている……は、あちこちにあるアトラクションの様子を確認していた。すると、ポニーテールを揺らした女性(便宜上、ポニテと呼ぶ)が、裏手から現れた。
「ねぇ、思ったんだけどさ」
「ん?」
「遊園地、整備し続ける意味ってあるの? チーフがネットに宣伝しているのは知っているけど」
 ポニテの言葉に、チーフは肩を竦めた。まるで「何を言っている?」と言わんばかりの行動だ。
「じゃあ君はここから人のいる場所に移り住めばいいじゃないか。僕は、子供たちのためにやってるんだから」
「……気持ちはわかるんだけどさ。今日、点検したらコーヒーカップが動かなくなっていたのよ」
 ポニテがため息交じりにいい、調査報告をチーフに手渡す。チーフはそれを読むと、すぐさまコーヒーカップの方へと赴いた。
 コーヒーカップの周りには、数名のスタッフたちが話し合っていた。コーヒーカップを修理するのか、それともこれ以上何もしないのか。チーフはそんな彼らを押しのけ、徐に制御系統などを調べ、修理を始めた。
 あまりにも自然な態度だったので3人も、あとから追いかけて来たポニテも言葉が出なかった。チーフは黙々と修理を続けると汚れた頬を軍手で拭い、「よし」と小さく頷いた。
「これで動くはずだ。やってみろ」
 チーフの言葉に、三人いたうちの一人で、メガネをかけた若者(以後メガネと表記)に指示を出す。メガネは「は、はい!」と緊張した様子でスイッチを入れる。すると、コーヒーカップは音を立てて動き始めた。
 軽快な音楽に乗ってくるくる回るコーヒーカップ。その光景にスタッフたちが沸き立つ。だが、チーフだけは黙って様子を見ていた。
「これなら、まだいけますかね」
「いや、たぶんそろそろ寿命だろう」
 メガネが期待のこもった眼差しを向けたが、チーフは首を振った。彼は僅かに聞こえたモーター音の異常に表情を曇らせる。
「クリスマスから年末にかけて。これが最後だ。年が明けたら……」
 チーフはそこまで言うと、とても悲しい顔で告げた。

 ――この遊園地を、閉鎖しようと思う。


「桜木ファミリーランドか……」
 朝比奈 愛依がどこか懐かしそうにつぶやいた。彼女もかつては家族で遊びに行っていた。幼いころは、よく連れて行ってもらっていたのを思い出し、少し寂しい気持ちになる。
 だが、今は……頼れる大人がいない中、子供たちのリーダー的存在として、がんばっている。顔を上げた愛依は、普段と同じように冷静な表情を見せた。
「先ほど、SNSに投稿があった。アトラクションの老朽化に伴い、年末の営業を最後に閉鎖するらしい」
 それでもどこか遠い目をした彼女は、どこか寂し気な声で語ると、パソコンを開き、インターネットに接続して、『桜木ファミリーランド』のホームページを開いた。
 アトラクションとしてはメリーゴーランド、お化け屋敷、ゴーカート、コーヒーカップ、バイキング、ミニ列車、ジェットコースター、大観覧車があるもののジェットコースターと大観覧車はもう動かなくなっている。
 その他、ミニ牧場があり、ヒツジとヤギ、ポニー、ウサギ、モルモットがいる。餌も十分あるようで健康状態がよいらしい。
「……桐生 辰巳もこどもたちをつれて遊びに行く予定らしい。私たちも同じ日に幼い子供たちを連れて行こうと思うのだが……」
 愛依の言葉に、召喚者たちは顔を見合わせた。


――――――――――――――――――――――――――――――――

<マスターコメント>

菊華です。
今回はクリスマスと年末年始……という事で、遊園地を舞台にしてみました。ただ、この年末が最後の営業となります(大人の手が入らないため、老朽化が進んでいるみたいです。以後、残ったスタッフたちは動物たちと共に生きられる場所を探すようです)。

 今回、みなさんは12月 25日、子供たちの引率として遊園地に行きますが……目的としては遊園地を楽しもう! というものです。引率云々を抜きにしてどう楽しむかをアクションに書いてください。

 また、この日はプレゼント交換というイベントも行われるようです。プレゼント交換に出す品を必ず書いてください。
例:くまのぬいぐるみ(白い熊のぬいぐるみで赤いリボンがかわいい)

※次のNPCをお誘いすることも可能です
・朝比奈 愛依
・夜桜 切菜
・桐生 辰巳
・ヨアン・ウォン
・緒方 唯我

遊園地にあるもの

稼働しているアトラクション
メリーゴーランド、お化け屋敷、ゴーカート、コーヒーカップ、バイキング、ミニ列車
その他、ミニ牧場(ふれあい広場)があります。

その他、ポップコーンなど軽食や桜木ファミリーランドのお土産などがある売店があります。奥の方には小規模のゲームセンターもあるようです。

またオープニングには書きませんでしたが裏手には手入れがされた花壇がいくつかある公園があります。そこでのんびりしてもいいでしょう。

それではよろしくお願いします。

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  1. 2019/01/22(火) 00:38:00|
  2. リアクション

【コモンシナリオ】第六話 無貌のキマイラ(後編)

第六話 無貌のキマイラ(後編)


マスター:有沢楓花




 
 まんげつ造のある都市から離れたとある場所に、瀬織市という小さな市がある。
 中心部は都会的な賑わいを見せ、離れれば田畑や牧場も見られる、そこそこ都会、そこそこ田舎という何かにつけ便利な市だ。
 その「そこそこ田舎」な場所に、小川町はあった。


 パンデミック前後、小川町とその周辺では子どもが失踪する事件が起きていた。
 小川町とショッピングモールを繋ぐ道の確保及び失踪事件調査のため、とある町を訪れた小川町の面々と召喚者たちだったが、町長代理の長谷川 陽向(はせがわ ひなた)がキマイラに攫われてしまう。
 召喚者たちは町を探索し、三体のキマイラのうち一体・中型キマイラを倒す。
 しかし同時に、別の場所で陽向を発見した召喚者たちの前にも大型キマイラが現れた。
 場所は「ミナト製薬株式会社」。そこでは子どもたちが今も閉じ込められているという……。


                      *


 夕陽が建物の谷間に落ちていく。くっきりと浮かび上がる建物の影。遮られて頼りなくなっていく光量。それなのに鋭い斜角の光線が目を刺す眩しさに、手をかざす。
「今すぐ救出に動くか、それとも朝を待つか……とにかく土地勘もないのに夜中に突入っていうのはナシにしたいところだね」
 町長・立花 凪(たちばな なぎ)は眉をしかめた。
 視線の先で、大型キマイラはあの倉庫の天井に陣取って周囲を探すように見回している。
「陽向がキマイラの腹の中に収まる前に一刻も早く助けたいところだね。あの電話の内容が本当だとしても懸念材料はいくつもある。
 まず一見して口はないし、果たして人間を食べるのかも分からないけど、骨が転がってたんなら可能性はある。元々攫うだけの命令を聞いていたのかも怪しいけど、だとしたって今は命令する大人もいない。供給されているエサもないと思うし……」
 食べなくても玩具にして八つ裂きにすることは簡単だ。
 自分で言っていて最悪の事態を聞き手に連想させてしまう悪影響を考えたのか、立花は頭を振った。
「……まぁ、まずキマイラを退治するならその方法を探さなきゃいけない。
 できなかったら遠ざける方法を考える。外出時を狙うか、二手に分かれて引きつけつつ上から救い出すか」
 決意を込めた目で壁越しに倉庫を見上げると、今度は紙を取り出してさっと敷地の地図を書いた。
「ここが陽向のいる倉庫。こっちの大きい建物がオフィスだ。正面に見えるのが入り口。そして先のスマートフォンから得られた情報からすると……」
 建物の横に忙しく箇条書きにしていく。
「キマイラ専用出入り口。鉄格子の嵌まった子供たちがいる牢屋。その他の牢屋。事務所。キマイラのいる場所……キマイラは複数体いるって話だったね」
 ここで彼女は召喚者たちを見回した。
「召喚者の皆から特に案が無ければ、今すぐ、銃を持ってる者に囮になってもらう。私が窓から入って陽向と一緒に出る。その後合流、迎撃して足止めしつつ撤退。製薬会社の調査はまた日を改めて行う。
 さて、どうしたら良いと思う? 他に案があるかな?」


                      *


 陽向は、既にほぼ闇となっている室内から窓を見上げた。窓の側で倦んでいた大型キマイラがぴょんと飛んで、小鳥を捕まえる。手を頭に持って行くと、人間のような丸い頭部――その頭頂がぱっくりと裂けて、小鳥を飲み込んだ。しばらくして細長い何かがペッと吐き出されると陽向の目の前に落下し軽い音を立てた。スマートフォンで照らすと、それは筋がこびりついた骨だった。
 彼はそのまま何か使えないものがないかとスマートフォンで地面を照らして見回した。自分にあるのは、魔力を込めるタイプの拳銃が一丁だけなのだ。戦うには心許ない。
 仲間が自分の居場所を見付けてくれたという事実が彼に周囲を見る心の余裕を与えてくれた。
 転がっているのは骨やゴミ、それに餌用らしい金属の大きな金だらい。
 それから、床に金属の四角い蓋があった。取っ手を引っ張ると抵抗もなく開いた――というより、内側から押せばすぐ開くようになっているらしい。裏側には取っ手もなかったのだ。
 中は緩い坂道のトンネルで、握りこぶしぐらいの非常灯が転々と点っている。人間ならかがめば通れるくらいの高さだった。
「ダストシュートか下水道……いや、高速道路のトンネルみたいだな」
 いざとなったらここに逃げよう、と陽向は決意した。
 勿論、この先が何処に続いているのか、逃げられるのかは分からない。

――――――――――――――――――――――――――――――――

<マスターコメント>

 こんにちは、有沢です。
 小川町のシナリオ、第六回となります。後編とはいいますが、今回からのご参加も歓迎しております。


 ●現在のPCさんの状況
 前回のシナリオのほぼ直後です。時間は午後6時頃になります。

 ・特に案が無い場合、立花凪は、長谷川陽向を救出する作戦をメールで喫茶店の拠点(の加賀陸と斎藤雨音)に伝えた直後に実行します。
  キマイラには殆ど傷が付けられず回復力が非常に高いため、基本的に銃で応戦して距離を稼ぎながら(かつ巻きながら)拠点へ逃げることになります。
  この場合、作戦に同行できるPCさんは現地にいるホーリー・ホワイトさんとアヅキ・バルさんだけです。
  その他の方は電話等で連絡を取ることは可能です。

 ・全てのPCさんは、開始地点を前回の続きの地点(路上)とするか、拠点へ移動することができます。
  路上もしくは拠点からミナト製薬へ向かうには20分ほどの時間がかかります。
  路上から拠点を経由してミナト製薬に到着するには40分ほどかかります。

 ●ダブルアクションについて
 今回のシナリオは、製薬会社の探索です。
 アクションですが、今回は2アクションかけることが可能とします(アクション文字数が増えたりしませんので、かけないことも可能です)。
 具体的には、
 ・前半~シナリオ開始直後
  立花に陽向を救出しないよう説得するアクションが採用され、誰も救出しない場合は、陽向救出~逃亡が行われます(成功するかは別です)。
  遠距離間での通話、自分のいるスタート地点の短時間の探索、移動などができます。
  つまりシナリオ開始時から30分ほどまでの行動ですが、行動内容によって次のパートの開始時刻が変わります。

 ・後半~製薬会社探索パート、その他の行動
  製薬会社の内部探索パートです。大型キマイラ以外は、こちらから攻撃しない限り基本的には戦闘は発生しません。
  前半の結果にもよりますが、このパートには全てのPCさんが参加できます。事前準備など行動によっては遅れて到着することもあるでしょう。
  また、その他の行動を取ることもできます。
  NPCの立花凪と加賀陸はどの場合でも探索に参加し、斎藤雨音は拠点で連絡係などを務めます。

 ●ミナト製薬会社
  高い塀に囲まれたオフィス。正門は頑丈で施錠されています。
  オフィスの建物とは別に、敷地内に陽向が閉じ込められている倉庫があります。地上三階相当の高さで、コンクリート打ちっぱなしの四角柱です。鍵のかかった頑丈な扉、高所の窓が出入り口です。中に明かりはなく、骨が転がっており、獣臭さが漂っています。

 ・オフィスの建物について
  正面入り口はガラス張りです。施錠されていますが、立花は壊して入ります。
  入り口からは小さな受付カウンターと応接セットが見え、その奥に更にドアがあります。
  中にあるのは以下のような施設です。

 ■「表側」のオフィス
   ・オフィス……最も大きな部屋。机や書類棚、パソコン、コピー機(FAX機能付き)など。一見して普通のオフィスです。なお、スマートフォンに残されていた写真の事務所はもっと狭いものです。
     仕事の殆どは普通の売り上げデータや経理の関係する書類など普通のものです。
     薬品を作るための研究所と工場は別に持っており、薬品は風邪薬や胃腸薬などの普通の薬を開発・販売していたようですが、その他、野生のモンスターの排除に効果的な薬を色々と開発していたようです。
     パンデミック発生後から、「パンデミックに対する特効薬」をここで新しく開発・実験するようになったようです。
     これは奥の研究室で行っており、出入り口の扉に暗号式の鍵を取り付け、暗号は月に一回ほど変更していたようです。
     責任者の机の上には何故か和菓子の本と、運動会のリレーで使うバトンが置いてあります。
   ・休憩室……イスにテーブル、飲み物の自販機、菓子パンやお菓子の自販機。枯れた観葉植物。健康食品や『長生きできる! 秘訣』、『神秘の長寿キノコ』といった本がおいてあります。
   ・倉庫……ガムテープや工具、仕事上必要なもののストック、脚立など雑多なものが置いてあります。開いたままの小動物用ケージが幾つか。
   ・仮眠室……死体があります。ポケットに丸まった細長い紙(セロテープのように巻かれている)が入っており、意味不明のひらがなの羅列「きわあならいこやうもまえち」と横書きで書かれています。
   ・トイレや従業員用ロッカー等

 ■「裏側」のオフィス(スマホの写真などから得られた情報)
   倉庫の側に研究室へ続く鍵のかかった扉があります。ロックを外すと入ることが出来ます。
   扉の側のパネルに、5文字の特定の言葉(ひらがな)を入力すると開く仕様になっています。  ※PCさんの方で特定の言葉を入れる必要はなく、解き方や使用するものが合っていれば開きます。

   ・事務所……扉には閂が高い場所(大人なら手を伸ばして届く程度)にかかっています。何らかの事務作業をする場所。スマホの写真は扉についた窓から内部を映したものです。
      キーケースには色々な鍵がかかっており、牢屋と対応する番号及び「特別室」の下にそれぞれの鍵がぶら下がっています。
      ファイルには今までの研究成果や誘拐した子どもたちの氏名、また誘拐する候補らしいリストがあり、氏名・生年月日・年齢、血液型が記されており、陽向の名前もあります。
   ・牢屋が並んだ場所……鉄格子が嵌まっています。各牢屋には牢屋の番号が付いており、その他被検体ナンバーも付けられています。
      中にはキマイラが一体ずついるようですが、いない牢屋もあります。牢屋は番号が付き、4室ずつ向かい合わせに8室あります。
      そのうちの1室はチワワの部屋で、扉が開いており中で餌を食べています。キマイラの中では、あのライオンの大型キマイラが最大サイズだったようです。
      よく見ると、それぞれの牢屋の床には小さな四角いスリットが入っています。牢屋手前の、牢屋の番号に対応したボタンを押すと、スリットが開く落とし穴です。
   ・子ども用牢屋……キマイラ用牢屋の奥にあり、「特別室」と書かれています。現在子供たちがとらわれています。
      ソファベッドや机と椅子が運び込まれています。
      牢屋の手前にはスペースがあり、簡単なキッチンと冷蔵庫、日用品が入った棚があります。ドッグフード、キャットフードの袋が開いていますが、牢屋の子どもがキマイラを手懐けるために使っているものです。
   ・薄暗い部屋……部屋のプレートに「合成室」と描かれています。閂が高い場所(同上)にかかっており、写真はドアのガラス窓越しに撮ったものです。キマイラらしき動物とケージ、何かの実験器具が並んでいます。
      テーブルの上にいくつかの空のビーカーとフラスコが並んでおり、何かを調合していたようです。
      また、メモが残してあり、「合成時以外:興奮……赤、沈静……青、睡眠……緑、非常時……黒  注:苦みがあるため食事に混ぜること」と書かれています。
   ・閉まった部屋……部屋のプレートに「薬品倉庫」と書かれています。閂が高い場所(同上)にかかっています。
      中は両側に棚の並んだ狭い部屋で、薬品の詰まった箱が幾つも置かれています。ドラッグストアで見かけるような普通の薬が殆どですが、幾つか獣のシルエットが小さく描かれたカラフルな箱が置いてあります。
      黄色の箱にはY、青にはC、ピンクにはMの文字が書かれています。中には箱と同じ色の薬が入った小瓶が沢山並んでいます。
   ・シャワー室、トイレ……普通のシャワー室とトイレです。洗面所にコンセントがあり、充電器が刺さったままになっています。
   ・キマイラ用出入り口……外部と内部を繋いでいるらしいのですが、何処にあるか不明です。

 ●スマートフォン
  チワワにくくりつけられたスマートフォンで電話すると、中の子どもに繋がります。
  シナリオ開始時点では充電中です(充電しに牢屋を出入りできるのは一人の子どもだけです。彼はまだ低学年のため、話がいまいち要領を得ません)。
  何も働きかけない場合、ある程度充電した時点で持ち主のいる牢屋に戻されます。

 ●キマイラについて
 現状では大中小、三匹のキマイラと遭遇しています。その他にも施設内に何匹かいるようです。
 大型キマイラは、案山子のような丸い頭部、ライオンの胴体、鷲の翼、大きなサソリの尾があり空を飛びます。
 中型キマイラは、案山子の頭部に山羊の角、大型犬の胴体、烏の翼があります。被検体10号。倒されました。
 小型キマイラは、チワワの頭と胴体、雀の翼、蛇頭の尻尾を持っています。牢屋の低学年の子どもには友好的ですが、それ以外の子どもには普通、召喚者たちには警戒した態度をとります。

 キマイラは基本的に大型になればなるほど強いのですが、合成された動物にもよります。
 戦闘になった場合、通常の攻撃では倒すことはほぼ不可能です。
 倒すには二つほど方法がありますが、一つは製薬会社の中にあります。もう一つは前回で明らかになっています。


●この地域の主な施設は以下の通りです。全て放棄されており、人の気配はありません。
 ・住宅……新しめの大邸宅から築数十年の一軒家、アパートまで。
 ・喫茶店……郊外型喫茶店。食料はナマモノはありません。現地の拠点です。休息と補給が出来ます。
 ・ガソリンスタンド……燃料が残っており、補給可能。
 ・畳店、何かの店、工場(こうば)……生活に密着した個人商店、個人の工場です。機械や工具、材料が残っています。
 ・オフィス……製薬会社「ミナト製薬」のオフィスです。比較的新しい近代的な建物で、高い塀があり、門にロックがかかっています。敷地内にはあちこちに監視カメラや侵入者を迎撃する銃器が取り付けられています。


 シナリオと無関係な行動としては、小川町内での活動は引き続き可能です。
 ※この行動選択肢を選ばれる場合は、2アクションではなく、普段通りのアクションをお願いいたします。

●海亀公園について
 拠点についてもアクションをかけることは出来ます。
 今までのガイドと基本的には変わりませんが、
 ・井戸を手入れすれば使えそうである
 ・飲料水はペットボトルの濾過装置でそこそこ安定供給がされるようになった
 ・水道水が使用可能になっている
 ・畑は耕されています。現在は豆、小松菜、ジャガイモ、タマネギ、トマト。(その他、既に植えたことにしても構いません)
 ・田んぼには稲が植えられ、収穫途中。(全て収穫した、でもOKです)
 ・ホームセンターからキャンプに使えそうな物を運び入れた
 ・中学校では羊と鶏も利用できるようになりました。


●町の利用について
 住民として認められています。
 町の施設の利用が出来ますが、物資は豊富とは言えません。
 あからさまな監視役はいませんが気にされてはいるので、不審な行動(武器を手に持ったり)は見咎められます。



●最後に
 長文のガイドをお読みいただきありがとうございます。
 探索メインのため色々と情報を詰め込んではいますが、普段通りのアクションをお待ちしております!

続きを読む
  1. 2018/12/28(金) 12:00:00|
  2. リアクション

【コモンシナリオ】第五話 無貌のキマイラ(前編)

第五話 無貌のキマイラ(前編)


マスター:有沢楓花




 
 まんげつ造のある都市から離れたとある場所に、瀬織市という小さな市がある。
 中心部は都会的な賑わいを見せ、離れれば田畑や牧場も見られる、そこそこ都会、そこそこ田舎という何かにつけ便利な市だ。
 その「そこそこ田舎」な場所に、小川町はあった。

 そして、パンデミック後の小川町の自治会は「生徒会」を自称していた。
 なお近隣の高校の生徒会長は長谷川 陽向(はせがわ ひなた)だったが、高校が機能していない今、彼の肩書きは「町長代理」である。町長は小川町周辺部の調査のため長い間遠征していたからだ。
 小川町は町長不在の中、どうにかこうにか生活を維持していた。
 ――そんな秋の日の昼下がり。
「ただいまー! みんな元気にしてた?」
 突如生徒会室に響いた声に、陽向はずり落ちた眼鏡をかけ直した。
「え……あ……町長っ!?」
 まじまじと見れば、確かに扉の前に立っている女性は小川町の町長だった。
 二の句が継げない陽向と目を丸くしている生徒会書記の斎藤 雨音(さいとう あまね)に代わって、警備担当の加賀 陸(かが りく)が怪訝そうに尋ねた。
「いつ帰ったんです? ……見張りは何で報告しないんだ」
「今さっき。叱らないであげて、私が自分で行くからいいって言ったんだ」
「それにしても他の面々は?」
「先に休んでもらったよ。私はみんなの顔が見たくてね。職員室いなかったからこっちかなーって思ってさ」
 彼女は荷物ではち切れんばかりのザックを机に降ろす。
「校庭を見てきたけど、畑も田んぼも良い具合に収穫できそうだし今年も無事に越せそうだね。
 こっちも、牧場からつがいで鶏と羊を貰ってきたよ。牛はちょっと余裕がなかったけど、今後牧場が確保できたらいいとは思う」
 それを聞いて、陽向の顔がぱっと明るくなる。
「羊に鶏ですか! ……今後は服が作れるし肉も食べられる。卵もアレルギーさえなければ良質なタンパク源だし小さい子にも食べやすいな」
 町長はぽんと陽向の肩を叩いた。
「ふふ、陽向が代理をしてくれて助かったよ。雨音も陸もお疲れ様。召喚者の人たちとも仲良くやってるんだって? 挨拶に行かなきゃね!」

                      *

「ご挨拶が遅れまして済みません。私が町長の立花 凪(たちばな なぎ)です。19歳でぎりぎりパンデミックを逃れて年功序列で町長になった、小川町の最年長です」
 朝食時、集められ卵かけご飯を振る舞われた召喚者達の前に立った女性は、切れ長の目を細めてフランクな笑顔を見せた。
 彼女は小川町の住民で初めて出会った大人だった。
 女性にしては背が高く、すらりとした長い手足にほどよく筋肉が付いている。胸の辺りに届く髪をハーフアップにし、化粧もしていた。
 今まで子供たちを多く見ていたせいか、年齢より大人びて見える。
「年功序列などと……誤解を招きます」
 横に立つ陽向が慌てて、困ったように咎める姿が少し幼く見える。
「いいじゃない陽向。貴方たちはともかく私はそう。嘘ついたってごまかしたって威厳なんて元々ないんだから」
 陽向をちらりと見てさらっと言うと、彼女は続ける。
「……そういうわけで、聞いていると思うけど、何人かと長期遠征して偵察をして戻りました。幾らかの成果はあったけど町長代理には敵わなかったですね。一番のネックは年長者の人手だったからです」
 凪は一瞬何か言いたそうな顔を召喚者に向けてから、腕に抱えていた折りたたんだ紙を広げて見せた。
「近隣の街の様子も分かったし、牧場にも行き、武器弾薬は警察署で補充できました。ただ戦力不足で調査が叶わなかった場所、運べなかったものが幾つもあります。
 地図をご覧下さい。この赤丸周辺はショッピングモールへと続く小川町の主要な道路です。
 しかし新種と思われるモンスターの出現が確認されています。召喚者さんたちの力を借りて退治を……って、どうしたの雨音。今くらいスマホはやめて話そうよ?」
 卵かけご飯をぺろりと平らげてから、スマホに目を落としたままの雨音に凪が声をかければ、雨音はゆっくりと顔を上げた。
 口をもごもごさせてから、目を逸らす。
 陽向も怪訝そうに、
「どうしたんだ。斉藤らしくない」
「……ん。次の目標なんだけど……ちょっと気になることがあって、したいことがあるの」
「……どうしたんだ。斉藤らしくない」
「いや、だから……パンデミック前後に小川町や近隣の街から子どもの失踪事件があったのは知ってるでしょ? あの後、失踪した子供たちが目撃されたのは丁度この辺りだったでしょ」
 雨音が見せるようにしたスマホの画面は、「瀬織市こどもニュース」というサイトが表示されていた。
 謎の管理人「四匹の黒猫」が運営するサイトで、各地の真偽の程はそれぞれの、ちょっとしたニュースが入手できる。その中に『未確認情報』という前置きと共に、この辺りに貌のない合成獣(キマイラ)が出没していること、調査に行った近隣住民が行方不明になっていることが書かれていた。
 凪は安心させるように頷いた。
「分かったよ。行方不明が怪物の仕業かは分からないけど、退治と両立は出来るはず。陽向、物資を多めに持ち出す余裕はある?」
「数日分なら問題ありません」
「なら、そうしましょう。出発は三日後。それまでに各自準備をお願いします」

                      *

 一行は自転車で目的地の道路の脇に到着した。
 空き地や畑の間に、まばらに建物が建っている。住宅や喫茶店、ガソリンスタンド、畳店、何かの店や工場、オフィスなど……。
「この辺りには何度か来たことがあるな」
 陽向が言うと、へえ、と雨音が気がなさそうに相槌を打った。
「パンデミック時には子供対象の輸血車が来ていたからな。何度か血を提供してトマトジュースを貰った」
 それを聞いて凪が笑う。
「陽向は小さい頃から生真面目だからね……さて、じゃあ自転車はそこの建物の中に入れちゃおう。それで物資の護衛に二人残ってくれる?
 探索の方は、まず建物を一軒一軒回っていって、物資の回収と痕跡の確認。陸はチームと一緒に先行して進路の確保。入り口と周辺に待機」
 陸が頷いて部下と共に歩き出したとき、草むらから現れた一匹の小型犬が、ゴムまりのように跳ねて陽向の顔にのし掛かった。
「わっ!」
 想定外に重量をかけられた陽向がしたたかに尻餅をつく。
 チワワは小さな濡れた鼻先を陽向の鼻先にくっつけるようにすると、くんくんくんとしつこく匂いを嗅いだ。開いた口からよだれが垂れて顔を濡らす。
「悪いがどいてもら――」
 チワワを押しのけようとした陽向は、手に別の、チロチロとした舌の感触を覚えて視線をずらした。
 そこには蛇の顔があり、喉の辺りで口を開け閉めしていた。胴体はそのままチワワの尻尾があるべき部分に繋がっている。
 飛びかかられてからその間、五、六秒だっただろうか。
「ワンワンワン!」
 チワワがけたたましく鳴いたかと思うと、風が巻き起こり何かが突如落下――否、急降下してきた。
「構えろ!」
 陸の声に銃口が一斉に空に向く。
 ライオンの胴体、鷲の翼、大きなサソリの尾、そして案山子のような頭部には黒髪がたてがみのようになびく。しかし顔がない。
 それは一瞬のうちに陽向の首の後ろを咥えると、危険を察して跳躍し、街頭のてっぺんから店の屋根へと銃弾を避けて飛び、空に舞い上がった。
 咥えられたままの陽向は上空に持ち上げられる。彼は咄嗟に逃げようとしたが、既に地面まで十メートルはあった。
「くそっ、陽向がさらわれる……!」
 陸がアサルトライフルから長距離用のライフルに持ち替えようとしたとき、
「……気を付けて、10時方向!」
 凪の声に加わった銃口が向けられる。今度は犬の胴体に烏の翼の生き物だ。ライオンと同じく顔がないが頭部にねじれた山羊の角が生えている。
 彼女は風のように突進してきた怪物をすんでの所で避けた。
 陸がカバーしてアサルトライフルのトリガーを引くと、獣はさっと体を反転させてアスファルトを走り去っていった。
 いつの間にかチワワの姿も、陽向をくわえたライオンの姿もない。
「……畜生」
 陸が地面の石ころを蹴飛ばすと、それが何かに当たった。
 凪が拾い上げる。
 それは、千切れた紐に厳重にくくりつけられたスマホだった。
 電源ボタンを押すと明かりが付き、中央に正方形の5×5の方眼が表示された。中央のマスに丸い宝石の絵が描かれている。
 更に視線をずらせばその下に4つ、丸い銅色のボタンのようなものがあった。それぞれ王冠、剣を持った兵士、馬、戦車(チャリオット)のシルエットが書かれている。
 指で王冠を押さえると、画面上をすうっと動き、画面の端で放すと元の位置に収まった。
「これは重要な手がかりかもしれない。……とにかく、室内に入って作戦を練りましょう。陽向とこの失態は必ず取り返す」

                      *

 コンクリートの堅い感触に、陽向は目を覚ました。
 薄暗い部屋だった。
 天井が高く、やたら高い位置にある窓――ガラスもはまっていない穴――から夕陽が差していて、かろうじて室内の様子を見ることができた。
 四角いコンクリート打ちっぱなしの部屋には家具らしきものが一切無い。
 見るからに頑丈な金属の扉がひとつある。ドアノブはあったが、回らない。鍵がかかっている。
 それからやたら獣臭く、血なまぐさかった。何かの動物の骨が転がっていることに気付き、ぞっとする。
 腰にはホルスターに付けた魔力を込めるタイプの拳銃が一丁ある。役に立てば良いが。
「そうだ、何か荷物は――」
 振り落とされたのか背負っていた荷物はなくなっていたが、ポケットにはスマホがあった。
 幸い電波は届いていたので、生きていることを凪にメールで送る。
「僕は無事です。周囲の状況は……」
 しかしここが何処なのか、肝心なことは伝えられなかった。

――――――――――――――――――――――――――――――――

<マスターコメント>

 こんにちは、有沢です。
 小川町のシナリオ、第五回となります。今回からのご参加も歓迎しております。

 今回は小川町から出まして、周辺の探索・キマイラ退治と失踪事件の手がかりを掴むことになります。
 現状では大中小、三匹のキマイラと遭遇しています。
 大型キマイラは、案山子のような丸い頭部、ライオンの胴体、鷲の翼、大きなサソリの尾があり空を飛びます。
 中型キマイラは、案山子の頭部に山羊の角、大型犬の胴体、烏の翼があります。
         銃弾で出血しました。追っていくと血の跡は次第に量が少なくなり、途中で途切れてしまっています。周辺には住宅があります。
 小型キマイラは、チワワの頭と胴体、雀の翼、蛇頭の尻尾を持っています。


 この地域の主な施設は以下の通りです。全て放棄されており、人の気配はありません。
 ・住宅……新しめの大邸宅から築数十年の一軒家、アパートまで。
 ・喫茶店……郊外型喫茶店。食料はナマモノはありません。
 ・ガソリンスタンド……燃料が残っており、補給可能。
 ・畳店、何かの店、工場(こうば)……生活に密着した個人商店、個人の工場です。機械や工具、材料が残っています。
 ・オフィス……製薬会社のオフィスです。比較的新しい近代的な建物で、高い塀があり、門にロックがかかっています。


 スマートフォンは、陽向のものではありません。
 ロックは、何度か間違えるとヒントが出ます。
「おうさま うらやましがりやの おうさまは そのてで ほうせき とりあげる
 へいたい すすめ すすめ さいごまで きんぴかよろいを たまわるぞ
 うま   にんげんよりも はやいあし じゃまなさくも ぴょんととびこえる
 しゃりん どこまでも はしっていける けれど みちは いっぽうつうこう」
 問題を解くと(他にパスワードを求められるような機能を使用しない限り)使用できます。
 ※正解は一つではありません。また、おおよそ解き方が合っていれば使用できます。操作せずに一定時間経つと再度ロックがかかりますが問題は同じです。



 シナリオと無関係な行動としては、小川町内での活動は引き続き可能です。

●海亀公園について
 拠点についてもアクションをかけることは出来ます。
 今までのガイドと基本的には変わりませんが、
 ・井戸を手入れすれば使えそうである
 ・飲料水はペットボトルの濾過装置でそこそこ安定供給がされるようになった
 ・水道水が使用可能になっている
 ・畑は耕されています。現在は豆、小松菜、ジャガイモ。(その他、既に植えたことにしても構いません)
 ・田んぼには稲が植えられ、収穫途中。(全て収穫した、でもOKです)
 ・ホームセンターからキャンプに使えそうな物を運び入れた


●町の利用について
 住民として認められています。
 町の施設の利用が出来ますが、物資は豊富とは言えません。
 あからさまな監視役はいませんが気にされてはいるので、不審な行動(武器を手に持ったり)は見咎められます。



それでは、アクションをお待ちしております。

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  1. 2018/12/04(火) 10:42:22|
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【キャンペーンシナリオ】アルタン戦記 その1 ~出港~

アルタン戦記 その1 ~出港~


マスター:神明寺一総




 
 少年は、海を見ていた。
 ゆるやかな右下がりのカーブを描き続ける成績に対する、両親や担任の突き上げ。何につけ空気を読むことを強要される友人関係。それら全てに嫌気が差し、海に来るようになってもう何年経っただろうか。
 家庭。学校。友人関係――。
 そうした、逃げ出したかったモノ全てが消え去って久しいというのに、少年はまだ、毎日のように海に来ていた。
 丘から臨む漫月の海には、行き交う船の影一つとてない。パンデミック後の世界において、遠洋航海を成し得る国は未だ存在せず、漫月もまた例外ではない。代わり映えしない水面を日がな一日眺めるのが今の少年の日課であり、その日もそうして一日が終わる――はずだった。その時までは。

(ん……?)

 なんとも言えない違和感を感じて、少年は彼方に目を凝らした。海と空の境目。水平線が、空の青と混じり合って溶け合う辺りに、何かシミのようなモノを見つけたのだ。そのまま、身じろぎもせず見つめ続ける事数十秒。

「あ……」

 小さな声が、少年の喉から漏れた。目が大きく見開かれる。彼方のシミは、今や黒い点となっていた。

「あ……、ああ……!」

 驚きのあまり石になったようになっている少年を尻目に、黒い点はドンドンその大きさを増していく。今やその点は、ハッキリとした船の形を成していた。

「ふ、船だ――。船が、船が来たんだ!」

 少年は弾かれたように立ち上がると、転げるように丘を下っていく。

「ブォーーーー」

 何かに憑かれたように駆けていく少年の耳に、遠くから汽笛の音が届く。

「みんな、船だ!船が来たんだ、船が!!」

 少年はあらん限りの声で叫んだ。



「いやー、まさかア東から船が来るとはねー」

 朝比奈愛依は『感心した』という風に呟いた。その目は、伊丹満貞が半日足らずでまとめた報告書に向けられている。既に一度目を通しているため、流し見、という体だ。

 何十ヶ月か振りに漫月の港に入港した船の名は『スタルカ号』。アルタン大陸東部の港湾都市リガティアを母港とする貨客船である。

「しかも乗員はたったの5名。うち遠洋航海の経験があるのは、船長役の元二等航海士1名だけだっていうんですからね。まさに奇跡ですよ」

 愛依の話に伊丹が相槌を打つ。自分で取り調べにあたったのでなければ、にわかには信じられない話だ。

「やっぱり覚悟が違うのかしらね。国に残してきた人達の命が懸かってるんだものね」

 スタルカ号の船長、アレクセイ・アシモフの話によると、現在リガティアではほぼ全てのライフラインが停止。食料も底を突きかけ、このままでは次の冬は越えられないという。漫月国が召喚ガチャのお陰で復旧の途にあると聞いた彼等は、この絶望的な状況を打開すべく一か八かの賭けに出た。はるばる海を越えて、漫月国まで救援を要請しに来たのである。

「お願いします。俺達を、国の子供達を助けてください」

 そう言って頭を下げるアレクセイの悲壮な顔が、満貞の脳裏にまざまざと甦った。

「ね、伊丹さん。助けに行くんだよね?元々ア東に行くつもりだったわけだし」
「もちろんです。渡航のための船と乗組員が向こうからやって来てくれた訳ですからね。文字通り『渡りに船』ですよ」

 ア東進出計画が具体化してから、既に数ヶ月。ア東に行くための船と人員の確保が出来ず切歯扼腕していた伊丹にとって、今回の件はまさに天佑と言って良い。

「良かった~」

 伊丹の言葉に心底ホッとした顔をする愛依。

「既にスタルカ号の整備や物資の調達・積み込みを急ピッチで行っています。完了し次第、出港です」
「間に合うと良いけど……」
「間に合わせます。必ず」

 伊丹は決意に満ちた顔で言った。


 数日後――。

「いってらっしゃい。気をつけて」
「吉報をお待ち下さい」

 手早く出港準備を調えた伊丹は、スタルカ号と5人の乗員、それに先遣隊のメンバーと共に漫月を出港した。目指すはア東の港湾都市リガティア。まさに「冒険」と言って良い、期待と不安に満ちた旅立ちであった。

――――――――――――――――――――――――――――――――

<マスターコメント>

★注意!★

 このシナリオは『アルタン戦役』というキャンペーンの第1話にあたりますが、前日談として第ゼロ話がありますので、実質第2話となります。
 第ゼロ話に参加していない方でも問題なく参加出来ますが、第ゼロ話は一通り読んでおいて下さい。
 また時間軸としては、「漫月国内の情勢がある程度落ち着きを見せ、海外進出の余裕が生まれた近未来(数ヶ月~数年先)」を舞台としています。
 これはアルタン大陸を舞台とする本キャンペーンと、漫月国を舞台とする他のシナリオの両方に円滑に参加して頂くための措置となります。


★あらすじ

 第ゼロ話で具体的な目的地が決定し、順調に進むかに見えたアルタン東部進出計画ですが、まだ実行段階にも入らぬ内から思いもよらぬ理由で頓挫することになりました。漫月には、先遣隊をアルタン大陸まで送るための船も、その船を動かせる人員もいなかったのです。パンデミック後の混乱の中、海原に乗り出すような余裕はついぞありませんでした。
 元商船学校の学生や工業系の学校の生徒を乗組員や整備士として養成し、放置され痛みの激しい船を修復して――と、『出港出来るようになるまで少なく見積もっても数年はかかる』という報告に、計画立案者である伊丹が頭を抱えてきた所にやってきたのが、ア東から来たスタルカ号でした。
「飢餓の危機にある子供達を救ってほしい」という乗員の懇請を伊丹は快諾。伊丹とPC達先遣隊は、一路アルタンへの航海に出発したのでした。



★アクションについて

 今回のシナリオの舞台は、リガティアへと向かうスタルカ号。
 期間は漫月出港直前からア東到着まで。

 プレイヤーの皆さんには「この航海の間をどう過ごすか」を考えていただきます。

 NPCやPCと交流を深めるもよし。
 船内作業を手伝うもよし。
 何か気になる事を調べるもよし。
 もちろんただだのんべんだらりと過ごすのもよし(笑)

 今回の航海はとにかく人手が足りませんので、炊事洗濯掃除などの雑事から船の点検整備、航海の警戒監視に至るまで、キャラクターのやる仕事は五万とあります(労働を強制される訳ではありませんが、働かないとそれはそれで周囲の風当たりがキツくなるのは間違いありません)。


 アクションとしては最低限、

①何をするのか(極力具体的に)
②何処でするのか
③何故それをするのか(行動の意図・狙い)

 最低でも、以上3点を記載して下さい。

 その他、もしいれば

④一緒に行動したいPC・NPCの名前

 も書いておくといいでしょう。

 場所の例としては、スタルカ号のブリッジ、機関室、貨物室、厨房、食堂、バー、遊戯室、図書室、各個人の船室、アクションが出港前であれば漫月国内の何処か……等が挙げられますが、キャンペーンの幅が広がるような(要するに面白いw)アクションであればドンドン採用して行きたいと思います。



★登場NPC

本シナリオには公式NPC以外に、以下のオリジナルNPCが登場します。

 伊丹 満貞
 レヴィス・マレスティウス

①アレクセイ・アシモフ
②オリガ・ユロフスキー
③タチアナ・ユロフスキー
④マリア・ユロフスキー
⑤アナトーリ・ハバロフ

 伊丹とレヴィスについては【NPC】の項目を参照して下さい。
 アレクセイ以下の①~⑤については、下記を参照して下さい。


①アレクセイ・アシモフ 人間 男 20歳
 リガティア沿岸警備隊の隊員。階級は軍曹。
 船員の中で正規の軍人としての訓練を受けた、ただ一人の人物。
 船を操ったり海図を読んだりと航海に関する知識を持っているのは彼だけであり、そのため船長を務めている。
 優秀で決断力もあるが生来の心配性であり、そのため船長の職を負担に感じている。


 以下2~4は姉妹。いずれ劣らぬ美形。

②オリガ・ユロフスキー 人間 女 18歳
 整備士。整備士として正規の訓練を受けている。
 船の整備の他、無線を扱ったり計器を読む事も出来るため、アレクセイのサポートを行う事も多い。
 長女という事もあり、責任感が強く面倒見が良い。几帳面な性格。


③タチアナ・ユロフスキー 人間 女 17歳
 副整備士。正規の訓練を受けておらず、オリガの指導を受け技術を習得した。しかし実際に行えるのは点検と簡単なメンテナンス程度で、修理は姉に任さざるを得ない。
 やや勝ち気な性格で、男勝りな言動もしばしば。姉やアレクセイを気遣うあまり、背伸びする傾向がある。


④マリア・ユロフスキー 人間 女 14歳
 食事の用意から洗濯まで、船内の雑用一切を一手に引き受けている。
 健気な頑張り屋。実は3姉妹の中で一番合理的。


⑤アナトーリ・ハバロフ 人間 男 13歳
 リガティアから車で数日の距離にある小さな漁村出身。
 出港していくスタルカ号を見て、父の遺品である小さな漁船で追いかけたもののエンジンの故障により漂流。アレクセイ達に助けられる。
 普段はマリアの仕事を手伝っているが、船長の仕事に興味があるらしく、たびたびアレクセイを質問攻めにしては3姉妹にたしなめられている。



★スタルカ号

 全長約130メートル。総トン数・総積貨数共に約7000トンの中型貨客船。艦齢約20年。古びてはいるが、充分航海に耐えうる状態である。
 貨客船であるため、一等・二等船室や各種娯楽設備なども備える。
 漫月出港時には、充分な量の物資を積んでいる。



 では皆さんの腕によりをかけたアクションを、心よりお待ちしています。



※ここから下はキャンペーンの舞台設定となります。内容は第ゼロ話と同じです。

★アルタン大陸とアルタン社会主義共和国連邦★

『アルタン社会主義共和国連邦』(以下ア連)というのは、大洋を挟んで漫月国の西方に位置する『アルタン大陸』の全域と、その周辺の島々を領土としている大国です。オーストラリアと同程度の面積を有するアルタン大陸はいびつな「く」の字型をしており、中央部を南北に走る山脈によって、大きく東部・西部・南部の3つに分けられます。アルタン大陸には北から寒帯~亜熱帯までの気候帯が存在します。
 ア連は今から数十年前にアルタン大陸西部に成立した国で、わずかな期間で軍事大国化すると、10年余りでアルタン大陸内に複数存在した国を片っ端から征服・服属させ、一大強国となります。しかし、無理な拡張政策がたたり国内は常に不安定で、パンデミックを機に連邦内の共和国が次々と独立を宣言して内戦に突入。その結果パンデミック収束前には、既に国家としての体を成していませんでした。



★アルタン大陸東部地域

 アルタン大陸東部は最も遅れて連邦に編入された地域です。自然環境は厳しく、最北部にはツンドラ地帯が、内陸部には砂漠と荒野が広がり、人が住むのに適した地域は南部の沿岸域に限られます(気候帯としては寒帯~温帯に属す)。しかし天然資源に恵まれた土地であり、域内には多数の油田や鉱山を有します。



★アルタン東部進出計画

 愛依の提案は、このア連の東部地域に進出しようというものです。

「パンデミック後に残された国内の物資は既に底を突き始めており、元々資源の乏しい島国である漫月国がこの先も存続していくためには、海外において物資を確保する事が必要不可欠である」

というのがその理由ですが、では何故、アルタン大陸東部が初の海外進出先に選ばれたのか。その理由は2つあります。

 1つ目の理由は、アルタン大陸東部が豊富な資源を有している事。
 今現在愛依達に油田や鉱山の操業を再開させられるだけの能力はありませんが、パンデミック時の避難の慌ただしさを考えれば、現地には相当量の物資が手付かずのまま残されている可能性が充分にあります。実際、ア連から漫月国に避難して来た難民からその想定を裏付けるような証言が得られており、それらを確保するだけでも、当面の窮状を脱するには充分と言えます。

 2つ目は、この地域が現在ほぼ無住となっている事です。先のパンデミックの際真っ先に感染者の出たア連東部では、感染者の徹底した隔離と、非感染者の西部地域への強制避難が行われました。このためもし東部地域に進出したとしても、ア連当局や住民との衝突はまず無いと想定されるのです。また、ア連自体がパンデミック以前に崩壊していた事もあり、東部以外の地域から干渉もまず考えられません。

 なお進出と言っても、今のところ愛依達首脳部は「武力による実効支配」などは考えておらず、「放置された物資の確保」を最優先に、「生き残りの子供達の保護」「現地における脅威(モンスター等)の除去」程度を想定しています。
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  1. 2018/10/13(土) 15:14:00|
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