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【コモンシナリオ】第五話 無貌のキマイラ(前編)

第五話 無貌のキマイラ(前編)


マスター:有沢楓花




 
 まんげつ造のある都市から離れたとある場所に、瀬織市という小さな市がある。
 中心部は都会的な賑わいを見せ、離れれば田畑や牧場も見られる、そこそこ都会、そこそこ田舎という何かにつけ便利な市だ。
 その「そこそこ田舎」な場所に、小川町はあった。

 そして、パンデミック後の小川町の自治会は「生徒会」を自称していた。
 なお近隣の高校の生徒会長は長谷川 陽向(はせがわ ひなた)だったが、高校が機能していない今、彼の肩書きは「町長代理」である。町長は小川町周辺部の調査のため長い間遠征していたからだ。
 小川町は町長不在の中、どうにかこうにか生活を維持していた。
 ――そんな秋の日の昼下がり。
「ただいまー! みんな元気にしてた?」
 突如生徒会室に響いた声に、陽向はずり落ちた眼鏡をかけ直した。
「え……あ……町長っ!?」
 まじまじと見れば、確かに扉の前に立っている女性は小川町の町長だった。
 二の句が継げない陽向と目を丸くしている生徒会書記の斎藤 雨音(さいとう あまね)に代わって、警備担当の加賀 陸(かが りく)が怪訝そうに尋ねた。
「いつ帰ったんです? ……見張りは何で報告しないんだ」
「今さっき。叱らないであげて、私が自分で行くからいいって言ったんだ」
「それにしても他の面々は?」
「先に休んでもらったよ。私はみんなの顔が見たくてね。職員室いなかったからこっちかなーって思ってさ」
 彼女は荷物ではち切れんばかりのザックを机に降ろす。
「校庭を見てきたけど、畑も田んぼも良い具合に収穫できそうだし今年も無事に越せそうだね。
 こっちも、牧場からつがいで鶏と羊を貰ってきたよ。牛はちょっと余裕がなかったけど、今後牧場が確保できたらいいとは思う」
 それを聞いて、陽向の顔がぱっと明るくなる。
「羊に鶏ですか! ……今後は服が作れるし肉も食べられる。卵もアレルギーさえなければ良質なタンパク源だし小さい子にも食べやすいな」
 町長はぽんと陽向の肩を叩いた。
「ふふ、陽向が代理をしてくれて助かったよ。雨音も陸もお疲れ様。召喚者の人たちとも仲良くやってるんだって? 挨拶に行かなきゃね!」

                      *

「ご挨拶が遅れまして済みません。私が町長の立花 凪(たちばな なぎ)です。19歳でぎりぎりパンデミックを逃れて年功序列で町長になった、小川町の最年長です」
 朝食時、集められ卵かけご飯を振る舞われた召喚者達の前に立った女性は、切れ長の目を細めてフランクな笑顔を見せた。
 彼女は小川町の住民で初めて出会った大人だった。
 女性にしては背が高く、すらりとした長い手足にほどよく筋肉が付いている。胸の辺りに届く髪をハーフアップにし、化粧もしていた。
 今まで子供たちを多く見ていたせいか、年齢より大人びて見える。
「年功序列などと……誤解を招きます」
 横に立つ陽向が慌てて、困ったように咎める姿が少し幼く見える。
「いいじゃない陽向。貴方たちはともかく私はそう。嘘ついたってごまかしたって威厳なんて元々ないんだから」
 陽向をちらりと見てさらっと言うと、彼女は続ける。
「……そういうわけで、聞いていると思うけど、何人かと長期遠征して偵察をして戻りました。幾らかの成果はあったけど町長代理には敵わなかったですね。一番のネックは年長者の人手だったからです」
 凪は一瞬何か言いたそうな顔を召喚者に向けてから、腕に抱えていた折りたたんだ紙を広げて見せた。
「近隣の街の様子も分かったし、牧場にも行き、武器弾薬は警察署で補充できました。ただ戦力不足で調査が叶わなかった場所、運べなかったものが幾つもあります。
 地図をご覧下さい。この赤丸周辺はショッピングモールへと続く小川町の主要な道路です。
 しかし新種と思われるモンスターの出現が確認されています。召喚者さんたちの力を借りて退治を……って、どうしたの雨音。今くらいスマホはやめて話そうよ?」
 卵かけご飯をぺろりと平らげてから、スマホに目を落としたままの雨音に凪が声をかければ、雨音はゆっくりと顔を上げた。
 口をもごもごさせてから、目を逸らす。
 陽向も怪訝そうに、
「どうしたんだ。斉藤らしくない」
「……ん。次の目標なんだけど……ちょっと気になることがあって、したいことがあるの」
「……どうしたんだ。斉藤らしくない」
「いや、だから……パンデミック前後に小川町や近隣の街から子どもの失踪事件があったのは知ってるでしょ? あの後、失踪した子供たちが目撃されたのは丁度この辺りだったでしょ」
 雨音が見せるようにしたスマホの画面は、「瀬織市こどもニュース」というサイトが表示されていた。
 謎の管理人「四匹の黒猫」が運営するサイトで、各地の真偽の程はそれぞれの、ちょっとしたニュースが入手できる。その中に『未確認情報』という前置きと共に、この辺りに貌のない合成獣(キマイラ)が出没していること、調査に行った近隣住民が行方不明になっていることが書かれていた。
 凪は安心させるように頷いた。
「分かったよ。行方不明が怪物の仕業かは分からないけど、退治と両立は出来るはず。陽向、物資を多めに持ち出す余裕はある?」
「数日分なら問題ありません」
「なら、そうしましょう。出発は三日後。それまでに各自準備をお願いします」

                      *

 一行は自転車で目的地の道路の脇に到着した。
 空き地や畑の間に、まばらに建物が建っている。住宅や喫茶店、ガソリンスタンド、畳店、何かの店や工場、オフィスなど……。
「この辺りには何度か来たことがあるな」
 陽向が言うと、へえ、と雨音が気がなさそうに相槌を打った。
「パンデミック時には子供対象の輸血車が来ていたからな。何度か血を提供してトマトジュースを貰った」
 それを聞いて凪が笑う。
「陽向は小さい頃から生真面目だからね……さて、じゃあ自転車はそこの建物の中に入れちゃおう。それで物資の護衛に二人残ってくれる?
 探索の方は、まず建物を一軒一軒回っていって、物資の回収と痕跡の確認。陸はチームと一緒に先行して進路の確保。入り口と周辺に待機」
 陸が頷いて部下と共に歩き出したとき、草むらから現れた一匹の小型犬が、ゴムまりのように跳ねて陽向の顔にのし掛かった。
「わっ!」
 想定外に重量をかけられた陽向がしたたかに尻餅をつく。
 チワワは小さな濡れた鼻先を陽向の鼻先にくっつけるようにすると、くんくんくんとしつこく匂いを嗅いだ。開いた口からよだれが垂れて顔を濡らす。
「悪いがどいてもら――」
 チワワを押しのけようとした陽向は、手に別の、チロチロとした舌の感触を覚えて視線をずらした。
 そこには蛇の顔があり、喉の辺りで口を開け閉めしていた。胴体はそのままチワワの尻尾があるべき部分に繋がっている。
 飛びかかられてからその間、五、六秒だっただろうか。
「ワンワンワン!」
 チワワがけたたましく鳴いたかと思うと、風が巻き起こり何かが突如落下――否、急降下してきた。
「構えろ!」
 陸の声に銃口が一斉に空に向く。
 ライオンの胴体、鷲の翼、大きなサソリの尾、そして案山子のような頭部には黒髪がたてがみのようになびく。しかし顔がない。
 それは一瞬のうちに陽向の首の後ろを咥えると、危険を察して跳躍し、街頭のてっぺんから店の屋根へと銃弾を避けて飛び、空に舞い上がった。
 咥えられたままの陽向は上空に持ち上げられる。彼は咄嗟に逃げようとしたが、既に地面まで十メートルはあった。
「くそっ、陽向がさらわれる……!」
 陸がアサルトライフルから長距離用のライフルに持ち替えようとしたとき、
「……気を付けて、10時方向!」
 凪の声に加わった銃口が向けられる。今度は犬の胴体に烏の翼の生き物だ。ライオンと同じく顔がないが頭部にねじれた山羊の角が生えている。
 彼女は風のように突進してきた怪物をすんでの所で避けた。
 陸がカバーしてアサルトライフルのトリガーを引くと、獣はさっと体を反転させてアスファルトを走り去っていった。
 いつの間にかチワワの姿も、陽向をくわえたライオンの姿もない。
「……畜生」
 陸が地面の石ころを蹴飛ばすと、それが何かに当たった。
 凪が拾い上げる。
 それは、千切れた紐に厳重にくくりつけられたスマホだった。
 電源ボタンを押すと明かりが付き、中央に正方形の5×5の方眼が表示された。中央のマスに丸い宝石の絵が描かれている。
 更に視線をずらせばその下に4つ、丸い銅色のボタンのようなものがあった。それぞれ王冠、剣を持った兵士、馬、戦車(チャリオット)のシルエットが書かれている。
 指で王冠を押さえると、画面上をすうっと動き、画面の端で放すと元の位置に収まった。
「これは重要な手がかりかもしれない。……とにかく、室内に入って作戦を練りましょう。陽向とこの失態は必ず取り返す」

                      *

 コンクリートの堅い感触に、陽向は目を覚ました。
 薄暗い部屋だった。
 天井が高く、やたら高い位置にある窓――ガラスもはまっていない穴――から夕陽が差していて、かろうじて室内の様子を見ることができた。
 四角いコンクリート打ちっぱなしの部屋には家具らしきものが一切無い。
 見るからに頑丈な金属の扉がひとつある。ドアノブはあったが、回らない。鍵がかかっている。
 それからやたら獣臭く、血なまぐさかった。何かの動物の骨が転がっていることに気付き、ぞっとする。
 腰にはホルスターに付けた魔力を込めるタイプの拳銃が一丁ある。役に立てば良いが。
「そうだ、何か荷物は――」
 振り落とされたのか背負っていた荷物はなくなっていたが、ポケットにはスマホがあった。
 幸い電波は届いていたので、生きていることを凪にメールで送る。
「僕は無事です。周囲の状況は……」
 しかしここが何処なのか、肝心なことは伝えられなかった。

――――――――――――――――――――――――――――――――

<マスターコメント>

 こんにちは、有沢です。
 小川町のシナリオ、第五回となります。今回からのご参加も歓迎しております。

 今回は小川町から出まして、周辺の探索・キマイラ退治と失踪事件の手がかりを掴むことになります。
 現状では大中小、三匹のキマイラと遭遇しています。
 大型キマイラは、案山子のような丸い頭部、ライオンの胴体、鷲の翼、大きなサソリの尾があり空を飛びます。
 中型キマイラは、案山子の頭部に山羊の角、大型犬の胴体、烏の翼があります。
         銃弾で出血しました。追っていくと血の跡は次第に量が少なくなり、途中で途切れてしまっています。周辺には住宅があります。
 小型キマイラは、チワワの頭と胴体、雀の翼、蛇頭の尻尾を持っています。


 この地域の主な施設は以下の通りです。全て放棄されており、人の気配はありません。
 ・住宅……新しめの大邸宅から築数十年の一軒家、アパートまで。
 ・喫茶店……郊外型喫茶店。食料はナマモノはありません。
 ・ガソリンスタンド……燃料が残っており、補給可能。
 ・畳店、何かの店、工場(こうば)……生活に密着した個人商店、個人の工場です。機械や工具、材料が残っています。
 ・オフィス……製薬会社のオフィスです。比較的新しい近代的な建物で、高い塀があり、門にロックがかかっています。


 スマートフォンは、陽向のものではありません。
 ロックは、何度か間違えるとヒントが出ます。
「おうさま うらやましがりやの おうさまは そのてで ほうせき とりあげる
 へいたい すすめ すすめ さいごまで きんぴかよろいを たまわるぞ
 うま   にんげんよりも はやいあし じゃまなさくも ぴょんととびこえる
 しゃりん どこまでも はしっていける けれど みちは いっぽうつうこう」
 問題を解くと(他にパスワードを求められるような機能を使用しない限り)使用できます。
 ※正解は一つではありません。また、おおよそ解き方が合っていれば使用できます。操作せずに一定時間経つと再度ロックがかかりますが問題は同じです。



 シナリオと無関係な行動としては、小川町内での活動は引き続き可能です。

●海亀公園について
 拠点についてもアクションをかけることは出来ます。
 今までのガイドと基本的には変わりませんが、
 ・井戸を手入れすれば使えそうである
 ・飲料水はペットボトルの濾過装置でそこそこ安定供給がされるようになった
 ・水道水が使用可能になっている
 ・畑は耕されています。現在は豆、小松菜、ジャガイモ。(その他、既に植えたことにしても構いません)
 ・田んぼには稲が植えられ、収穫途中。(全て収穫した、でもOKです)
 ・ホームセンターからキャンプに使えそうな物を運び入れた


●町の利用について
 住民として認められています。
 町の施設の利用が出来ますが、物資は豊富とは言えません。
 あからさまな監視役はいませんが気にされてはいるので、不審な行動(武器を手に持ったり)は見咎められます。



それでは、アクションをお待ちしております。

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  1. 2018/12/04(火) 10:42:22|
  2. リアクション

【キャンペーンシナリオ】アルタン戦記 その1 ~出港~

アルタン戦記 その1 ~出港~


マスター:神明寺一総




 
 少年は、海を見ていた。
 ゆるやかな右下がりのカーブを描き続ける成績に対する、両親や担任の突き上げ。何につけ空気を読むことを強要される友人関係。それら全てに嫌気が差し、海に来るようになってもう何年経っただろうか。
 家庭。学校。友人関係――。
 そうした、逃げ出したかったモノ全てが消え去って久しいというのに、少年はまだ、毎日のように海に来ていた。
 丘から臨む漫月の海には、行き交う船の影一つとてない。パンデミック後の世界において、遠洋航海を成し得る国は未だ存在せず、漫月もまた例外ではない。代わり映えしない水面を日がな一日眺めるのが今の少年の日課であり、その日もそうして一日が終わる――はずだった。その時までは。

(ん……?)

 なんとも言えない違和感を感じて、少年は彼方に目を凝らした。海と空の境目。水平線が、空の青と混じり合って溶け合う辺りに、何かシミのようなモノを見つけたのだ。そのまま、身じろぎもせず見つめ続ける事数十秒。

「あ……」

 小さな声が、少年の喉から漏れた。目が大きく見開かれる。彼方のシミは、今や黒い点となっていた。

「あ……、ああ……!」

 驚きのあまり石になったようになっている少年を尻目に、黒い点はドンドンその大きさを増していく。今やその点は、ハッキリとした船の形を成していた。

「ふ、船だ――。船が、船が来たんだ!」

 少年は弾かれたように立ち上がると、転げるように丘を下っていく。

「ブォーーーー」

 何かに憑かれたように駆けていく少年の耳に、遠くから汽笛の音が届く。

「みんな、船だ!船が来たんだ、船が!!」

 少年はあらん限りの声で叫んだ。



「いやー、まさかア東から船が来るとはねー」

 朝比奈愛依は『感心した』という風に呟いた。その目は、伊丹満貞が半日足らずでまとめた報告書に向けられている。既に一度目を通しているため、流し見、という体だ。

 何十ヶ月か振りに漫月の港に入港した船の名は『スタルカ号』。アルタン大陸東部の港湾都市リガティアを母港とする貨客船である。

「しかも乗員はたったの5名。うち遠洋航海の経験があるのは、船長役の元二等航海士1名だけだっていうんですからね。まさに奇跡ですよ」

 愛依の話に伊丹が相槌を打つ。自分で取り調べにあたったのでなければ、にわかには信じられない話だ。

「やっぱり覚悟が違うのかしらね。国に残してきた人達の命が懸かってるんだものね」

 スタルカ号の船長、アレクセイ・アシモフの話によると、現在リガティアではほぼ全てのライフラインが停止。食料も底を突きかけ、このままでは次の冬は越えられないという。漫月国が召喚ガチャのお陰で復旧の途にあると聞いた彼等は、この絶望的な状況を打開すべく一か八かの賭けに出た。はるばる海を越えて、漫月国まで救援を要請しに来たのである。

「お願いします。俺達を、国の子供達を助けてください」

 そう言って頭を下げるアレクセイの悲壮な顔が、満貞の脳裏にまざまざと甦った。

「ね、伊丹さん。助けに行くんだよね?元々ア東に行くつもりだったわけだし」
「もちろんです。渡航のための船と乗組員が向こうからやって来てくれた訳ですからね。文字通り『渡りに船』ですよ」

 ア東進出計画が具体化してから、既に数ヶ月。ア東に行くための船と人員の確保が出来ず切歯扼腕していた伊丹にとって、今回の件はまさに天佑と言って良い。

「良かった~」

 伊丹の言葉に心底ホッとした顔をする愛依。

「既にスタルカ号の整備や物資の調達・積み込みを急ピッチで行っています。完了し次第、出港です」
「間に合うと良いけど……」
「間に合わせます。必ず」

 伊丹は決意に満ちた顔で言った。


 数日後――。

「いってらっしゃい。気をつけて」
「吉報をお待ち下さい」

 手早く出港準備を調えた伊丹は、スタルカ号と5人の乗員、それに先遣隊のメンバーと共に漫月を出港した。目指すはア東の港湾都市リガティア。まさに「冒険」と言って良い、期待と不安に満ちた旅立ちであった。

――――――――――――――――――――――――――――――――

<マスターコメント>

★注意!★

 このシナリオは『アルタン戦役』というキャンペーンの第1話にあたりますが、前日談として第ゼロ話がありますので、実質第2話となります。
 第ゼロ話に参加していない方でも問題なく参加出来ますが、第ゼロ話は一通り読んでおいて下さい。
 また時間軸としては、「漫月国内の情勢がある程度落ち着きを見せ、海外進出の余裕が生まれた近未来(数ヶ月~数年先)」を舞台としています。
 これはアルタン大陸を舞台とする本キャンペーンと、漫月国を舞台とする他のシナリオの両方に円滑に参加して頂くための措置となります。


★あらすじ

 第ゼロ話で具体的な目的地が決定し、順調に進むかに見えたアルタン東部進出計画ですが、まだ実行段階にも入らぬ内から思いもよらぬ理由で頓挫することになりました。漫月には、先遣隊をアルタン大陸まで送るための船も、その船を動かせる人員もいなかったのです。パンデミック後の混乱の中、海原に乗り出すような余裕はついぞありませんでした。
 元商船学校の学生や工業系の学校の生徒を乗組員や整備士として養成し、放置され痛みの激しい船を修復して――と、『出港出来るようになるまで少なく見積もっても数年はかかる』という報告に、計画立案者である伊丹が頭を抱えてきた所にやってきたのが、ア東から来たスタルカ号でした。
「飢餓の危機にある子供達を救ってほしい」という乗員の懇請を伊丹は快諾。伊丹とPC達先遣隊は、一路アルタンへの航海に出発したのでした。



★アクションについて

 今回のシナリオの舞台は、リガティアへと向かうスタルカ号。
 期間は漫月出港直前からア東到着まで。

 プレイヤーの皆さんには「この航海の間をどう過ごすか」を考えていただきます。

 NPCやPCと交流を深めるもよし。
 船内作業を手伝うもよし。
 何か気になる事を調べるもよし。
 もちろんただだのんべんだらりと過ごすのもよし(笑)

 今回の航海はとにかく人手が足りませんので、炊事洗濯掃除などの雑事から船の点検整備、航海の警戒監視に至るまで、キャラクターのやる仕事は五万とあります(労働を強制される訳ではありませんが、働かないとそれはそれで周囲の風当たりがキツくなるのは間違いありません)。


 アクションとしては最低限、

①何をするのか(極力具体的に)
②何処でするのか
③何故それをするのか(行動の意図・狙い)

 最低でも、以上3点を記載して下さい。

 その他、もしいれば

④一緒に行動したいPC・NPCの名前

 も書いておくといいでしょう。

 場所の例としては、スタルカ号のブリッジ、機関室、貨物室、厨房、食堂、バー、遊戯室、図書室、各個人の船室、アクションが出港前であれば漫月国内の何処か……等が挙げられますが、キャンペーンの幅が広がるような(要するに面白いw)アクションであればドンドン採用して行きたいと思います。



★登場NPC

本シナリオには公式NPC以外に、以下のオリジナルNPCが登場します。

 伊丹 満貞
 レヴィス・マレスティウス

①アレクセイ・アシモフ
②オリガ・ユロフスキー
③タチアナ・ユロフスキー
④マリア・ユロフスキー
⑤アナトーリ・ハバロフ

 伊丹とレヴィスについては【NPC】の項目を参照して下さい。
 アレクセイ以下の①~⑤については、下記を参照して下さい。


①アレクセイ・アシモフ 人間 男 20歳
 リガティア沿岸警備隊の隊員。階級は軍曹。
 船員の中で正規の軍人としての訓練を受けた、ただ一人の人物。
 船を操ったり海図を読んだりと航海に関する知識を持っているのは彼だけであり、そのため船長を務めている。
 優秀で決断力もあるが生来の心配性であり、そのため船長の職を負担に感じている。


 以下2~4は姉妹。いずれ劣らぬ美形。

②オリガ・ユロフスキー 人間 女 18歳
 整備士。整備士として正規の訓練を受けている。
 船の整備の他、無線を扱ったり計器を読む事も出来るため、アレクセイのサポートを行う事も多い。
 長女という事もあり、責任感が強く面倒見が良い。几帳面な性格。


③タチアナ・ユロフスキー 人間 女 17歳
 副整備士。正規の訓練を受けておらず、オリガの指導を受け技術を習得した。しかし実際に行えるのは点検と簡単なメンテナンス程度で、修理は姉に任さざるを得ない。
 やや勝ち気な性格で、男勝りな言動もしばしば。姉やアレクセイを気遣うあまり、背伸びする傾向がある。


④マリア・ユロフスキー 人間 女 14歳
 食事の用意から洗濯まで、船内の雑用一切を一手に引き受けている。
 健気な頑張り屋。実は3姉妹の中で一番合理的。


⑤アナトーリ・ハバロフ 人間 男 13歳
 リガティアから車で数日の距離にある小さな漁村出身。
 出港していくスタルカ号を見て、父の遺品である小さな漁船で追いかけたもののエンジンの故障により漂流。アレクセイ達に助けられる。
 普段はマリアの仕事を手伝っているが、船長の仕事に興味があるらしく、たびたびアレクセイを質問攻めにしては3姉妹にたしなめられている。



★スタルカ号

 全長約130メートル。総トン数・総積貨数共に約7000トンの中型貨客船。艦齢約20年。古びてはいるが、充分航海に耐えうる状態である。
 貨客船であるため、一等・二等船室や各種娯楽設備なども備える。
 漫月出港時には、充分な量の物資を積んでいる。



 では皆さんの腕によりをかけたアクションを、心よりお待ちしています。



※ここから下はキャンペーンの舞台設定となります。内容は第ゼロ話と同じです。

★アルタン大陸とアルタン社会主義共和国連邦★

『アルタン社会主義共和国連邦』(以下ア連)というのは、大洋を挟んで漫月国の西方に位置する『アルタン大陸』の全域と、その周辺の島々を領土としている大国です。オーストラリアと同程度の面積を有するアルタン大陸はいびつな「く」の字型をしており、中央部を南北に走る山脈によって、大きく東部・西部・南部の3つに分けられます。アルタン大陸には北から寒帯~亜熱帯までの気候帯が存在します。
 ア連は今から数十年前にアルタン大陸西部に成立した国で、わずかな期間で軍事大国化すると、10年余りでアルタン大陸内に複数存在した国を片っ端から征服・服属させ、一大強国となります。しかし、無理な拡張政策がたたり国内は常に不安定で、パンデミックを機に連邦内の共和国が次々と独立を宣言して内戦に突入。その結果パンデミック収束前には、既に国家としての体を成していませんでした。



★アルタン大陸東部地域

 アルタン大陸東部は最も遅れて連邦に編入された地域です。自然環境は厳しく、最北部にはツンドラ地帯が、内陸部には砂漠と荒野が広がり、人が住むのに適した地域は南部の沿岸域に限られます(気候帯としては寒帯~温帯に属す)。しかし天然資源に恵まれた土地であり、域内には多数の油田や鉱山を有します。



★アルタン東部進出計画

 愛依の提案は、このア連の東部地域に進出しようというものです。

「パンデミック後に残された国内の物資は既に底を突き始めており、元々資源の乏しい島国である漫月国がこの先も存続していくためには、海外において物資を確保する事が必要不可欠である」

というのがその理由ですが、では何故、アルタン大陸東部が初の海外進出先に選ばれたのか。その理由は2つあります。

 1つ目の理由は、アルタン大陸東部が豊富な資源を有している事。
 今現在愛依達に油田や鉱山の操業を再開させられるだけの能力はありませんが、パンデミック時の避難の慌ただしさを考えれば、現地には相当量の物資が手付かずのまま残されている可能性が充分にあります。実際、ア連から漫月国に避難して来た難民からその想定を裏付けるような証言が得られており、それらを確保するだけでも、当面の窮状を脱するには充分と言えます。

 2つ目は、この地域が現在ほぼ無住となっている事です。先のパンデミックの際真っ先に感染者の出たア連東部では、感染者の徹底した隔離と、非感染者の西部地域への強制避難が行われました。このためもし東部地域に進出したとしても、ア連当局や住民との衝突はまず無いと想定されるのです。また、ア連自体がパンデミック以前に崩壊していた事もあり、東部以外の地域から干渉もまず考えられません。

 なお進出と言っても、今のところ愛依達首脳部は「武力による実効支配」などは考えておらず、「放置された物資の確保」を最優先に、「生き残りの子供達の保護」「現地における脅威(モンスター等)の除去」程度を想定しています。
続きを読む
  1. 2018/10/13(土) 15:14:00|
  2. リアクション

【レアシナリオ】七野瀬の蛟(みずち)

七野瀬の蛟(みずち)


マスター:桂木京介




 
 なかば水没していた。
 集落が、だ。
 水は既に脛のあたりまで達しており、ひどいところでは腰まで浸かる勢いだ。土色の水をじゃばじゃばとかき分け進む作業は、歩行というより水泳なのではないか、そんな錯覚すらおぼえる。
「雨が来るたびこうなるの。今度のは、とくに悲惨」
 だんだん水かさが増している、と厨子川 恵(ずしかわ・めぐみ)は言ってレインコートのフードをかぶり直した。半透明のフードは、自身の呼気でうすく曇っている。
 雨が降っている。恨みがましく、しとしとと。
 すり鉢を想像してみてほしい。正円ではなく、ややいびつな。
 鉢の底がこの集落だ。極端に水はけが悪く、数日雨が続こうものなら、すぐにこんなざまとなる。
 かつてはここまで悲惨ではなかったらしい。
 といっても、パンデミックまでの話だが。
 この集落、七野瀬(しちのせ)も、水花芽県のほうぼうにあるそれと大差はない。つまり、住民は子どもばかりだということだ。住民規模は三十を少し上回る程度。
「見える?」
 足を止めて恵は指を伸ばした。
 坂道というよりは切り立った崖、極端な傾斜の上部から、とめどもなく水が流れてくる。崖の最上部は木々に覆われており、よく見えない。
「水は、あそこからの流入が特に酷い。雨が豪雨に変われば、もうここはおしまいだと思う」
 ならあそこに流れをせき止める設備でも作れば、というわけにもいかない。
「実は堤防がある。堤防というより、自然にできたものだけど」
 蛇に四肢が生え直立したような生物が、斜面上部に巣を作っているという。大きさは一メートル半ほど、手が発達しており原始的な武器を使う。集団行動を好み、折を見ては七野瀬に襲撃をかけてくるという。不幸にして犠牲となった子どもも少なくない。
 生物は、雨龍(あまりゅう)、あるいは蛟(みずち)と呼ばれている。
「蛟の巣穴があり、卵や蛟が身を横たえているから、流入する水はこの程度で済んでる。蛟が一掃されようものなら、きっと七野瀬は沈んでしまうわ」
 かといって――と振り向いた恵は、十七歳の少女とは思えぬほどに険しい顔をしていた。
「やつらの行動が、このところ活発化している。もしかしたら近いうちに、七野瀬を一斉襲撃してくるかもしれない。仮に一斉襲撃がないとしても、こんな雨があと一週間もつづけば、きっとみんな水の底……」
 つまり、こういうわけか。
 このままでは蛟の大襲撃で滅ぶかもしれず、
 あるいは、雨と流水によって溺れるかもしれない。
 かといって蛟退治を行えば、どっと流れ込んだ水でやはり溺死だ。
 どうして、と疑問を感じたとしてもおかしくはない。
 どうして七野瀬の住民たちは、こんな危険な集落を捨て他所(よそ)に移住しないのか――?
 そのとき急に、雨脚が強まった。
「私も、幾度となくそれを主張してきた」
 蒸し暑い、と言って恵はフードを脱いだ。みるまに雨にさらされ、髪は湿り額を水が伝う。
「でもみんな、特に小さい子は拒絶した……ここには墓があるから。あのパンデミックで死んだ……みんなの親たちの。墓を離れるくらいなら沈んで死ぬって」
 バカみたい、と恵は言った。頬を雨粒が伝い落ちる。
「ここで墓を守っていくら待ったって、誰も……誰も帰ってきやしないのに……!」

――――――――――――――――――――――――――――――――

<マスターコメント>

 はじめまして、新人マスターの桂木京介です。
 私にとってはじめてのシナリオをお送りします。不慣れな点もあるかと思いますが、よろしくお願い申し上げます。

概要:
 ジレンマを描いたシナリオです。
 敵である蛟(みずち)を滅ぼせば、一気に七野瀬(しちのせ)集落は水没するかもしれず、かといって座して待つならば、近いうちに水没、ないし蛟の害でやはり集落は滅亡です。
 こんな場所からはさっさと移住するのが一番なのは言うまでもありませんが、父母の遺骨が眠る土地を、子どもたちは離れたがりません。
 集落の子どもたちを説得し移住させる、蛟を倒し水害も免れる手段を講じるなどの解決方法が考えられます。頭の使いどころですね。

成功条件:
 唯一の正解があるシナリオではありません。子どもたちにこれ以上の犠牲を出さないという結果になればどのような展開でも(仮にそれが強制的に移住させるという結末であっても)成功とします。
 蛟の一掃は成功条件には無関係です。

情報:
>蛟(みずち)について
 蛇から進化したと思わしき亜人です。
 知性はあまりないものの、集団で狩りを行う習性があります。槍や棍棒など、簡単な武器も使います。変温動物なので、雨で気温が下がっている状態であれば与しやすい相手と言えましょう。
 一匹一匹はさして強くありません。一対一であればかけだしのキャラクターであっても楽に勝てるでしょう。徒党を組むといっても行うの包囲攻撃くらいで、戦略的な行動も苦手です。ただし、推定五十匹前後いるようなので、数にだけはお気を付け下さい。
 巣穴には多数の卵を置いており、卵を守る兵士は円月刀など強力な武装を持ち腕も他の蛟を上回ります。

>七野瀬(しちのせ)の子どもたち
 十歳未満の年少者が多く、リーダー格の厨子川 恵(ずしかわ・めぐみ)もわずか十七歳です。経験の浅い恵は、集落を統率しきれていないようです。


 ご参加お待ち申し上げております。
 それでは次は、リアクションでお目にかかりましょう。
 桂木京介でした。

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  1. 2018/09/26(水) 22:40:00|
  2. リアクション

【ショートシナリオ】第四話 小川町のプール開き

第四話 小川町のプール開き


マスター:有沢楓花




 
 まんげつ造のある都市から離れたとある場所に、瀬織市という小さな市がある。
 中心部は都会的な賑わいを見せ、離れれば田畑や牧場も見られる、そこそこ都会、そこそこ田舎という何かにつけ便利な市だ。
 その「そこそこ田舎」な場所に、小川町はあった。


                       *


 パンデミック後の小川町の自治会は「生徒会」を自称していたが、「夏休み」を取る・取らせるような余裕はなかった。
 ぎりぎりの人数で「回して」いる――破綻しないだけマシ、まだインフラが保たれているという幸運によるもの――からである。

「……というのではつまらないという声が小さな子どもたちから上がっている。
 浄水場も復活したので、熱中症予防の観点からも適切な水の使用法の講座を開き、その後はレクリエーションを兼ねて……」
 小川町中学校の職員室。
 町長代理の長谷川 陽向(はせがわ ひなた)はホワイトボードに貼った小川町の地図から中学校の敷地内の一点を指さした。
「ささやかながらプール開きのイベントを行いたいと思う」
 生徒会書記の斎藤 雨音(さいとう あまね)が手を上げた。
「はーい、長谷川先生。浮き輪は使っていいの?」
「ドーナツでもイルカでも許可する。ああ、ただし役員の斉藤には監視員をしてもらう」
「……分かったわ、ただし夜には泳がせてもらうわよ」
 しぶしぶ雨音が頷いたのを確認して、陽向はもう一人の少年を見た。
「警備からも人を出して、プールや、プール前に設置する屋台の見回りをしてもらおう。大して物資がないから、かき氷と綿あめの無料屋台くらいしか出せないが……」
 加賀 陸(かが りく)が首をかしげる。
「警備は了解した。後は俺は射的の屋台を出そうかと思っている。ところで綿あめなんか作れるのか? 自作は難しいようだが」
「丁度綿あめ作りの玩具があるんだ。色つきの飴を使えばカラフルになって見栄えが良いそうだ」
 陽向の口元が緩んでいるのを見て、雨音が指摘する。
「あ、長谷川も楽しみなの? 泳ぎたいなら誰かに本部に詰めててもらえば?」
「いや、子どもたちの笑い声が聞けそうだからで……もちろん水の事故には気を付けなければならない。昔、プールの時期になると学校からプリントを貰っただろう?」
 そう言いながら原案の紙を雨音に差し出す。
「はいはい、これを新聞にまとめればいいわけね――うん、今日中に片付けておくわ」

 そうして、プール開きの臨時号が掲示板に貼られることになったのでした。

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<マスターコメント>

 こんにちは、有沢です。
 小川町のシナリオ、第四回となります。今回からのご参加も歓迎しております。

 今回は小川町のフリーシナリオとなっています。
 前回浄水場が無事使用可能になりましたので、水使い放題なシナリオになりました。
 舞台としては小川町の町内のみとなっていますが、ある夏の一日、買い物をしたりプール開きに参加したりできます。
 また、今回から小川町内の空き家が召喚者の希望者には提供されていますので、住居を移している・移すことができます。

 プール開きは中学校で行われます。諸注意・講座の後にプールが解放され、夏の一定期間の間利用できるようになります。
 プールにはビート板やドーナツ型(やドーナツの絵が描いてある)、イルカ・アヒル型などの大型から小型の浮き輪、ビーチボール、水鉄砲などが用意されています。

 また中学校の校庭にはかき氷と綿あめ、麦茶、射的の小さな屋台が置かれます。
 学校内ではうちわや扇子などの工作、浴衣の着付け、夜には花火(手持ち)などちょっとしたイベントも行われます。
 プールで泳ぐもよし、自分たちで屋台を出すのもよし、休日だけど仕事に精を出してもよし。です。


それでは、アクションをお待ちしております。


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  1. 2018/09/02(日) 00:14:00|
  2. リアクション

【コモンシナリオ】崩壊世界の揺り籠【戦闘あり】

崩壊世界の揺り籠


マスター:菊華 伴




 
 パンデミックで、大人たちが死滅した。
 けれども、子どもたちは生きていた。そして、赤ちゃんも、生きていた。

 ――あれから、9か月。

「そうか、もう、そんなになるんだよね。早いはずだね」
 黒髪を伸ばした乙女が、腕に赤ちゃんを抱いてそうつぶやいた。生後9か月だろう赤ちゃんは、うとうとしながら指をちゅぱちゅぱと吸っている。
「院長、問題はここからですよ」
 15、6歳ぐらいの少年が、1歳半ぐらいの女の子をおんぶした姿で問いかける。彼は青い目を細め、ため息をついた。
「最近なんかこう、野犬が多くて。物資を探しに行くのも命がけなんだ。先日もトシキが足をかまれて……」
 その言葉に、乙女は表情を曇らせた。
「今週に入って5人目ね。動物に詳しい人からきいたけどやっかいな病気とかは持ってないそうよ。それでもあの数は……」
 彼女たちの言う通りでこの辺りでは野犬が問題になっていた。今もあちこちから故にこの病院以外に暮らす子供たちに戸締りできる場所で寝泊まりするように、と告げていた。

 この保護施設は、乙女の両親が残した産婦人科の病院だった。彼女は、そこの新生児室に残された赤ちゃんだけではなく近所の乳幼児を保護し、仲間を集い、周辺の探索をして物資を得ていた。それだけではなく、畑を耕し、野菜の自給にもつとめていた。
 高校生、大学生も比較的精神的に強く、心根の優しいものが多かった。彼らは皆親を亡くした幼子たちのために、一生懸命がんばっていた。しかし、彼らにも限界はある。それを、乙女は感じていたのだ。

「助っ人を探しに行きましょう。幸い、私には魔法があるし、野犬ぐらいだったらどうにかなるわ。手助けしてくれそうな人、探してくるから少し待っていてね」
「姉貴! それじゃあ、この揺り籠はどうするんだ?」
 乙女の言葉に、少年が問いかける。彼女は「大丈夫」というとぽん、と目の前の少年の肩をたたいた。
「面倒見の良い貴方に任せるわ。頼むね、ヨアン」
 そういわれ、ヨアンは苦笑して頷いた。


* * * * *

 ――まんげつ造

「赤ちゃんの保護施設?」
 朝比奈 愛依はその報告に息をのんだ。だが、目の前にいる乙女は、「はい」としっかりとした声で答える。傷だらけになりながらここへ来た、という乙女は、愛依の目を見て答えた。
 長い黒髪を一本のみつあみにまとめた、緑色のワンピースの乙女で、名を桐生 辰已(きりゅう たつみ)といった。
「パンデミックで大人が死滅した後、私は父が経営していた病院を拠点に可能な限り赤ちゃんを保護しています。ですが、最近になって周辺で野犬が発生し、物資調達の際危険で……。大変申し訳ないのですが……」
 辰已は高校生以上の人に野犬退治の手伝いをしてほしい、と相談を持ち掛けたのだ。それを聞き、愛依は少し考える。
「報酬も、用意します。幸い、私たちの拠点は物資を得られる場所が多いので可能な限り対応できるかと思います」
「……そうだな。少し声をかけてみようと思う」
 愛依はそう言って召喚した者たちにこの話をしよう、と考えた。

 数分後。訪れた異世界人たちの姿に、辰已は目を見開くことになる。

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<マスターコメント>

はじめまして。或いはお久しぶりでしょうか。
菊華 伴です。今回はまんげつ造から離れた場所にある拠点周辺での野犬退治及び探索、現地の子供たちとの交流がメインです。

難易度:★★
    以下の注意点さえ守れば大丈夫です
 ・子供たちを怖がらせない
 ・怪しまれる行動をしない

概要
例の壊された橋から内陸に5キロ地点に位置する『唯我町』が舞台です。
『桐生産婦人科医院』を中心に小学校やショッピングモールなどがあり、子供たちはなるだけ固まって暮らすようにしています。

>地理について
・桐生産婦人科医院周辺
今回行く唯我町の中ほどにある病院で、桐生 辰已を中心に集まった子供たちの拠点です。裏手には小学校、近所には幼稚園とショッピングモールなどがあります。少し離れた場所には銭湯や商店街もあり、そのあたりで物資を調達していました。
 しかし枯渇を恐れた辰已たちは少し離れた場所にある施設などからも物資を集めるようにしていますが、最近は拠点周辺に野良犬が出没し、物資調達に出た子供たちが襲われるという被害が出ています。

選択肢
どれか1つを選択してください。
2つ以上選択すると描写が減ってしまう可能性があります。

・野犬退治を行う
 拠点周辺にたむろする野犬を退治するなり追い払うなりしてください。最近、物資探索に出向いた子供や遊んでいた子供が襲われるという事件が多発しています。けが人も出ており、住人たちは困っています。最低限でも子供たちが襲われないようにするか、拠点周辺から追い払ってください。
 戦闘となりますので、負傷判定がでる可能性があります(ただし、工夫すると戦闘を回避することも可能です)。

・周囲の探索
 拠点周辺を探索し、状況確認や物資調達の手伝いを行います。場合によっては野犬と遭遇し戦闘が発生する可能性があります(ただし、工夫すると戦闘を回避することも可能です)。

・子供たちと交流する
 拠点の子供たちと交流します。ここには辰已達に保護された赤ちゃんたちがいてにぎやかです。最低年齢は生後9か月です。新生児室及び病室がそのまま子供たちの生活の場となっています。
 また近所には幼稚園があり、幼い子供たちが遊んでいます(こちらは5、6歳ぐらいまでの子供たちが大半で、警護及びお世話係として6歳以上の子供たちがいます)。

登場NPC
桐生 辰已
桐生産婦人科医院を拠点としている子供たちのリーダー格。今回は野犬問題を解決するべく噂を頼りにまんげつ造へ訪れた。選択肢で「子供たちと交流」を選ぶと色々話すことができる。


ヨアン・ウォン
実質ナンバー2となる炎魔法の使い手。火葬・葬儀担当。新興宗教施設を塒とし、施設に残された黒いスーツと袈裟を着ている。選択肢「野犬退治」を選ぶとともに行動する。


それでは、宜しくお願いします。


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  1. 2018/08/20(月) 12:00:00|
  2. リアクション
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